潰瘍性大腸炎やクローン病と関連する?!
虫歯菌や歯周病菌
腸の炎症が虫歯や歯周病と関連することをご存知でしょうか。腸に炎症が起きる代表的な病気「潰瘍性大腸炎」や「クローン病」は虫歯菌や歯周病菌で悪化することが報告されています。
ここでは、腸の病気(特に炎症性腸疾患)と虫歯・歯周病について、わかりやすく解説します。
*当院は難病の患者さんの指定医療機関(横浜市)として、登録されています。
目次
炎症性腸疾患とは?
炎症性腸疾患(IBD)とは、腸に炎症が起きる病気の総称で、「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」を指します。腸の粘膜の炎症を繰り返し、下痢や腹痛、血便などの症状が現れます。また「クローン病」では口や関節、眼、皮膚に症状をきたすこともあります。
炎症性腸疾患は厚生労働省の定める「難病」のうち、最も患者数の多いことが特徴です。
虫歯や歯周病との関連
- 虫歯菌に感染すると、潰瘍性大腸炎になるリスクが約4.5倍になることが報告されています(横浜市立大学、大阪大学、浜松医科大学などの研究チームによる)。
- 歯周病が進行すると、炎症性腸疾患が悪化するというデータの報告もあります(米国ミシガン大学の研究チームがCellにて発表)。
また「潰瘍性大腸炎」や「クローン病」は炎症を抑えるためにステロイド剤や免疫抑制剤を一定期間使用することがあり、虫歯や歯周病のリスクが高まる傾向にあります。
(参考文献)
・ University of MIchigan_Could the Cure for IBD Be Inside Your Mouth?
・ Cell_The Intermucosal Connection between the Mouth and Gut in Commensal Pathobiont-Driven Colitis
口腔カンジダ症、口内炎、治癒遅延、顎骨壊死など
ステロイド剤や免疫抑制剤を長期間使用すると免疫力が低下するため、
- 口腔カンジダ症(口の中のカビ)の発症
- 口内炎ができやすい
- 抜歯後やインプラント手術後の傷が治りにくい
などを生じることがあります。
また長期間のステロイド剤を使用する場合、骨折のリスクを減らすために骨粗鬆症のお薬を併用することがあります。骨粗鬆症のお薬を使用している際は、抜歯後やインプラント手術後に口の中が汚れていたり、合わない入れ歯を無理に装着し続けると、「顎骨壊死」につながることがあります。
潰瘍性大腸炎とは?
症状
大腸の粘膜のみに炎症が起きる病気で、発症すると下痢や腹痛、血便などの症状が現れます。重症化すると、発熱や貧血、体重減少をきたすこともあります。
また発症後7〜8年以上経過すると、大腸がんを併発するケースもあります。
発症率・患者数
潰瘍性大腸炎の発症率は10万人に100人程度で、国内患者数は約22万人と推測されています。
年齢・男女差
患者層は10代の若い世代から高齢者まで幅広く、男女差はありません。
クローン病とは?
症状
口から肛門までの全ての消化管に炎症が起きうる病気で、口内炎や下痢、腹痛、血便、発熱、倦怠感、体重減少、肛門の痔ろう、眼の炎症、関節炎など様々な症状をきたします。
発症率・患者数
クローン病の発症率は10万人に27人程度で、国内患者数は約5万人と推測されています。
年齢・男女差
10〜20歳代が多く、男性の方が女性より2倍かかりやすいといわれています。
まとめ
虫歯や歯周病になると、「潰瘍性大腸炎」や「クローン病」の病状が悪化することがあります。またステロイド剤や免疫抑制剤を使用している場合は、口腔カンジダ症や口内炎、抜歯後の傷の治癒遅延などが起きることもあります。
腸の炎症の悪化や口の中の問題を防ぐには、定期的な歯科健診や歯のクリーニングが大切です。
当院では近隣の地域中核病院と連携、大学病院出身の歯科医師の在籍、管理栄養士による栄養指導を行っております。
「潰瘍性大腸炎」や「クローン病」の方の歯科治療・ご相談も承っておりますので、お気軽にご相談ください。