虫歯予防方法「フッ素塗布」
「フッ素塗布はいつから?大人でも意味はある?」

フッ素塗布の虫歯予防効果を示すイラスト画像

フッ素塗布とは、歯科医院で高濃度のフッ素のお薬を歯に塗る虫歯予防方法で、幅広い年齢層に適応されます。

ここでは、「フッ素塗布の料金は?頻度(間隔)は?」、「フッ素塗布はいつからいつまで(何歳)?子供に危険性はないの?」、「フッ素塗布って大人でも意味があるの?」などよくある質問にわかりやすく解説していきます。

フッ素塗布はいつからいつまで(何歳)?

フッ素塗布は、歯が生えてきたら(生後6ヶ月〜1歳)始めることが推奨されています。また15歳ごろまで継続して、フッ素塗布をすると、虫歯予防効果が特に高くなります。また成人以降でもフッ素塗布は効果があります。

子供から大人まで歯が丈夫な人たちの画像

生えたての歯にフッ素塗布をするのが良い理由

  • 生えたての歯はフッ素を取り込みやすい。
  • 歯は生えてから2〜3年が最も虫歯になりやすい。

乳歯が生える順番や時期、本数

フッ素塗布は大人でも意味はある?

フッ素塗布は大人にも効果があり、特に「歯の付け根の虫歯」の予防に効果があります。

大人にもフッ素の効果はあることを伝える画像

歯の付け根の虫歯

特におすすめな方

  • 虫歯になりやすい
  • 歯茎が下がり、歯の根っこが見えている
  • 唾液が少ない
  • 甘いものや酸っぱいものをよく摂る
  • つめものやかぶせものが多い
  • 歯がしみる
  • 手が不自由である

歯の付け根が黒い、しみる

酸で歯が溶ける(酸蝕歯)

虫歯予防に役立つフッ素の働きとは

歯の修復(再石灰化)を促進する

歯の脱灰と再石灰化を示す画像

フッ素は、酸によって歯から溶け出した(脱灰)カルシウムやリンを再び取り込み、修復(再石灰化)を促します。

初期虫歯の修復

脱灰が進み、穴が開く一歩手前の「初期虫歯」を再石灰化で修復します。

歯質を強化する

歯質の強化を表す画像

フッ素は、酸に溶けにくい強い歯をつくるのに役立ちます。特に乳歯や生えたばかりの永久歯は、フッ素を取り込みやすく、歯質を強化しやすいといわれています。

虫歯菌が酸をつくるのを抑える

フッ素による虫歯菌の抑制効果

 

フッ素は虫歯菌の活動を弱めて酸をつくるのを抑え、歯を守ります。

フッ素塗布の虫歯予防効果

フッ素塗布による虫歯予防効果は、乳歯では約50%以上、永久歯では約40%(根っこの虫歯に対しては約70%)と報告されています。

フッ素の虫歯予防効果を示す画像

*フッ素塗布の虫歯予防効果は定期的に継続して得られるもので、1回だけ塗布しても効果は得られません。

フッ素塗布の普及と虫歯の抑制

フッ素塗布は1949年に厚生省・文部省より指針が出され、以後、日本歯科医師会など多くの専門機関が推奨し、日本を含む世界の虫歯予防に大きく貢献しています。

フッ素配合歯磨き粉との併用で高まる虫歯予防効果

他のフッ素応用方法(フッ素配合歯磨き粉やフッ素洗口など)と併用すると、フッ素の虫歯予防効果はさらに高まることが明らかになっています(通常の用法・用量で摂取過剰になることはありません)。

組み合わせ 上乗せ効果(虫歯抑制率)
「フッ素塗布」+「フッ素配合歯磨き粉」 約64%
「フッ素塗布」+「フッ素洗口(うがい)」 約23%

(参考資料)

「う蝕予防の実際 フッ化物局所応用実施マニュアル」日本航空衛生学会フッ化物応用委員会 編

虫歯予防効果をより高めるために

  • 3〜4ヶ月に1回程度の間隔で、定期的にフッ素塗布する。
  • 歯の生え始め、生え変わりの時期に行うと、特に効果的。

フッ素の毒性・危険性は?

フッ素は通常の使用量で毒性や危険性はありません。フッ素の安全性や虫歯予防効果については75年以上の歴史で繰り返して確認され、WHO(世界保健機関)や日本歯科医師会など世界の150を超える専門機関で証明されています。

フッ素の中毒量は5mg/kg(体重)[*]といわれ、体重10〜15kgの子供で約50〜75mgです。1回のフッ素塗布後に口の中に残るフッ素量は約1〜2mgであり、中毒量(25〜75回分)よりはるかに小さく、問題はございません。

歯の相談を担当する歯科衛生士の画像

*フッ素中毒は以前、2mg/kg(1899年に報告)とされていましたが、科学的に裏付けが乏しく、5mg/kg(1987年に報告)が採用されるようになりました。

フッ素配合歯磨き粉や洗口(うがい)との併用も問題なし

虫歯効果を高めるために、フッ素入りの歯磨き粉や洗口(うがい)液と併用しても、全く問題ありません。

1回のフッ素配合歯磨き粉のフッ素量は子供で0.01〜0.25mg、成人で1mgです。また1回のフッ素洗口(うがい)後に口の中に残るフッ素は0.1〜0.2mgといわれ、他のフッ素を併用しても問題ありません。

フッ素塗布の頻度(間隔)

フッ素塗布は3ヶ月〜6ヶ月に1、2回の間隔で継続することがおすすめです。フッ素塗布は定期的に継続するほど、虫歯予防効果が得られやすいことが明らかになっています。

メリットとデメリット(留意点)

☟下の表は、横に移動(スクロール)できます。

フッ素塗布の特徴 内容
メリット
  • 安全性が高い。
  • 虫歯予防効果が高い。
  • うがい不要なため、うがい・ゆすぐことができない方も有効。
  • 他のフッ素の虫歯予防方法と併用可能。
デメリット
  • 自宅ではなく、歯科医院で行う。
  • 1回限りでは効果は得られない。

塗布後の注意点

フッ素塗布後、30分間程度は飲食やうがいを控えましょう。

フッ素塗布薬の種類、成分

種類(性状)

フッ素塗布に使うお薬は液体、ジェル、泡タイプなどの種類があります。

☟下の表は、横に移動(スクロール)できます。

フッ素の種類 特徴
液体
  • 歯と歯の間など細かい部分に浸透しやすい。
  • 歯全体に広がりやすい。
ジェル
  • 歯の表面に残りやすい。
  • 乾燥しにくい。
  • 誤嚥しにくい。
  • 歯と歯の間など細かい部分に浸透しやすい。
  • 誤嚥しにくい。

フッ素の成分

フッ素塗布のお薬の成分は次のいずれか3種類です。

2%フッ化ナトリウム(NaF)

  • 適用範囲が広い(詰め物や被せ物の種類、インプラントの有無を問わない)。

リン酸酸性フッ化ナトリウム(APF)

  • フッ素が歯に浸透しやすい。
  • インプラントとの相性が良くない。

フッ化第一スズ(SnF₂)

  • スズイオンによる殺菌作用のほか、歯垢がつきにくくなる(虫歯や歯肉炎の予防)。
  • 歯茎が白くなったり、歯が茶色く着色することがある。
  • 酸性の製品は、インプラントとの相性が良くない。

フッ素塗布の料金

フッ素塗布は保険適用で対応させて頂きます(歯科診療保険制度では2006年から「フッ化物局所応用加算」で保険適用となっています)。

3割負担の場合で、初診料などを含めて1500円前後です(保険診療の負担額は個人によって異なります)。

フッ素以外の虫歯予防方法

虫歯予防にはフッ素のほか、歯磨きと甘味制限も大切です。

特に砂糖(ショ糖)は虫歯の最大の原因の一つであるため、甘いものを食べるときには量や甘味料の種類にも注目してみましょう。

虫歯の原因

虫歯の原因になりやすい食べ物

虫歯の原因にならない甘味料

まとめ

フッ素塗布は定期的に歯にフッ素を塗布する方法で、虫歯予防効果が高いことが特徴です。また対象年齢は子供から大人まで幅広く、他のフッ素応用法(フッ素配合歯磨き粉やフッ素洗口)との併用で、より高い虫歯予防効果も明らかにされています。

虫歯の予防やフッ素について、ご不明な点等ございましたら、お気軽にご相談ください。

(関連記事)

フッ素洗口

フッ素配合の歯磨き粉

歯を守る歯磨き粉

虫歯はうつる?


*本サイトでは理解して頂きやすいよう、フッ化物、フッ素化合物を総称してフッ素と表現しています。

(参考文献)

・「う蝕予防の実際 フッ化物局所応用実施マニュアル 日本口腔衛生学会フッ化物応用委員会 編」

・「フッ化物の予防技術・開発-フッ化物歯面塗布の評価-、厚生科学研究費補助金(医療技術評価総合的研究事業)歯科疾患の予防技術・治療評価に関するフッ化物応用の総合的評価,平成12年度研究報告書,145-165,2001.」八木稔先生

・「ある地域ベースの乳歯う蝕予防プログラムに関する評価-プリシード/プロシードモデルを用いて-,口腔衛生会誌,49;329-340,1999.」

・「フッ化ジアンミン銀の局所塗布による臼歯のう蝕抑制効果について」小児歯科学雑誌 11巻1号(1973)P33 鈴木俊行先生

・「根面齲蝕管理のためのフッ化物応用について フッ化ジアンミン銀、フッ化物バニッシュを中心に」宮本茜先生ら 口腔衛生会誌 72:152-157,2022

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