薬剤関連顎骨壊死とは?
骨粗鬆症のお薬と歯の治療について
薬剤関連顎骨壊死とは?
薬剤関連顎骨壊死とは、骨粗鬆症や骨転移のがんなどでお薬に関連して、骨の一部が壊死(組織が死んでしまう)してしまう病気です。
2003年にフロリダの口腔外科医Marxによって、お薬に関連した顎骨壊死が初めて報告されました。近年の超高齢社会に伴う骨粗鬆症やがん(骨転移しやすい種類)の患者数の増加により、薬剤関連顎骨壊死の報告件数も増加しています。
性別や発生部位の特徴
性別
この病気の発生する頻度は女性の方が男性より約1.5〜2倍高いといわれています。
発生しやすい場所
下顎に発症することが多く、上顎より約2倍起こりやすいと報告されています。
顎骨壊死と関連するお薬
骨粗鬆症の骨折予防やがんの骨転移、骨の病気(多発性骨髄腫)などに使われるお薬の一部が該当します。
☟下の表は、縦横に移動(スクロール)できます。
分類 | 商品名 | 成分 | 顎骨壊死の危険性 |
---|---|---|---|
ビスホスホネート |
|
アレンドロン酸 | ★★ |
ボンビバ(錠、静注) | イバンドロン酸ナトリウム水和物 | ★★ | |
|
ミノドロン酸水和物 | ★★ | |
|
リセドロン酸ナトリウム水和物 | ★★ | |
|
エチドロン酸二ナトリウム | ★ | |
|
ゾレドロン酸水和物 | ★★★★ | |
|
★★ | ||
|
パミドロン酸二ナトリウム | ★★★ | |
抗RANKLモノクローナル抗体 |
|
デノスマブ | ★★★★ |
|
★★ |
(参考資料)「薬剤関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023」
発生頻度(確率)
お抱えになっている病気の種類のほか、お薬の種類や使用期間、量などによっても異なりますが、日本やアメリカ、ヨーロッパなどの専門機関の報告をまとめると、次のような傾向があります。
- 注射薬の方が飲み薬より発症率が高い。0.8〜2%(注射薬)>0.001〜0.04%(飲み薬)
- がん患者の方が骨粗鬆症患者より発症率が高い。0.7〜1.9%(がん)>0.04%(骨粗鬆症)
- 使用期間が4年以上の方が4年未満より発症率が多い。0.2%(使用期間4年以上)>0.05%(使用期間4年未満)
顎骨壊死に影響を与えるもの
使用中の薬剤のほか、虫歯や歯周病の放置、合わない入れ歯の使用なども顎骨壊死をリスクを高めることがあります。
- ビスホスホネートおよびデノスマブ製剤の使用(特に高用量、累積投与量が多い場合)
- 免疫抑制剤や抗がん剤の使用
- 虫歯や歯周病、歯の根の病気(根尖性歯周炎)
- 口の中の汚れ
- 骨の出っ張り(骨隆起)
- 合わない入れ歯の使用
- 噛む力が強い
- 糖尿病がある
- 自己免疫疾患(免疫の異常の病気)
- 人工透析中
- 骨の病気(骨軟化症、骨パジェット病、ビタミンD欠乏など)
- 貧血
- 生活習慣(タバコ、お酒)、肥満
- 遺伝
まとめ
顎骨壊死は稀ですが、歯の状態や使用中のお薬の種類、持病、免疫力の低下などによってはリスクが高まることがあります。
該当するお薬を使用中の方や放置してしまった虫歯や歯周病がある場合は、注意が必要です。
当院は薬剤師兼歯科医師が在籍しており、骨粗鬆症のお薬を服用中の方の歯科治療や相談も承っております。
服用中のお薬と歯科治療で気になる点がございましたら、お気軽にご相談ください。
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