歯と感染性心内膜炎

口の中の細菌が心内膜炎と関連する解説画像

「歯と心臓の病気がなぜ関係する?」と感じる方も多いのではないでしょうか。口の中の細菌は、心臓に到達して感染を引き起こすことが報告されています。感染性心内膜炎は命に直結するため、注意すべき病気です。

ここでは、歯と関係の深い「感染性心内膜炎」について、解説致します。

感染性心内膜炎とは?

血液中に侵入した細菌が心臓にたどり着いて、感染・炎症を起こす病気です。また死亡率が約20〜25%と致死率の高い病気として知られています。

特に注意したい方は?

 

人工弁を設置した心臓のイラスト画像

健康な心臓に細菌が感染することは稀ですが、以下の方は心臓の血流に異常が生じることがあり、感染性心内膜炎の発症のリスクが高いとされています。

  • 心臓の持病がある方
  • 人工弁、弁膜リングがある方
  • 感染性心内膜炎の既往がある方

などが挙げられます。

発症のリスクはどれくらい?

感染性心内膜炎(IE)の発症の倍率は、感染性心内膜炎(IE)の既往(経験)者は一般者と比べ約94倍、人工弁置換術後の方は約42倍と報告されています。

感染性心内膜炎の発症倍率のグラフ画像

口との関係は?

口の中や入れ歯が汚れていると、傷(抜歯後等)から細菌が侵入することがございます。

細菌が侵入しても必ず感染性心内膜炎を発症するわけではありませんが、心臓の状態(弁膜症や生まれつきの心臓病、人工弁置換術後など)によって発症の危険性が高まることがあります。

*1900年初めに、口の中の細菌が感染性心内膜炎に関係することが報告され、歯や口の状態が重要であることが示されました。

原因・しくみ

体内に侵入した細菌が血液に乗って、心臓の弁膜や心内膜、血管内膜に到達して感染を起こすことで発症します。

侵入経路

細菌の口からの侵入経路としては、

  • 抜歯後の傷
  • 放置して大きく穴が空いた虫歯
  • 重度の歯周病で出血しやすい歯茎

抜歯後の細菌の侵入の解説画像

重度の虫歯による細菌侵入の解説画像

重度歯周病による細菌侵入の解説画像

 

細菌の種類

感染性心内膜炎の原因となる主な菌として、私たちの口の中の菌(口腔レンサ球菌)や皮膚、鼻、髪などに存在する菌(黄色ブドウ球菌)などが挙げられます。

症状

約9割に発熱が認められます。そのほか、寒気や震え、食欲不振などがあります。

症状 発症する人の割合
発熱 約90%
寒気、震え 約50%
疲れやすい 約45%
食欲不振、体重減少 約30%
関節痛、筋肉痛 約20%

患者の数、男女差、死亡率

感染性心内膜炎の患者数や男女差、死亡率は日本感染症学会や複数の論文によると、以下のように報告されています。

☟下の表は、横に移動(スクロール)できます。

患者数 年間100万人あたり30〜70人
男女差 男性>女性

(全年齢で約1.2〜3倍、60歳以上では約2〜8倍、男性の方が多い)

死亡率 約20%

感染性心内膜炎の予防

抜歯前の抗生物質の服用

特に注意が必要な方」で抜歯などの治療を行う場合、事前に抗菌薬(抗生物質)の服用が推奨されます。

*「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン」日本循環器学会、日本心臓病学会等による。

抜歯にならないために

歯石取りをする歯科衛生士の画像

抜歯にならないためには、虫歯や歯周病を放置せず、定期的な健診や歯垢・歯石取り(歯のクリーニング)で口の中を清潔に保つことが大切です。

また入れ歯をお使いの場合は、入れ歯を正しく洗浄して清潔に保つことも大事です。

当院では痛みに配慮した歯石取りを行っております。痛み等にご不安な方は、遠慮なくご相談ください。

歯のクリーニング

入れ歯の洗浄(お手入れ)

まとめ

口の中の細菌は、口から離れた臓器にも移動することがあります。特に心臓病や人工弁のある方は感染性心内膜炎のリスクが高いため、定期的に歯医者さんに診てもらうと安心です。

心臓病の持病をお抱えの方で、お困りなことやご不明な点等ございましたら、お気軽にご相談ください。

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