歯ぎしりについて
原因や対策、治療法は?
歯ぎしりとは、歯をギリギリとこすり合わせたり、噛み締めたり、食いしばったりする癖(クセ)を指します。特に、睡眠中の歯ぎしりは睡眠障害(*)の一つとされています。
歯ぎしりは歯や顎関節には想像以上の負担がかかります。一方で、自覚症状のないこともあります。
ここでは、「歯ぎしりの原因・理由は?影響は?」や「歯ぎしりの対策や治療、予防方法は?」などよくある質問について、わかりやすく解説していきます。
*歯ぎしりは、『睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)』の中で「睡眠関連運動障害群」に分類され、睡眠障害の一種とされています。
歯ぎしりの原因・理由は?
歯ぎしりの原因には、次のものが挙げられます。特に、睡眠の質が低下する生活習慣や病気などは、歯ぎしりのリスクを高めるといわれています。
- ストレス
- お酒(アルコール)
- カフェイン(例:コーヒーなど)
- タバコ
- 睡眠の問題(浅い眠り、不眠症など)
- 他の病気(睡眠時無呼吸症候群や逆流性食道炎など)
- お薬の副作用(向精神薬、抗うつ薬など)
- 遺伝
- 脳震盪(しんとう)などの頭のケガ ☞受傷後2〜3ヶ月に重度の歯ぎしりを発症する報告あり。
歯ぎしりの影響は?
歯ぎしりは、歯や顎にとても大きな負担(100kg以上)がかかるため、顎関節症や歯周病の悪化、頭痛、肩こりなどの原因にもなることも多々あります。
睡眠時無呼吸症候群との併発?!
歯ぎしりは、睡眠中に呼吸が止まった後(無呼吸発作)に発生することが多く、近年では睡眠時無呼吸症候群との合併の可能性が指摘されています。
治療
マウスピース
治療効果
マウスピースは歯ぎしりを減らす効果や歯のすり減り、歯の揺れ、顎関節症、歯周病の悪化を防ぐ効果などが論文で報告されています。
治療費用、通院回数
通院回数は原則2回で、歯型を取ってマウスピースを作成します。
また保険適用の治療方法で、治療費用は約3000円(初診料や再診料を除く)となります。
良い睡眠をとる
歯ぎしり(睡眠時ブラキシズム)は睡眠が浅くなる段階で発生しやすくなります。そのため、歯ぎしり対策の一つとして、睡眠の質を高めることも推奨されています。
歯ぎしりの予防
歯ぎしりの予防には、睡眠の質が低下しないための取り組みや工夫をするのがおすすめです。
例)眠る前のお酒(アルコール)やタバコ、カフェインの摂取を控えたり、音や光の刺激を減らすなど。
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薬物療法
ボツリヌス療法
ボツリヌス療法は、ボツリヌストキシンを顎の筋肉に注射して、筋肉の緊張をほぐし、歯ぎしりを軽減させる治療法です。ボツリヌストキシンはボトックスなどの製品に含まれるため、ボトックス治療ともいわれています。
約3〜6ヶ月間の持続効果が得られ、噛み締めや食いしばりなどが強い人におすすめです。
*保険適応外で治療費用は1回35,000円となります。
その他のお薬
高血圧症治療薬の一種であるクロニジンや抗不安薬であるジアゼパムが、睡眠中の歯ぎしりを減少させることが論文で報告されています。ただし、歯科での保険診療の取り扱いはございません。
寝るとき用の入れ歯(夜間義歯)
歯を守るために、寝るとき用の入れ歯が効果的な場合もあります。
- ぐらぐらしている歯がある
- 奥歯がない
噛み合わせの治療
噛み合わせに明らかな異常がある場合に行われる治療です。ただし、「噛み合わせ」と「歯ぎしり」の関係性は低いとする論文の報告も複数存在します。
音がしない歯ぎしりもある?
歯ぎしりの種類とは
歯ぎしりには次の3種類あります。
- グライディング(ギリギリと歯をこすり合わせる)
- クレンチング(ギュッと食いしばる)
- タッピング(カチカチと歯を噛み合わせる)
歯をこすり合わせる(グライディング)
「ギリギリ」・「ゴリゴリ」と歯をこすり合わせるタイプの一般的な歯ぎしりで音がするので、家族など第三者からの指摘を受けやすいという特徴があります。
食いしばり、噛み締め(クレンチング)
歯を噛み締めるタイプの歯ぎしりで、音がしないので、家族など第三者からの指摘を受けないことがほとんどです。
カチカチと噛み合わせる
上下の歯をカチカチと噛み合わせるタイプの歯ぎしりで、他の種類の歯ぎしりに比べると、歯や顎への負担は少ないです。
しかし、頻度が多い場合には睡眠時てんかんが疑われることもあります。
年齢と歯ぎしりの人の割合
歯ぎしりは、乳歯が生えたばかりの1歳未満の乳児から発症することもあります。また高齢者や歯のほぼ無い方まで、幅広い年齢層にみられます。
高齢になると歯ぎしりは減る?!
歯ぎしりの人の割は加齢とともに少なくなると報告されていますが、個人差があります。
年齢 | 歯ぎしりの人の割合 |
---|---|
〜10代 | 約10〜30% |
20〜40代 | 約10% |
50代 | 約6% |
60代以上 | 約4% |
ちなみに、睡眠時無呼吸症候群は加齢とともに増加する傾向にあります。
まとめ
歯ぎしりや噛み締め、食いしばりは自覚がないことが多いですが、歯や顎への負担は大きく、歯がすり減ったり、顎関節症、歯周病の悪化など多くの影響があります。
健康な歯を守るためには、歯ぎしり対策がおすすめです。歯ぎしりや噛み締め、食いしばりについて、ご不明な点等ございましたら、お気軽にご相談ください。
(参考資料・文献)
- 「ブラキシズムの診療ガイドライン 睡眠時ブラキシズムの治療(管理)について 公益社団法人 日本補綴歯科学会 診療ガイドライン委員会 編」
- 「Lavigne 1994; Ohayon 2001; Kato 2012;Petit 2007,Strausz 2010,Simola 2010,Castelo 2010,Serra-Negra 2010,etc」
- Itani O,Kaneita Y,Ikeda M,et al. Disorders of arousal and sleep-related bruxism among japanese adolescents:a nationwide representative survey.Sleep Med 2013;14:532-541.
- Kato T,Velly Am,Nakane T,Masuda Y,Maki S.Age is associated with self-reported sleep bruxism,independently of tooth loss.Sleep Breath 2012;16:1159-1165.
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