親知らずは抜歯した方がいい?
知っておきたい「抜く・抜かない」の判断基準

「親知らず」は10代後半から20歳前半ごろに、最も奥(前から8番目)に生えてくる歯です。正式には「第三大臼歯」、あるいは「智歯(ちし)」と呼びます。
*厚生労働省 e-ヘルスネットでは「一般的に15歳前後から生えてくる」と説明されています。
親知らずは、まっすぐきれいに生えそろう方のほうが少数です。斜め・横向きに生える、途中まで生えて止まる、あごの骨に埋まったまま出てこない——といったケースが多く見られます。
このページでは、親知らずを抜いた方がよい場合・抜かなくてよい場合の判断の目安、抜かない人の割合、きれいに生える人の特徴を、横浜市港北区・大倉山の歯科医院の立場から整理しました。
*当院には大学病院口腔外科出身・薬剤師資格を持つ歯科医師が在籍しています。「抜いた方がよいか診てほしい」というご相談のみのご来院でも構いません。お気軽にご相談ください。
親知らずは抜いた方がいい?抜かなくていい?

親知らずは「必ず抜くもの」でも「抜かなくてよいもの」でもありません。生えている位置・向き・清掃のしやすさ・周りの歯への影響によって、抜いた方がよい場合と、経過を見てよい場合に分かれます。
日本口腔外科学会も、智歯周囲炎(親知らずの周囲の炎症)や隣の歯への悪影響などがある場合に抜歯を検討し、正常に生えて機能している場合は抜かなくてもよいとしています。
抜いた方が良い場合(抜歯を検討するサイン)
親知らずが綺麗に生え、しっかりと噛めている人はとても少なく、全体のわずか0.6%といわれています。
次のような悪影響が出ている、または将来的に予測される場合には、抜歯が検討されます。
痛い、よく腫れる(智歯周囲炎)
「親知らず」は最も奥に位置し、斜め・横向きに生えていたり半分埋まっていたりすることも多いため、歯みがきがしにくく食べかすがたまり、周りの歯ぐきが化膿・炎症を起こしやすい特徴があります。
疲れや睡眠不足で抵抗力が落ちたときに繰り返し腫れる場合は、抜歯を検討する目安のひとつです。
虫歯や歯周病のリスク
虫歯
「親知らず」および周囲は不衛生になりやすく、ひとつ手前の歯(第二大臼歯)が虫歯になりやすくなることがあります。手前の歯は噛む力を支える大切な歯のため、そこを守る目的で親知らずを抜くこともあります。
歯周病
埋まっている「親知らず」が存在すると、手前の歯の歯周病の危険性が約4.8倍高まるとの報告もあります。
歯並びへの影響
「親知らずのせいで歯並びが悪くなる」と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
親知らずが歯並びに影響を与える場合もありますが、虫歯や歯周病、頬づえ・舌の癖など、他の要因が関係していることもあります。原因は一つとは限らないため、実際のお口を診てからのご説明になります。
顎の骨折のリスク
埋まっている親知らずの位置によってはあごの骨が薄くなり、特にスポーツ中や転倒時にあごをぶつけたとき、骨折のリスクが高まることがあります。
顎関節症との関係
近年、顎関節症は複数の原因が積み重なって起きる病気とされています。
噛み合わせだけが原因で起きるわけではないとされ、最初から「歯を削る(噛み合わせの治療)」「抜歯」などの治療は一般的には推奨されていません。
抜かない選択肢(経過を見てよい場合)
虫歯や歯周病のリスクがない
虫歯や歯周病のリスクが無い場合や、真っ直ぐ綺麗に生えて上下でしっかり噛めている場合には、抜歯しなくても良いこともあります。
神経と近い
親知らずと神経(下歯槽神経)との距離が近く、抜歯によって神経を損傷する危険(リスク)がある場合には、積極的な抜歯が推奨されないこともあります。
この場合は、CTなどで位置関係を確認したうえで、抜く・抜かないのメリットとデメリットをご説明します。
将来活かせる場合
- 入れ歯やブリッジを支える歯として使う
- 移植(歯の移植)に使う
親知らずの生え方や位置によりますが、将来、入れ歯やブリッジを支える歯として利用できたり、移植用に使えたりすることがあります。
抜く・抜かないの判断の目安(早見表)
| お口の状態 | 一般的な考え方 |
|---|---|
| 繰り返し腫れる・痛む | 抜歯を検討することが多い |
| 横向き・斜めで手前の歯を圧迫している | 抜歯を検討することが多い |
| 親知らず/手前の歯が虫歯になっている | 抜歯を検討することが多い |
| まっすぐ生え、上下で噛み合っている | 経過観察としてよいことが多い |
| 完全に骨に埋まり、症状がない | 定期的な確認で経過を見ることが多い |
| 神経との距離が近い | リスクと必要性を比べて個別に判断 |
*上表はあくまで一般的な考え方の目安です。実際の判断はレントゲン(必要に応じてCT)と診察のうえ、患者様のご希望も伺いながら決めていきます。
(関連記事)
親知らずを抜かない人の割合は?生える人・生えない人のデータ

親知らずが生えない人の割合と2つの理由
親知らずが生えない場合には、次の2つの原因があります。
- 生まれつき存在しない
- 埋まって生えてこない
1. 生まれつき存在しない(先天性欠如)
「親知らず」が生まれつき存在しない、本数が足りない(先天的欠如)場合は全体のおおよそ4割と報告され、珍しくありません。
*全部(上下左右4本)の「親知らず」が存在する人は約6割と報告されています。

親知らずの本数と存在率のグラフ
2. 埋まって生えてこない(埋伏)
「親知らず」は存在していても、位置や生え方によって生えてこないことがあり、特に上に比べて下の親知らずはきれいに生えない傾向にあります。

上の親知らずの状況(埋まっている/生えている)と割合

下の親知らずの状況(埋まっている/生えている)
親知らずがきれいに生える人の特徴
きれいに生えて機能している親知らずは全体の0.6%程度といわれており、次のような条件がそろった場合に限られます。
- あごの骨に、親知らずが並ぶだけの奥行き(スペース)がある
- 手前の歯と同じ方向にまっすぐ生えている
- 上下の親知らずがかみ合っている
- 歯ブラシが届き、清掃できる位置にある
逆に、あごが小さい・奥行きが足りない場合は、斜めや横向きになりやすくなります。
親知らずを抜くタイミング・年齢の目安

抜歯が必要と判断された場合、一般的には若いうちのほうが治りやすいとされています。神奈川県歯科医師会も、抜歯は20代までが望ましく、年齢とともに難度が増すと説明しています。
理由としては、次のような点が挙げられます。
- 加齢とともに歯と骨が癒着(くっつく)しやすくなる
- 骨がかたくなり、治りに時間がかかりやすくなる
- 持病やお薬が増えると、抜歯の計画に配慮が必要になる
ただし「何歳を過ぎたら抜けない」というものではありません。年齢だけで決めず、お口の状態と全身の状態をあわせて判断します。
*お薬を服用中の方(骨粗しょう症のお薬、血液をサラサラにするお薬など)は、事前に必ずお申し出ください。当院院長は歯科医師と薬剤師の2つの免許を持ち、お薬の影響をふまえてご説明・ご相談を承ります。
「親知らず」「智歯」という名前の由来

「親知らず」=「智歯(wisdom tooth)」の名前の由来には次のようなものがあります(諸説あり)。
「親知らず」
昔は今より平均寿命が短く、親と死別していることが多い年ごろ(20歳前後)で生える歯であることを意味しています。
「智歯」
智歯(ちし)はwisdom tooth【知恵(ちえ)の歯】といわれ、生えてくる時期が「物ごとの分別がつく年ごろに生えてくる歯」を意味しています。
親知らずについてよくあるご質問

Q. 親知らずを抜かない人の割合はどのくらいですか?
正確な統計は確認できていませんが、親知らずが生まれつき存在しない方が全体の約4割と報告されており、その方々は「抜く/抜かない」の判断自体が不要です。加えて、まっすぐ生えて噛めている場合や、症状がなく埋まったままの場合は経過観察となるため、実際に抜歯される方は全体の一部にとどまります。
Q. 親知らずが4本すべてある人の割合は?
上下左右4本すべての親知らずが存在する方は約6割と報告されています。ただし「存在する」=「生えている」ではなく、埋まったままの場合も含みます。
Q. 親知らずを抜かないとどうなりますか?
まっすぐ生えて清掃できている場合は、そのままで問題ないこともあります。一方で、汚れがたまりやすい状態が続くと、繰り返す腫れ(智歯周囲炎)や、手前の歯の虫歯・歯周病につながることがあります。症状がなくても、定期的に状態を確認しておくと安心です。
Q. 親知らずがない人がいるのはなぜですか?
生まれつき親知らずが作られない(先天性欠如)ためです。これは珍しいことではなく、異常でもありません。
Q. 親知らずを抜くと小顔になりますか?
いいえ。神奈川県歯科医師会は「智歯の抜歯の直接的な影響で下のあごの骨格が小さくなることはありません」と説明しています。腫れが引く過程で一時的に見た目が変わることはありますが、骨格が小さくなるわけではありません。
Q. 抜歯の費用や痛み・腫れについて知りたいのですが?
抜歯の流れ・費用の目安・痛みや腫れの経過については、別ページで詳しくご案内しています。
まとめ|迷ったら、まず見てもらうところから

親知らずは一番奥にあり、横向きや斜めに生えることが多く、虫歯や歯周病のリスクが高い歯です。また生え方や位置によっては、歯並びや噛み合わせに影響を与えることもあります。
一方で、抜歯が必要かどうかは親知らずの状態次第です。「みんな抜いているから」ではなく、レントゲンで位置や向きを確認したうえで、抜くメリットと抜かないメリットを比べて決めていくことが大切です。
「親知らずが腫れた・痛い」「親知らずを抜いた方がいいか診てほしい」など気になる場合は、お気軽にご相談ください。
*当院は大学病院口腔外科出身の歯科医師が在籍しており、相談のみの診察も承っております。他院で説明を受けたうえでのご相談(セカンドオピニオン)にも対応しています。
(関連記事)
参考にした情報
- 公益社団法人 日本口腔外科学会「『親知らず』について」https://www.jsoms.or.jp/public/soudan/ha/oyashirazu/
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「親知らず(おやしらず)」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/teeth/yh-036.html
- 公益社団法人 神奈川県歯科医師会「親知らず(智歯)Q&A」https://www.dent-kng.or.jp/colum/basic/2548/
最終更新日:2026年9月8日
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