歯周病と全身の病気
歯周病は歯を失うリスクが高いのと同時に、全身の病気につながる病気です。また、歯周病はほぼ自覚症状のないまま進行するため、手遅れになりやすい傾向があります。
長く健康的な日常生活を送るためには、歯周病の予防と治療は欠かせません。ここでは、歯周病と関連する全身の病気について、まとめてご紹介致します。
*歯周病と全身の病気との関係は1990年前後から論文等で報告され始め、現代では厚生労働省の「健康日本21」の中で歯周病は“全身の健康に影響を与えるもの”と位置づけられています。
目次
歯周病が与える健康への影響
歯周病菌は血流を介して多くの臓器に運ばれ、全身の健康に影響を及ぼします。歯周病と関連のある病気は、以下のものが挙げられます。
- 糖尿病
- 心臓病(狭心症、心筋梗塞、細菌性心内膜炎)
- 脳卒中
- 認知症
- 早産・低体重児出産
- 誤嚥性肺炎肺炎
- 腎臓病
- 肥満やメタボリックシンドローム
- 関節リウマチ
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歯周病と糖尿病
歯周病と糖尿病は互いに病状を悪化させる関係にあります。糖尿病の方は、免疫力の低下や口の乾きなど歯周病菌が繁殖しやすく、歯周病の進行のリスクが高まります。
また歯周病を防ぐと、糖尿病が改善(HbA1Cの低下)することも明らかになっています。
歯周病と心臓病、脳卒中
歯周病菌は歯茎から体内に侵入し、心臓や脳の血管に動脈硬化を引き起し、心臓病や脳卒中の発症リスクを増加させることが明らかになっています。
歯周病と肥満
歯周病による炎症は、脂肪の代謝に影響を与えることが報告されています。また、肥満では脂肪組織から大量の炎症悪化因子(TNF-α)が放出されることから、歯周病の悪化を招きやすいことも知られています。
歯周病と早産・低体重児出産
歯周病や毒素は子宮収縮や胎児の成長へ影響を与え、早産や低体重児出産へのリスクを高めます。歯周病の予防は、お母さんの歯だけでなく、生まれてくるお子様の健康にも大きな影響を与えることが近年注目されています。
歯周病と関節リウマチ
関節リウマチは免疫異常を伴う膠原病(こうげんびょう)の一つで、関節の破壊を引き起こす病気です。関節リウマチの原因は不明ですが、歯周病が一因とも考えられている他、歯周病治療で関節リウマチの症状が改善した報告もあります。
また免疫力の低下や口の乾きを合併しやすく、虫歯や口臭、口腔カンジダ症の発症リスクも高まります。
歯周病と腎臓病
歯周病と骨粗鬆症
歯周病は歯を失う病気
歯周病は歯を失う最大の原因で、全体の約4割を占めます。歯周病は自覚症状がほとんど出ないため、手遅れになりやすいのが特徴です。
食事を楽しめる人生を
歯がほとんどないと、十分な栄養が摂れず、食べたい物も限られてしまいます。
歯周病を早い時期から予防すると、ご自分の歯で食事を楽しむ人生を送ることができます。
歯が少ないと認知症になりやすい
歯がほとんどなく、入れ歯を使っていないと、入れ歯を使っている人と比べて、約1.9倍認知症になりやすいことが明らかになっています。
入れ歯を使ってよく噛めるようになると、脳に適度な刺激が加わり、認知症の予防につながると考えられています。
国の取り組み
政府が2019年6月にまとめた「経済財政運営と改革の基本方針2019」においても、“口腔の健康は全身の健康につながる”ことが記載され、
「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病 に係る対策に関する基本法」の附則第2条においても、歯科分野と脳卒中、心臓病に関連する歯科治療や研究の推進について重点に取り組むべきという内容が示されています。
まとめ
歯周病は様々な病気の引き金になることが明らかになっています。定期健診や歯のクリーニングを行い、歯周病を防ぐことは全身の健康にも役立ちます。
当院では、全身の健康を踏まえた歯周病のご相談・治療を承っております。お気軽にご相談ください。
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(参考文献)
・Sheiham A, Watt RG.
The common risk factor approach: a rational basis for promoting oral health.
Community Dent Oral Epidemiol 28(6), 399-406, 2000.