歯科と関係がある?!
逆流性食道炎(胃食道逆流症)について

逆流性食道炎の胸やけで胃をさせる人の画像

「逆流性食道炎」の名前を聞いたことがあっても、実は、歯科と関連の深い病気であることをご存知の方は少ないのではないでしょうか。

ここでは、逆流性食道炎と関連の深い歯科の病気について、解説致します。

  • 歯が溶ける(酸蝕歯)
  • ドライマウス(口が乾く)
  • 睡眠時無呼吸症候群

逆流性食道炎(胃食道逆流症)とは?

胃食道逆流症(Gastro Esophageal Reflux Disease:GERD)とは、胃酸を含む胃の内容物が食道へ逆流する病気です。日本では、約1〜2割の人が胃食道逆流症といわれています。

近年増加傾向

近年日本では、食生活の欧米化や胃酸分泌の増加、ピロリ菌の感染率低下、人口の高齢化などによって、胃食道逆流症の患者数は増加傾向にあります。

逆流性食道炎との違いは?

胃食道逆流症のうち、食道粘膜に傷(びらん)があるものが逆流性食道炎です。

☟下の表は、横に移動(スクロール)できます。

名称 胸やけ 食道粘膜の傷の有無
胃食道逆流症 逆流性食道炎 ある(無いこともある)
非びらん性胃食道逆流症 ある

歯科との関連

胃食道逆流症(逆流性食道炎)は、歯が溶ける病気(酸蝕歯)やドライマウス(口の乾き)、歯ぎしり、睡眠時無呼吸症候群を合併することが報告されています。

歯が溶ける(酸蝕歯)

酸で溶けた歯の画像

胃酸は酸性度がとても強く、口まで逆流することもあります。胃酸が逆流すると口の中が酸性になり、歯が溶けて知覚過敏(歯がしみる)や虫歯のリスクが高まります。

歯が溶ける(酸蝕歯)

口が乾く(ドライマウス)

口が乾くイラスト画像

逆流性食道炎の方の約50%以上が口の乾きを訴え、37%に唾液量の減少が報告されています(*1)。また唾液が少ないと、口の中に逆流した胃酸を中和できず、歯がさらに溶けやすくなります(酸蝕歯の悪化)。

口が乾く(ドライマウス)

睡眠時無呼吸症候群

いびき・睡眠時無呼吸症候群の画像

睡眠時無呼吸症候群の患者では、

  • 約3〜6割が逆流性食道炎を合併している。
  • 睡眠時無呼吸症候群が重症であるほど、胃酸の逆流が起きやすい。
  • 逆流する胃酸による胸やけで、睡眠を妨げられる。
  • 胃酸の逆流と無呼吸の時期一致が約50%である。
  • 無呼吸時の体内の圧力差や横隔膜の運動が、胃酸の逆流を誘発する。

などが報告されています(*2)。

睡眠時無呼吸症候群の患者は胃酸逆流の頻度が多いことを示す画像

睡眠時無呼吸症候群の重症度と逆流性食道炎の合併率を示す画像

また逆流性食道炎と睡眠時無呼吸症候群を合併している場合は、睡眠時無呼吸症候群の治療・対策をすることで、逆流性食道炎が改善することも明らかにされつつあります。

いびき、睡眠時無呼吸症候群

歯ぎしり

逆流性食道炎の方では睡眠中にも胃酸の逆流が認められ、歯ぎしりの頻度が高まることが報告されています(*3)。

逆流性食道炎の患者の歯ぎしり有病率を示す画像

また胃食道逆流症の治療薬(プロトンポンプ阻害薬:PPI)で、歯ぎしりの頻度が減少することも明らかになっています(*4)。

逆流性食道炎の治療による歯ぎしりの改善を示す画像

胃食道逆流症と歯科治療

胃食道逆流症(逆流性食道炎)は放置すると、逆流する胃酸で歯が溶け、虫歯になりやすくなります。当院では、定期的な歯科健診や歯垢取りによる予防、さらに溶けた歯の修復治療などの取り組みをしております。

また睡眠時無呼吸症候群のためのマウスピース作成やドライマウスの検査・治療も行っております。

まとめ

逆流性食道炎は歯や全身の健康にも影響を及ぼします。「歯が溶けている?!」、「口が乾く」、「いびきをかく」など気になる症状がございましたら、お気軽にご相談ください。

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(参考文献)

*1「GERDは歯科疾患の原因となり得るか?」治療,92:481~484

*2  以下参照

  • 新潟大学大学院医歯学総合研究科内部環境医学講座(第二内科)中山 秀章先生ら「睡眠時無呼吸症候群の胃食道逆流症合併とCPAPによる治療効果の検討」
  • 菅井 望,鈴木潤一先生ら:閉塞性睡眠時無呼吸症候群における胃食道逆流症の合併頻度と病態,消化器科, 38(2):143〜147,2004.
  • 平田正敏先生ら:閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者における胃食道逆流症について、日本呼吸器学会雑誌、40(増):168,2002
  • Valipour,A.,Makker,H.K.,Hardy,R.,et al.:Symptomatic gastroesophageal reflex in subjects with a breathing sleep disorder,Chest,121:1748〜1753,2002.
  • Green,B.T.,Broughton,W.A.,O’Connor,J.B.,et al.:Marked improvement in nocturnal gastroesophageal reflex in a large chort of patients with obstructive sleep apnea treated with continuous positive airway pressure,Arch Intern Med,163:41〜45,2003.
  • 岩切龍一先生ら:胃食道逆流症の頻度,消化器科,28:315〜320,1999.
  • Ing,A.J,Ngu,M.C.,Breslin, A.B.:Obstructive sleep apnea and gastroesphageal reflux, Am J Med,108(Suppl 4a):120S ~125S, 2000.
  • 「睡眠時無呼吸症候群(OSAS)合併逆流性食道炎患者の臨床像と治療に関する検討」濱田博重,城戸聡一郎,春間賢 日本消化器病学会雑誌103,A98

*3 「Association between sleep bruxism and gastroesophageal reflux disease」Cristiane Machado Mengatto DDS, MSc, PhD , Charlene da Silveira Dalberto , Betina Scheeren DMD , Sérgio Gabriel Silva de Barros DMD, MSc, PhD

*4「Association Between Nocturnal Bruxism and Gastroesophageal Reflux」SLEEP, Vol. 26, No. 7, 2003
Shouichi Miyawaki, DDS, PhD; Yuko Tanimoto, DDS; Yoshiko Araki, DDS; Akira Katayama, DDS; Akihito Fujii, DDS; Teruko Takano-Yamamoto, DDS, PhD

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