虫歯予防法「フッ素洗口(うがい)」

フッ素洗口(うがい)とは、フッ素配合の洗口液をブクブクうがいする虫歯予防の方法です。フッ素洗口は、子供から大人まで簡単に始めることができます。

フッ素洗口は厚生労働省や日本歯科医師会、日本小児歯科学会、日本口腔衛生学会など多くの専門機関が推奨し、全国で広く普及し、虫歯予防に貢献しています。

フッ素洗口をする女性のイラスト画像

虫歯予防に役立つフッ素の働き

歯の修復(再石灰化)を促進する

フッ素は、酸によって歯から溶け出した(脱灰)カルシウムやリンを再び取り込み、修復(再石灰化)を促します。

歯の再石灰化と脱灰の画像

歯質を強化する

歯質の強化を表す画像

フッ素は、酸に溶けにくい強い歯をつくるのに役立ちます。

虫歯菌が酸をつくるのを抑える

フッ素による虫歯菌の抑制効果

フッ素は、虫歯菌の活動を弱めて歯を溶かす酸をつくり出すのを抑えます。

フッ素洗口液の成分

フッ素洗口液の成分は、医療医薬品に分類される「フッ化ナトリウム」が主に使用されています。

*過去には酸性フッ素リン酸溶液(APF)やフッ化第一スズが用いられていましたが、現在では最も評価の高い「フッ化ナトリウム」が一般的です。

市販と歯科医院専売の洗口液の違い

フッ素洗口液は、市販の「一般用医薬品」と歯科医院で購入する「医療用医薬品」に分けられます。両者には、含まれるフッ素濃度の違い(虫歯予防効果)があります。

見出し(上) フッ素濃度(ppm=100万分の1)
一般用医薬品 225ppm
医療用医薬品 250、450、900ppm

フッ素洗口による虫歯予防効果

フッ素の虫歯予防効果を示す画像

フッ素洗口は約30〜80%と高い虫歯予防効果が報告されています。

早い時期から始めると効果が特に高い

生えたての歯はフッ素を取り込みやすく、特に4〜15歳ごろの期間に継続してフッ素洗口を行うと、80%近い虫歯予防効果が得られたという報告もあります。

フッ素塗布やフッ素配合歯磨き粉との併用で高まる虫歯予防効果

フッ素塗布だけのときと比べ、フッ素塗布と併用すると、虫歯を約23%減少させることがわかっています。

またフッ素配合歯磨き粉と併用すると、虫歯を約33%減少させることも報告されています。

組み合わせ 上乗せ効果(虫歯抑制率)
「フッ素洗口」+「フッ素塗布」 約23%
「フッ素洗口」+「フッ素配合歯磨き粉」 約33%

(参考資料)

「う蝕予防の実際 フッ化物局所応用実施マニュアル」日本航空衛生学会フッ化物応用委員会 編

・「根面齲蝕の診療ガイドライン -非切削でのマネジメント-」日本歯科保存学会 編

利点と欠点

フッ素洗口の特徴 内容
利点(メリット)
  • 虫歯予防効果が高い。
  • 使い方が簡単で、自宅で使用可能。
  • 低濃度(225〜250ppm、450ppm)で安全性が高い。
  • 他のフッ素の応用方法と併用可能。
欠点(デメリット) ・ブクブクうがいができる方が対象

使い方

「週1回法」と「毎日法」の2種類がありますが、自宅で行なう場合は「毎日法」が一般的です。

使用方法 場所
毎日法 自宅、集団応用(保育園・幼稚園・こども園)
週1回法 集団応用(小・中学校)

*学校などで集団で行う方法を「集団応用」と呼びます。

自宅で行う「毎日法」

1回の使用量

  • 5〜10mlの洗口液を口に含み、すべての歯に十分行き届くように、約30秒〜1分間洗口「ブクブクうがい」をします。
年齢 1回の使用量
小学生以上(6歳以上) 7〜10mL
就学前(4〜5歳) 5〜7mL

1日の使用回数

1日1回、「ブクブクうがい」をするだけです。

効果的な使用方法

飲食後や就寝前

フッ素が流れてしまわないように、洗口後約30分間はうがいや飲食を控えましょう。特に就寝前に行うのが効果的です。

継続して行う

歯を強くして虫歯になりにくくするには、フッ素洗口を継続して行うことがポイントです。特に永久歯の虫歯予防がフッ素洗口の最大の目的になるため、少なくとも永久歯が生え揃うころまで継続することが推奨されています。

歯磨き粉と併用

フッ素配合の歯磨き粉やフッ素塗布と合わせて行なうことで、より高い虫歯予防効果が得られます。

当院では「医療用医薬品」のフッ素洗口液を取り扱っております。またフッ素に関する疑問点等ございましたら、お気軽にご相談ください。

注意点

フッ素洗口のうがい方法

  • フッ素洗口は「ゴロゴロうがい」ではありません。うつむき加減で「ブクブクうがい」で使いましょう。
  • 特に幼児の場合、フッ素洗口を始める前に、水で「ブクブクうがい」を練習するのも良いでしょう。
  • フッ素洗口後、約30分はゆすいだり、飲食するのは控えましょう。(洗口前に水分補給を済ませておきましょう。)

年齢

フッ素洗口は4歳ごろから開始して15歳ごろまで継続的に行うと、特に虫歯予防効果が高いといわれています(生えた後2〜3年の永久歯はフッ素を取り込みやすいため)。

子供や大人がフッ素洗口をするイラスト画像

大人でも効果はある?

大人にもフッ素の効果はあることを伝える画像

成人や高齢者などにも虫歯予防効果はあり、「ブクブクうがい」と「吐き出し」ができる方が対象となります。

特に成人から高齢者にかけて増える「歯の付け根」や「歯の根元」の虫歯に予防効果があることが証明されています。

歯の付け根の虫歯

特におすすめな方

  • 虫歯になりやすい
  • 歯の根っこが見えている
  • 唾液が少ない
  • 甘いものや酸っぱいものをよく摂る
  • つめものやかぶせものが多い
  • 歯がしみる
  • 手が不自由である

フッ素洗口の虫歯予防効果を示す実例

新潟県内の小学校内

新潟県では全国に先駆け、フッ素洗口に取り組み、20年以上連続(2020年時点)にわたって、子供の虫歯の本数が最も少ない都道府県となっています。

フッ素洗口の虫歯予防効果を示すグラフ

全国と新潟県の虫歯平均本数の比較を示す画像

フッ素の毒性や危険性は?

歯の相談を担当する歯科衛生士の画像

フッ素は通常の使用量で毒性や危険性はありません。フッ素の安全性や虫歯予防効果は75年以上の歴史で繰り返し確認され、WHO(世界保健機関)や日本歯科医師会など世界の150を超える専門機関で証明されています。

フッ素の中毒量は5mg/kg(体重)[*]といわれ、10〜15kgの子供で約50〜75mgです。1回のフッ素洗口後に口の中に残るフッ素は約0.1〜0.2mgで、通常の使用では問題になりません。

フッ素の毒性・危険性は?

*フッ素中毒は以前、2mg/kg(1899年に報告)とされていましたが、科学的に裏付けが乏しく、5mg/kg(1987年に報告)が採用されるようになりました。

まとめ

フッ素洗口は、ご自宅で専用の洗口液で口をゆすぐ虫歯予防方法で、簡単かつ虫歯抑制効果の高いことが特徴です。また他のフッ素応用法(フッ素配合歯磨き粉やフッ素塗布)との併用で、より高い虫歯予防効果も報告されています。

虫歯の予防、フッ素等について、ご不明な点等ございましたら、お気軽にご相談ください。

*本サイトでは理解して頂きやすいよう、フッ化物、フッ素化合物を総称してフッ素と表現しています。


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