歯垢とは
歯垢(しこう)とは歯の表面に存在する白いねばねばとした細菌の塊で、プラークとも呼ばれます。
歯垢は虫歯や歯肉炎、歯周病(歯槽膿漏)の主な原因で、細菌は唾液や血液によって運ばれ、口から離れた全身の健康にも影響を与えることが明らかになっています。
目次
歯垢の正体は?
歯垢は食べかすではなく、歯の表面で発育した細菌の塊です。歯垢1mgの中に約700種類以上、数億個以上の菌が存在し、虫歯菌や歯周病菌などを含みます。
歯垢の約7割は細菌そのもので、残りの約3割は菌が作り出す粘りのある物質(グリコカリックス、菌体外多糖類)から成っています。
菌はどこから来る?
虫歯菌や歯周病菌は生後、人との接触や交流の中で、主に唾液を介して感染して口の中に住み着きます。
虫歯菌
虫歯菌はおおよそ生後1歳半から2歳半ごろに住み着きやすく、食器の共有や口の接触など家族(特に母親)の唾液を介して感染します。
歯周病菌
歯周病菌の感染時期は虫歯菌よりも遅く、一部の歯周病菌は10歳以降、特に悪影響の強い歯周病菌は18歳以降に住み着き始めます。感染経路は主に家族やパートナー(彼、彼女、配偶者等)といわれています。
歯垢の種類
歯垢は存在する位置によって、以下の2種類に分けられます。
歯茎を境目として、歯茎より上にある歯垢(縁上歯垢)、歯と歯茎の隙間にある歯垢(縁下歯垢)があります。
縁上歯垢
主に虫歯菌が生息し、唾液や口の中に入ってくる糖質(炭水化物や砂糖等)などを栄養源にしています。
縁下歯垢
主に歯周病菌が生息し、歯茎や歯茎から出る体液を栄養源にしています。
歯周病が進行して歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)が深くなると、歯ブラシの毛先が届かないため、縁下歯垢はさらにたまりやすくなります。
歯垢がつきやすい場所、人
歯ブラシが届きにくく、磨きにくい部分(以下参照)には歯垢がつきやすくなります。また唾液が少ない(ドライマウス)方は歯垢が洗い流されにくいため、歯垢がたまりやすいといわれています。
歯垢がたまりやすい場所
- 歯と歯の間
- 歯と歯茎の境目(歯の付け根)
- 奥歯の噛み合わせの面の溝
- 一番奥の歯の後ろの側面
- 歯並びが悪い部分
- 詰め物や被せ物と歯の境目
- 矯正装置の周り
- 入れ歯の金具がかかる歯
- 入れ歯本体
歯垢がたまりやすい人
- ドライマウス/口腔乾燥症(唾液が少ない)
- 口呼吸、習慣的に口がぽかんと開いている
- 歯並びが悪い
- 矯正治療中で矯正装置が付いている
- 手指が不自由で、歯磨きがうまくできない
- 高齢者や寝たきりの方、入れ歯を使っている方
放置するとどうなる?
健康への影響
歯垢や口の中のバイオフィルム(歯垢と同様の菌の塊)には約700種類を超える数億個以上の菌が含まれ、歯の表面だけでなく、歯茎や粘膜、入れ歯などにもつき、私たちの健康に多くの影響を及ぼすことが明らかになっています。
口の中の病気
虫歯や歯肉炎、歯周病(歯槽膿漏)、口臭、口内炎、口腔カンジダ症などの原因になります。
全身の病気や異常
糖尿病、動脈硬化、脳卒中、心臓病、早産・低体重児出産、関節リウマチ、誤嚥性肺炎、慢性腎臓病、肝臓病(非アルコール性脂肪性肝炎)など.
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歯磨きで取れなくなる
磨き残しの歯垢は2〜3日経つと徐々に硬くなり、歯石へと変化していきます。
硬くなった歯石は歯ブラシで取れず、ザラザラとした歯石の表面に歯垢がくっつき、歯肉炎や歯周病(歯槽膿漏)の悪化につながります。
歯垢がついてからの
経過時間 |
歯垢から歯石になる割合 |
---|---|
2日 | 約50% |
12日間 | 約60〜90% |
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歯垢を取り除くには
歯垢は柔らかく、歯ブラシや歯間ブラシ、フロス(糸ようじ)を使った歯磨きで取り除くことができます。
歯ブラシの毛先が届きにくい場所は丁寧に歯磨きを行い、虫歯や歯肉炎、歯周病の予防へつなげましょう。
(参考文献)
・「歯科衛生士マニュアル・実習書 現代予防的歯石除去法」村井正大先生ら