歯と腎臓病(透析、腎移植)
歯周病予防で腎臓を守る?!
歯と腎臓。互いに離れた場所にありますが、実は腎臓病の患者さんは健康の方と比べ、虫歯や歯周病になりやすいことをご存知でしょうか?
さらに近年では、歯周病が悪化すると腎機能が低下することも報告され、歯周病の予防が注目されています。
ここでは、意外と知らない“歯と腎臓”の関係をわかりやすく解説致します。
目次
歯周病と腎臓の関連
腎臓病だと歯周病・虫歯になりやすい?!
腎臓病の方は健康の方と比べ、歯周病の進行リスクが約1.7倍(*1)高まることが報告されています。
慢性腎臓病(CKD)や腎移植、透析の方は、
・免疫力の低下
・口の乾燥
・カルシウムの吸収や骨代謝異常
などが起こりやすく、歯周病や虫歯が進行しやすい傾向があります。
また糖尿病や高血圧症、骨粗鬆症を合併し、さらに歯周病や虫歯のリスクが高まることもあります。
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腎臓病が虫歯・歯周病が悪化させる
- 免疫抑制剤やステロイド剤によって、免疫力が低下し、口の中の細菌が繁殖しやすい。
- ドライマウス(口が乾く)を伴うことも多く(特に透析患者の約半数が自覚)、口の中の細菌が繁殖しやすい。
- 糖尿病の合併により、口が乾き、免疫力が低下するため、歯茎が腫れやすい。
- 合併する高血圧の治療薬の副作用で、歯肉が増殖し、歯磨きがしにくくなる。(薬物性歯肉増殖症)
英国バーミンガム大学の研究(*2)によると、腎機能が約3%低下すると、歯周病の炎症は約25%悪化(増加)することが報告されています。
歯周病が腎機能を低下させる?!
歯周病と腎臓は互いに影響し合い、歯周病が腎機能を悪化させる報告もあります。
英国バーミンガム大学の研究(*2)によると、歯周病の炎症が約10%増加すると、腎臓機能が約3%低下すると報告されています。
*腎臓機能が3%低下すると、5年で腎不全になるリスクが32〜34%増加する可能性があることも報告されています。
注意すべき腎臓の病気
特に慢性腎臓病(慢性的に腎臓の機能が低下する)人工透析、糖尿病性腎症(糖尿病の合併症)、腎移植が挙げられます。
人工透析、糖尿病性腎症
人工透析は失われた腎機能の一部を代行しますが、腎機能が低下すると以下の問題が発生します。
腎臓の機能低下・喪失の原因の約4割は糖尿病といわれ、糖尿病を合併する方も少なくありません。また糖尿病も歯周病を悪化させる病気の一つとして知られています。
腎移植
腎移植後は免疫抑制剤やステロイド剤の副作用により、免疫力低下・ドライマウス(口の乾き)を伴い、歯周病の悪化や口腔カンジダ症、口唇ヘルペス、口内炎が引き起こされることもあります。
まとめ
歯と腎臓、いずれも健康に欠かせない存在。
離れた場所にある歯と腎臓ですが、互いに影響し合い、腎臓が悪くなると、虫歯や歯周病、口臭の悪化につながります。
また歯周病が悪化すると、腎機能が低下することも報告されています。
歯と腎臓の健康を保つには、定期健診や歯周病治療・歯のクリーニングを受け、お口の中を綺麗にすることが大切です。
当院では管理栄養士、大学病院口腔外科出身の歯科医師が在籍し、腎臓に持病を抱える方の歯科治療も承っております。ご不明な点があればお気軽にご相談ください。
*服用中のお薬については担当医にお伝えください。
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(出典・参考文献)
*1:東京都健康長寿医療センター 平野浩彦先生らの調査「歯周病とCKD(慢性腎臓病)の関連について」