フッ素の摂りすぎで起こること
斑状歯(歯のフッ素症)を歯科医師・薬剤師が解説

「フッ素を摂りすぎると体に悪いのでは?」「子どもの歯に白い斑点がある。フッ素のせい?」——そうした不安から、このページに辿り着かれた方もいるのではないでしょうか。
結論から申し上げます。日本で普通に生活し、虫歯予防のためにフッ素を使っている範囲では、摂りすぎが問題になることはまずありません。
日本の水道水の水質基準そのものが、フッ素の取りすぎを防ぐ観点で設定されているためです(理由は後述します)。
そして、もうひとつお伝えしたいことがあります。お子さまの歯の白い斑点は、フッ素症ではないことのほうがずっと多いのです。
むしろ、フッ素で改善が期待できる状態であることもあります。
このページでは、歯科医師と薬剤師の2つの免許を持つ院長が、フッ素の慢性的な影響について、濃度の数字を示しながら解説します。
フッ素の摂りすぎには2種類あるって本当?

急性中毒(一度に大量に摂った場合)
一度に多量のフッ素を飲み込んだ場合に起こるもので、通常の虫歯予防で使う量では起こりません。
中毒量の具体的な数字、体重別の目安、誤って飲み込んでしまったときの対応については、別ページで詳しく解説しています。
慢性中毒(高濃度を長期間摂り続けた場合)
こちらがこのページの本題です。フッ素濃度の高い飲料水を、何年にもわたって飲み続けた場合に起こる可能性があるもので、「歯のフッ素症(斑状歯)」と「骨フッ素症」の2つが知られています。
インドや中国の一部の地域など、地下水に天然のフッ素が高濃度で含まれている地域で報告されています。
歯のフッ素症(斑状歯)とは

どんな症状ですか?
歯の表面に、白い斑点や白濁、程度が進むと褐色の着色がみられる状態です。虫歯とは異なり、痛みはなく、歯がもろくなることもありません。見た目の問題が中心です。
どんな条件で起こりますか?
歯がつくられている時期に、高濃度のフッ素を継続して摂り続けた場合に起こる可能性があります。
・時期:生後6か月ごろから8歳ごろまで(永久歯のエナメル質がつくられる時期)
・濃度:おおよそ2ppm以上の飲料水
・期間:その期間を通じて継続的に
すでに歯が生えそろった大人が、あとから斑状歯になることはありません。歯がつくられる時期にしか起こらないためです。
日本の水道水と比べてみると
比較の基準は2つあります。①日本の水道水の実際の平均濃度(約0.1ppm)と、②水道法で定められた上限(0.8mg/L)です。
☟表は、横に動かすことができます(横スクロール可)。
| 症状 | 起こりうる濃度 | 水道水の平均 (約0.1ppm)との比 |
水質基準 (0.8mg/L)との比 |
|---|---|---|---|
| 歯のフッ素症 (斑状歯) |
約2ppm以上 | 約20倍 | 約2.5倍 |
| 骨フッ素症 (骨硬化症) |
約8ppm以上 | 約80倍 | 約10倍 |
日本で起こりにくい、2つの理由
理由1|日本では水道水にフッ素を加えていない
アメリカなどでは水道水にフッ化物を加える「フロリデーション」が行われてきましたが、日本では実施されていません。日本の水道水に含まれるフッ素は、自然由来のもので平均約0.1ppm程度です。
理由2|水質基準が、斑状歯を防ぐために設定されている
これがもっとも重要な点です。水道法の水質基準では、フッ素及びその化合物は0.8mg/L以下と定められています。
そして厚生科学審議会の資料には、この0.8mg/Lという値が「斑状歯発生予防の観点から」維持されていると明記されています。
つまり、日本の水道水の基準は、はじめから斑状歯を起こさないように引かれた線なのです。この基準が守られている限り、水道水が原因で斑状歯になることは考えにくいといえます。
歯の白い斑点は、フッ素症?!

「子どもの歯に白い斑点がある」とご相談いただくケースのうち、フッ素症であることはむしろ少数派です。見た目が似ていても、原因はまったく異なります。
☟表は、横に動かすことができます(横スクロール可)。
| 見た目 | 考えられる原因 | 対応の方向性 |
|---|---|---|
| 左右対称に、複数の歯に白い斑点や白濁 | 歯のフッ素症(斑状歯) | 痛みや機能の問題はなく、多くは経過観察。見た目が気になる場合は相談を |
| 歯と歯ぐきの境目や、歯と歯の間に白く濁った部分 | 初期虫歯(脱灰) | フッ素で再石灰化を促し、削らずに回復を目指せる段階です |
| 1〜数本だけに、白〜黄褐色の境界のはっきりした変色 | エナメル質形成不全(MIH など) | むし歯になりやすいため、予防処置と経過観察が必要 |
お気づきでしょうか。「フッ素のせいで白い斑点ができた」と心配してご来院された方の歯が、実際には初期虫歯で、フッ素によって回復が期待できる状態だった——ということが、実際に起こります。
ただし、見た目だけで見分けるのは歯科医師でも難しい場合があります。拡大鏡やレントゲン、経過の確認を組み合わせて判断します。気になる斑点がある場合は、自己判断でフッ素をやめてしまう前に、一度ご相談ください。
斑状歯だった場合はどうする?

程度によって対応が変わります。
軽度の場合、多くは経過観察となります。歯の強さや機能に問題はなく、日常生活で困ることはありません。
見た目が気になる場合には、程度に応じていくつかの選択肢があります。歯の色を明るくする方法、削る量をごく少なくして白い材料で覆う方法、セラミックで覆う方法などです。どの方法が適しているかは、斑点の範囲や深さによって変わります。
自由診療となる場合の費用や治療期間、リスク・副作用については、診察のうえで詳しくご説明いたします。
骨フッ素症(骨硬化症)について
骨密度が増加し、脊椎などの骨に変化がみられる状態です。約8ppm以上のフッ素を含む飲料水を、10〜20年以上にわたって継続して摂取した場合に生じる可能性があるとされています。
上の表のとおり、これは日本の水道水の平均濃度の約80倍、水質基準の約10倍にあたります。
日本の水道水を飲んでいて骨フッ素症になることは、実質的に考えられません。水質基準が0.8mg/L以下に定められており、その10倍の濃度の水を10年以上飲み続けるという状況が、日本では成立しないためです。
フッ素は体に蓄積するの?

「毎日使っていると、体にどんどん溜まっていくのでは」というご心配をよくいただきます。
結論として、溜まりません。骨や歯に取り込まれたフッ素は、骨の入れ替わりとともに血液へ戻り、あらためて尿から排出されるためです。一方通行で積み上がることはありません。
吸収から排泄までの詳しい仕組みは、別ページで解説しています。
(関連記事)
よくあるご質問
Q. フッ素が不足することはありますか?
フッ素は土や水、食品など自然界に広く存在するため、通常の食生活で不足することはまずありません。
なお「フッ素が人にとって必須の栄養素かどうか」については国際的にも見解が分かれています。当院では「歯の再石灰化を助ける有用な微量元素」という位置づけでご説明しています。
Q. 日本の水道水にフッ素は入っていますか?
意図的には加えていません。自然由来のフッ素が平均約0.1ppm程度含まれており、水道法により0.8mg/L以下に管理されています。
Q. ミネラルウォーターや浄水器の水はどうですか?
国内で流通している飲料水は、水道水と同様の考え方でフッ素濃度が管理されています。海外産のミネラルウォーターには濃度の高いものもありますので、乳幼児に日常的に与える場合は成分表示をご確認ください。
Q. フッ素入りの歯みがき粉を毎日使って大丈夫ですか?
年齢に合った濃度と量を守っていただければ問題ありません。むしろ1日2回の使用が推奨されています。年齢別の使用量はフッ素配合の歯磨き粉のページをご覧ください。
Q. 子どもが何年もフッ素塗布を受けています。摂りすぎになりませんか?
なりません。フッ素塗布は数か月に1回の処置であり、1回あたりお口の中に残る量はごくわずかです。歯科医師・歯科衛生士が量を管理して行いますので、ご安心ください。
Q. 妊娠中・授乳中ですが、フッ素を使っても大丈夫ですか?
歯みがきや洗口による通常の使用であれば、心配される必要はまずありません。
むしろ妊娠中は、ホルモンバランスや食習慣の変化により、虫歯や歯ぐきのトラブルが起こりやすい時期です。当院は横浜市の妊婦歯科健診実施医療機関です。気になることがあればお気軽にご相談ください。
当院の考え方

・お一人おひとりの虫歯のリスク、年齢、生活習慣をうかがったうえで、必要な方に必要な方法をご提案します
・院長は歯科医師と薬剤師の2つの免許を持ち、薬剤の性質と安全域の考え方を踏まえてご説明します
・管理栄養士が在籍しており、食事からのフッ素摂取や、むし歯になりにくい食習慣についてもご相談いただけます
・保育士が在籍し、お子さまが不安なく通えるようサポートします
・院長は神奈川県の小児歯科相談医の指定を受けています
・「フッ素は使いたくない」というお考えも尊重します。その場合の代わりの予防方法もご提案いたします
当院は東急東横線「大倉山駅」から徒歩2分、1階にありますので、ベビーカーのままお入りいただけます。
メールでのご相談もお受けしています。「歯に白い斑点があるけれど、受診するほどか分からない」といった段階でも、どうぞお気軽にお問い合わせください。
まとめ
・フッ素の慢性的な影響には「歯のフッ素症(斑状歯)」と「骨フッ素症」がありますが、いずれも日本の水道水では起こりにくいものです
・その理由は、日本が水道水にフッ素を加えていないことと、水質基準(0.8mg/L以下)が斑状歯予防の観点から設定されていることの2つです
・歯の白い斑点は、フッ素症とは限りません。初期むし歯であれば、むしろフッ素で回復が期待できます
・自己判断でフッ素をやめてしまう前に、一度ご相談ください
*本サイトでは分かりやすさを優先し、フッ化物・フッ素化合物を総称して「フッ素」と表記しています。
関連記事
参考文献
・環境省「水質基準項目と基準値(52項目)」
https://www.env.go.jp/water/water_supply/kijun/kijunchi.html
・厚生科学審議会「水質基準等の見直しについて」(フッ素の基準値0.8mg/Lの根拠)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002y59v-att/2r9852000002y5ee_1.pdf
・日本口腔衛生学会ほか4学会「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法」2023年1月1日
https://www.kokuhoken.or.jp/jsdh/news/2023/news_230106.pdf
大倉山・港北区で、お口のお悩みはありませんか
大倉山駅前港北歯科クリニックには、大学病院口腔外科出身の歯科医師と管理栄養士が在籍しています。相談のみのご来院でも構いませんので、お気軽にご相談ください。
東急東横線「大倉山駅」から徒歩2分・1階
月〜金 9:30-19:00 / 土 9:30-18:30(日曜・祝日休診)
