フッ素の中毒症や欠乏症
フッ素は動物や植物、土、水などに含まれ、私たちは食品などから日常的にある程度の量を摂取していて、健康を維持する上で、必要な栄養素としてWHO(世界保健機関)やFAO(食糧農業機関)などが位置付けています。
一般的なフッ素の摂取あるいはフッ素入り歯磨き粉の使用で過剰摂取になることはありません。
摂り過ぎ(過剰)の場合
摂りすぎた場合の中毒には、急性中毒と慢性中毒の2種類があります。
急性中毒
一度に多量のフッ素を摂取した場合の症状です。
通常の虫歯予防で使われるフッ素の使用量で起こることはまずありません。急性中毒を起こす量とは、フッ素洗口液(うがい薬)や歯磨き粉を通常の約70〜200倍の量を一度に飲み込むことに相当します。
慢性中毒
日本の水道法の基準の数十倍以上のフッ素濃度の飲料水を、数年以上継続して飲み続けなければ問題にはなりません。
インドなどの熱帯地方や中国の乾燥地帯などのフッ素濃度が高い飲料水を利用している地域の居住民の一部で報告があり、“骨フッ素症”や“歯のフッ素症”があります。
症状 | 内容 |
---|---|
歯のフッ素症(斑状歯) | 歯の表面に褐色や染みなどがみられます。
フッ素濃度が2ppm(日本の水道水の平均的濃度は約0.1ppmで約20倍)の飲料水を、生後6ヶ月から8歳くらいまでに、継続して飲み続けた場合に生じる可能性があります。 |
骨フッ素症(骨硬化症) | 骨密度の増加が、脊椎骨や他の骨にみられます。
フッ素濃度が8ppm(日本の水道水の平均的濃度0.1ppmの約80倍)を10〜20年以上、継続して摂取した場合に生じる可能性があります。 |
フッ素の摂取不足の場合
フッ素は歯や骨をつくるのに欠かせない栄養素で、不足すると歯や骨がもろくなるといわれています。
ただし、フッ素は自然界であらゆるものに含まれているため、フッ素が不足することや摂取を避けることはできず、フッ素が不足する(欠乏症)ことはほとんどありません。
フッ素の摂取と排泄
フッ素の摂取経路
フッ素は土や水、動植物など自然界のあらゆるものに含まれ、私たちは主に食事などでフッ素を摂取しています。
フッ素の全摂取量の約3/4は食品や水、牛乳などから摂取しているといわれ、歯磨き粉からの摂取は全体の1/4と報告されています。
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フッ素の排泄
摂取したフッ素の半分以上は体外へすみやかに排泄されていきます。また吸収されたフッ素のごく一部は歯や骨を丈夫にするのに利用されます。
まとめ
フッ素の摂り過ぎや不足は通常、日本で問題になることはありません。
フッ素の安全性と効果の高さは75年以上の歴史で繰り返し確認され、WHO(世界保健機関)や厚生労働省、日本歯科医師会など150を超える世界の専門機関で、虫歯予防を目的とするフッ素配合歯磨き粉や洗口(うがい)が推奨されています。
*本サイトでは理解して頂きやすいよう、フッ化物、フッ素化合物を総称してフッ素と表現しています。
(参考文献)
・Haftenberger M, Viergutz G, Neumeister V, Hetzer G: Total fluoride intake and urinary excretion in German children aged 3-6 years. Caries Res, 35: 451-457, 2001.