フッ素を含む食べ物|1日にどれだけ摂っている?
歯科医師・薬剤師が解説

「フッ素はどんな食べ物に入っているの?」「知らないうちに摂りすぎていないか心配」——そんな疑問をお持ちの方へ。
結論から申し上げます。日本の研究によると、成人が食事から摂るフッ素は1日あたり平均で約1.44mgと推定されています。これは健康上の問題になる量ではありません。
ただ「大丈夫です」とだけ言われても、納得はしにくいと思います。このページでは歯科医師と薬剤師の2つの免許を持つ院長が、実際に測定された数字をもとに解説します。
日本人は1日にどれだけフッ素を摂っている?
この問いに、日本で正面から答えた研究があります。
福岡歯科大学の副島隆先生が1994年に口腔衛生学会雑誌へ発表された「食品中のフッ素含有量に関する研究」です。
どのように調べたのか
福岡市で日常的に手に入る14の食品分類・65品目を対象に、それぞれ8回の繰り返し測定を行っています。前処理には乾式灰化法と微量拡散法、測定にはイオン電極法が用いられました。
そのうえで国民栄養調査(平成3年度)の食品群別摂取量と組み合わせ、日本人の成人が1日に食事から摂るフッ素の量を推定しています。
結果
全国平均で1日あたり1.44mg。北九州ブロックでは1.42mgでした。
1mgは、1円玉1枚(1g)の1000分の1の重さです。1日かけて食べたもの全部を合わせても、その1.5倍にも満たない量ということになります。
食品分類別のフッ素濃度

同じ研究で測定された、分類ごとのフッ素濃度です。濃度の高い順に並べています。
☟表は、横に動かすことができます(横スクロール可)。
| 食品の分類 | フッ素濃度(ppm) |
|---|---|
| 豆類 | 0.42〜41.75 |
| 穀類 | 0.19〜6.04 |
| 飲料類(お茶など) | 0.17〜2.99 |
| 魚介類 | 検出されず〜2.87 |
| 乳類 | 0.35〜1.52 |
| 野菜類 | 検出されず〜0.94 |
| きのこ類 | 0.01〜0.75 |
| 海草類 | 0.06〜0.58 |
| 肉類 | 0.04〜0.21 |
| 種実類 | 0.13 |
| 果実類 | 検出されず〜0.02 |
| いも類 | 0.01〜0.02 |
| 卵類 | 検出されず |
*副島 隆「食品中のフッ素含有量に関する研究」口腔衛生学会雑誌 44(3): 342-353, 1994 より。「検出されず」は、測定で検出限界に達しなかったことを示します。1994年の測定であり、現在の食品と多少の違いがある可能性があります。
「濃度」と「実際に摂る量」は別のものです

上の表を見て、こう思われたかもしれません。
「豆類が最大41.75ppm? かなり高いのでは」
当然な反応です。そして、ここがこのページで最も大切なところです。
濃度が高くても、食べる量が少なければ問題になりません
ppmは「1kgの食品に何mgのフッ素が入っているか」を表す単位です。濃度であって、量ではありません。
たとえば魚介類は最大2.87ppm。焼き魚を80g食べたとしても、含まれるフッ素は次のとおりです。
0.00287mg/g × 80g = 約0.23mg
一方、水は1日に1〜2リットル飲みます。仮に2ppmの水を1.5リットル飲めば、それだけで約3mg。同じ「ppm」でも、体に入る量はまったく違います。
決め手はこちら
先ほどの1.44mgという数字は、この41.75ppmを含む測定値をすべて使って、同じ研究者が計算した結果です。
つまり、高い数値も低い数値も、日本人が実際に食べている量と掛け合わせて積み上げた合計が1.44mgだということです。都合の良い数字だけを選んだものではありません。
濃度の数字だけを見て判断すると、実態を見誤ります。
お茶とフッ素

日本人が日常的に口にするという点で、お茶は特別な位置にあります。上の表でも、飲料類は0.17〜2.99ppmと比較的高めです。
茶葉と、淹れたお茶は別のものです
ここで注意していただきたいことがあります。乾燥した茶葉そのものと、淹れたお茶(抽出液)では、数字がまったく異なります。
水分が抜けているぶん、乾燥状態では成分が濃縮されるためです。日本歯磨工業会の解説でも、乾燥した茶葉にフッ素が含まれることが、飲むお茶とは分けて説明されています。
私たちが実際に口にするのは、淹れた状態のほうです。資料によって数値が違って見える場合、多くはどちらの状態を測ったかの違いです。
心配は要りません
お茶の木には、土のフッ素を葉に取り込む性質があります。そのため成長した葉ほど濃度が高くなる傾向があり、若い芽を使う煎茶や玉露より、育った葉を使う番茶やほうじ茶のほうが高めになります。
とはいえ、1日に何杯飲んでも、問題になる水準には遠く及びません。お茶を含めた1日分の合計が、先ほどの1.44mgです。
なお、乳幼児に麦茶を選ばれるご家庭が多いのは、カフェインを避けるためであり、フッ素とは関係ありません。
食べ物から摂りすぎることはある?

ありません。
日本の一般的な食生活で、食品由来のフッ素が過剰になることは考えられません。1日分を全部足しても、平均で約1.44mgにとどまるためです。
そして体に入ったフッ素は、大部分が24時間以内に尿から排出されます。溜め込まれるわけではありません。
では、なぜ歯みがき粉が必要なのですか?

「食事から毎日摂っているなら、歯みがき粉のフッ素は要らないのでは」——とても良いご質問です。
答えは、フッ素の効き方の違いにあります。
食事から摂ったフッ素は、いったん体に吸収されて全身をめぐります。歯の表面に届く量は、ごくわずかです。
一方、歯みがき粉や洗口液のフッ素は、歯の表面に直接ふれます。虫歯予防でもっとも大切なのは、この「歯の表面での働き」です。
つまり食事のフッ素と歯みがき粉のフッ素は、役割がまったく違います。食事で補えるものではありませんし、逆に食事から摂っているからといって歯みがき粉が過剰になることもありません。
(関連記事)
まとめ
・日本の研究では、成人が食事から摂るフッ素は1日あたり平均約1.44mgと推定されています
・濃度の高い食品はありますが、ppmは「濃度」であって「量」ではありません
・その高い数値も含めて積み上げた合計が1.44mgです。食べ物から摂りすぎることはありません
・ただし食事のフッ素と歯みがき粉のフッ素は役割が別です。虫歯予防には歯みがき粉が必要です
フッ素について気になることがありましたら、メールでのご相談もお受けしています。当院は東急東横線「大倉山駅」から徒歩2分、1階にございます。
*本サイトでは分かりやすさを優先し、フッ化物・フッ素化合物を総称して「フッ素」と表記しています。
参考文献
・副島 隆:食品中のフッ素含有量に関する研究.口腔衛生学会雑誌 44(3): 342-353, 1994.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jdh1952/44/3/44_3_342/_article/-char/ja
・日本歯磨工業会「フッ素について」
https://www.hamigaki.gr.jp/hamigaki1/fusso01.html
・日本口腔衛生学会ほか4学会「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法」2023年1月1日
https://www.kokuhoken.or.jp/jsdh/news/2023/news_230106.pdf
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