歯を削らない・神経を抜かない虫歯治療
MTAセメントとは?

歯を守る画像

MTAセメントは、なるべく歯を削らない・歯の神経を抜かないための虫歯治療のお薬で、近年国内外で高く評価されています。

MTAセメントは神経すれすれの深い虫歯から神経を保護したり、割れた歯の修復への効果が期待でき、歯の寿命を伸ばすのに役立ちます。

ここでは、MTAセメントの特徴や治療費用(料金)、メリット・デメリットなどについて、わかりやすく解説していきます。

MTAセメントとは

MTAセメントとは、歯の神経を保護する(なるべく神経を抜かない)お薬です。また小さな穴や亀裂(ひび)のある歯の修復に使われることもあります。

MTAという名前は、主成分である「Mineral Trioxide Aggregate(ミネラル三酸化物)」の頭文字に由来します。

効果

  • 高い密封性
  • 殺菌作用
  • 歯の再生促進作用

成分

MTAセメントは粉末と水から成り、粉末の主成分は「ミネラル三酸化物」で、約7割を占めます。

☟下の表は縦横にスクロール(移動)できます。

成分 割合
ミネラル三酸化物
  • ケイ酸三カルシウム
  • ケイ酸二カルシウム
  • アルミン酸三カルシウム など
約75%
その他
  • 酸化ビスマス
  • ジルコニア
  • タングステン酸カルシウム
  • 酸化タンタル      など
約20%
石膏 約5%

当院では、重金属成分をが含まず、歯の変色の起こりにくい種類のMTAセメントの取り扱いをしております。

メリット

  • 保険適用
  • 高い密封性
  • 殺菌作用
  • 歯の再生促進作用
  • 高い強度
  • 高い実績と評価

保険適用

歯の神経を保護するためにMTAセメントを使う場合、保険適用になります。高額な治療費用にはなりませんので、ご安心ください。

高い密封性

MTAセメントは高い密封性があり、細菌の侵入を防いでくれます。

殺菌作用

MTAセメントは水と反応すると、水酸化カルシウムをつくります。水酸化カルシウムはpH12と強アルカリ性で、虫歯菌を持続的に殺菌します。

歯の再生促進作用

MTAは水と反応後、カルシウムイオンを持続的に出し、歯の再生を促し、神経に近い部分の歯や小さな穴や亀裂(ひび)の空いた歯の再生・修復を促します。

高い強度

MTAセメントはしっかりとした強度があるため、神経を保護するお薬に適していることが知られています。

高い実績と評価

なるべく歯を削らない・歯の神経を抜かない虫歯治療のお薬には多くの種類がありますが、MTAセメントは多くの学者や専門家から高い実績と評価を得ているお薬です。

デメリット

  • すべての虫歯、歯痛に有効なわけではありません。
  • 歯の神経と近い虫歯治療の場合、1〜6ヶ月程度の定期健診が推奨されています。

治療方法

神経と近い、大きな虫歯のイラスト画像

  1. 虫歯を取り除き、洗浄・消毒後、MTAセメントを塗布します。
  2. 仮のフタをして、一定期間(数週間程度)経過観察をします。
  3. 最後に、詰め物や被せ物をして、密封します。

虫歯の除去とMTAセメントの塗布

深い虫歯を取り除き、MTAセメントを塗布した画像

一定期間の経過観察

大きな虫歯の穴に仮封した画像

詰め物や被せ物で密封

MTAセメントの上から詰め物をした画像

MTAセメントの失敗(無効)・成功を分ける虫歯の状況

MTAセメント治療の成功率

MTAセメントはすべての虫歯・歯痛に有効なわけではありません。歯の神経を抜かない(神経を保護する)ためには、虫歯の進行状況がカギとなります。

適応になる歯の状況

  • 神経まで細菌が侵入していない虫歯
  • 歯の神経に通じる穴が2mm未満
  • ケガや事故で欠けた・折れた歯で神経が汚染されていない場合

成功率はどのくらい?

MTAセメントで神経を残せる確率は、論文で以下のように報告されています。

*一般的に虫歯・欠けが小さいほど、神経を残しやすい傾向にあります。

原因 成功率
虫歯 約30〜80%
歯のケガ(外傷) 約90%

成功率を高めるには?

定期健診を勧める歯科医療従事者の画像

  • 虫歯を放置しない
  • 定期健診

虫歯が進行して大きくなると、虫歯菌が神経へ侵入し、神経が死んでしまうリスクが高まります。

成功率を高めるためには、定期健診を受け、虫歯を放置せずに早い段階で治療をすることが大切です。

治療費用(料金)

当院では、MTAセメントのお薬の費用(料金)は頂いておりません。

治療費用を説明する歯科スタッフのイラスト画像

MTAセメントの治療時の初診料(再診料)、検査費用等はかかりますが、保険適用の治療費用とほぼ同額に設定しているため、高額な治療費用にはなりませんので、ご安心ください。

また、詰め物や被せ物の種類(白いプラスチックや銀歯、セラミックスなど)はお選び頂けます。

*治療費用について、ご不明な点等ございましたら、お気軽にご相談ください。

MTAセメントの歴史

コンクリートの画像

MTAセメントは1993年に、Dr.Mahmoud Torabinejad(米国ロマリンダ大学教授)らにより開発されました。

MTAセメントはコンクリートやモルタル(建築用ポルトランドセメント)から着想を得て研究開発され、改変が重ねられました。

1998年ごろから欧米各国で治療開始され、現在に至るまで多くの高い治療実績と評価が報告されています。

日本国内では2007年に発売が始まり、特許が切れた現在では多くのメーカーから、改良された新しい製品が出されています。

まとめ

MTAセメントは歯の神経を保護・温存に役立つお薬です。

一方で、歯の神経を守るには虫歯を放置せず、定期健診やクリーニングを受けることが何より大切です。また虫歯予防には、フッ素塗布もおすすめです。

MTAセメントを含め、なるべく削らない・神経を抜かない治療について、ご不明な点等ございましたらお気軽にご相談ください。

(関連記事)

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(参考文献)

・「MTAの理化学的・生物学的特性と臨床」興地隆史先生ら   日歯内療誌 33(1):3〜13,2012

・「Mineral Trioxide Aggregate による象牙質-歯髄複合体再生の組織学的評価」中村裕子先生ら 日本歯科保存学雑誌 第59巻 第4号

・「Mineral trioxide aggregate(MTA)の物 理化学的特性と直接覆髄後の歯髄反応 吉羽 邦彦先生ら 新潟歯学会誌 39(2):2009

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