虫歯菌はうつる?
どの程度で?何歳までに感染?
虫歯菌は唾液を介して、親から子へうつることがほとんです。子供の歯を健康にするには、親の虫歯予防や治療も大切です。
ここでは「虫歯菌がうつるのはいつ?」、「虫歯菌はどの程度の接触で感染する?」、子供へ虫歯菌をうつさない対策などを、わかりやすく解説していきます。
目次
虫歯菌はどの程度で接触でうつる?
「おはしやスプーン、食器類の共有」や「キスなどのスキンシップ」、「噛み与え」など、親の唾液が子供の口の中に入る機会が多いほど、子供に虫歯菌がうつりやすくなります。
虫歯菌は何歳までにうつる?
虫歯菌がうつる時期として最も多いのは、1歳7ヶ月〜2歳7ヶ月ごろです。特に1歳半くらいに生える奥歯は、前歯と比べ、形が複雑で磨きにくいため、虫歯菌が定着しやすいといわれています。
最近の研究では、生後4ヶ月(離乳食開始前)の時点で、親から子供へ虫歯菌がうつることが確認されています。
*虫歯菌は歯や入れ歯に生息するため、歯のない赤ちゃんのうちは虫歯菌が定着しません。
1歳半から3歳にかけて虫歯リスクが急増
虫歯の子供の割合は時代とともに減少傾向にありますが、1歳半から3歳にかけて、虫歯有病率は約8〜10倍に急増します。
虫歯有病率 | 1人平均虫歯本数 | |||
---|---|---|---|---|
時期 | 1歳6ヶ月 | 3歳 | 1歳6ヶ月 | 3歳 |
2002年 | 約4% | 約32% | 約0.2本 | 約1.4本 |
2013年 | 約1.9% | 約18% | 約0.05本 | 約0.6本 |
(国立保健医療科学院のホームページより。1歳6ヶ月児歯科健診データと3歳児歯科健診データ)
年齢と割合
虫歯菌に感染している子供の割合は、2歳半で約6割と報告されています。また虫歯菌にうつるのは乳幼児期であることがほとんどで、成人になってからうつることはほとんどありません。
2歳まで虫歯ゼロが大事
特に2歳までに虫歯菌が多く定着すると、虫歯になりやすく、重症化しやすいとの報告もあります。
虫歯菌は誰からうつる?
虫歯菌は母親からうつることがほとんどで、育児など子供と接する機会の多いためといわれています。
また親の虫歯の有無や虫歯菌の数が、子供の虫歯の発生に影響を与えることが明らかになっています。
虫歯菌がうつりやすい状況
- 親の虫歯の数が多い
- 親の唾液が子供の口に入る機会が多い
- 砂糖(ショ糖、スクロース)
虫歯を予防するには?
親から子供へ虫歯菌がうつるのを防ぐ
虫歯菌の数を減らすために、出産前から虫歯の治療や予防、クリーニングを受けると、子供の虫歯予防につなげることができます。(「マイナス1歳からの虫歯予防」と呼ばれています。)
フッ素の利用
フッ素塗布やシーラント
フッ素塗布やシーラント(奥歯の噛み合わせの溝を埋める処置)は、約50%以上という虫歯予防効果の高い予防処置です。
歯磨き粉や洗口液(自宅可)
フッ素入り歯磨き粉やフッ素洗口は約30%の虫歯予防効果があり、ご家庭で手軽にできる虫歯予防法と知られています。
フッ素塗布やシーラントと併用することで、虫歯予防効果を高めるのも良いでしょう。
甘いお菓子を摂り過ぎない
砂糖を多く含む甘いお菓子やジュースを多く摂ると、虫歯菌の量や数が少なくても、虫歯菌が定着しやすくなります。
子供に甘い物を与える場合には、時間や量を決めるようにしましょう。
虫歯にならない甘味料
虫歯の原因になる主な甘味料が「砂糖」ですが、「甘い物」全てが虫歯の原因になるわけではありません。虫歯予防のために、虫歯の原因にならない甘味料を利用するのも良いでしょう。
親子間の食器の共有は?
以前は子供の虫歯予防のために、親子間の食器共有を避けることが勧められていました。しかし、2023年8月に日本口腔衛生学会から以下の発表をしています。
- 食器共有で子供への虫歯菌感染はあるものの、子供の虫歯との関連は認めない。
- 砂糖の摂取を控える|仕上げ磨き|フッ素の利用(歯磨き粉やフッ素塗布)することが、虫歯予防に大切である。
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まとめ
乳歯は虫歯の進行が速く、重症化すると永久歯に影響することがあります。子供の虫歯を予防するためには、食器の共有を避けることよりも、
- 必要以上に甘いもの(砂糖)を与え過ぎない
- フッ素配合の歯磨きの使用
- 定期健診、フッ素塗布
を家族全体で取り組むことが大切です。
お子様の虫歯の治療や予防でお困りな場合にはお気軽にご相談ください。
(関連記事)
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【母親に起こりうる病気】
(参考文献)
・「妊婦における齲蝕原性細菌数と喫煙および食事に関する実態調査」 進賀知加子先生ら 小児歯科学雑誌 45(5):584-592 2007
・「齲蝕原性菌および歯周病原性菌の母子間の伝達」金子昇先生ら 新潟歯学誌 35(1):2005
・「小児う蝕の病院とその予防法」大嶋 隆先生 関西女子短期大学紀要第25号(2015)
・「産婦および母親の口腔内状態子供に及ぼす影響について」山本誠二先生ら 小児歯科学雑誌 39(1):20-26 2001