高血圧と歯の関係は?
「高血圧と歯に何の関係があるの?」と疑問を感じる方も多いのではないでしょうか?国内の患者数は約4,300万人(約3人に1人)と多くの人が該当する高血圧。
一部の高血圧の治療薬は、口の乾きや歯茎の腫れにつながることがあり、
高血圧のお薬を服用中の方は歯垢がたまりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まる傾向があります。
また血圧が高い場合は、歯の治療で使う薬剤に配慮することもあります。
ここでは、高血圧症と歯科治療の関係について、わかりやすく解説致します。
目次
高血圧について
日本高血圧学会のガイドラインによると、高血圧の診断基準は以下の通りです。
*高血圧は140/90mmHg以上とされ、さらにI〜III度の3段階に分けられています。
分類 | 診療室血圧 | 家庭血圧 | ||
---|---|---|---|---|
収縮期 | 拡張期 | 収縮期 | 拡張期 | |
正常血圧 | <120 かつ <80 | <115 かつ <75 | ||
正常高値血圧 | 120〜129 かつ <80 | 115〜124 かつ <75 | ||
高値血圧 | 130〜139 かつ/または 80〜89 | 125〜134 かつ/または 75〜84 | ||
I度高血圧 | 140〜159 かつ/または 90〜99 | 135〜144 かつ/または 85〜89 | ||
II度高血圧 | 160〜179 かつ/または 100〜109 | 145〜159 かつ/または 90〜99 | ||
III度高血圧 | ≥180 かつ/または ≥110 | ≥160 かつ/または ≥100 | ||
(孤立性) 収縮期高血圧 |
≥140 かつ/または <90 | ≥130 かつ/または <85 |
高血圧と歯茎、口の乾燥
高血圧の薬の副作用で歯茎が腫れる
「薬物性歯肉増殖症」
高血圧の薬(降圧剤)の種類の一つ「カルシウム拮抗薬」は副作用として、歯茎の腫れ(歯肉増殖症)が知られ、発症率は約20%と報告されています。
*歯肉増殖症を引き起こす他のお薬には、抗てんかん薬(フェニトイン)や免疫抑制剤(シクロスポリン)が挙げられます。
歯肉増殖症で歯茎が腫れると歯磨きがしにくく、歯周病が悪化しやすく、口臭や虫歯を併発することもあります。
高血圧の薬の副作用で口が乾く
「薬剤性口腔乾燥症」(口渇)
高血圧の薬のうち、「カルシウム拮抗薬」や「利尿薬」は副作用で口が乾く(薬物性口腔乾燥症)ことがあります。
副作用で「口が乾く」薬は700種類以上で、薬剤性口腔乾燥症の約62%(*)は高血圧のお薬と報告されています。
*「口が乾く」副作用のある他のお薬には、睡眠薬や消化器系、高脂血症、アレルギー系のお薬、風邪薬などが挙げられます。
唾液が減って口が乾くと、口の中の細菌が繁殖しやすく、虫歯や歯周病、口臭などを発症しやすくなります。また唾液で粘膜を保護しにくくなるため、口内炎や舌の痛みを感じることがあります。
高血圧と歯周病の関係は?
高血圧症だと歯周病リスクが高い
高血圧(160mmHg以上)の方は健常者より、歯周病の割合が1.5倍多いと報告されています。
歯周病だと高血圧リスクが高い
歯周病が重症化すると、高血圧のリスクが2倍に増加すると報告されています(*)。
高血圧の口腔ケアは?
歯茎の腫れがある場合
歯肉の腫れ(増殖)がある場合は、歯と歯茎の隙間がうまく磨けません。ただし、定期的な歯科健診やクリーニングを活用することで、かなり改善できることが多いです。
口が乾く場合
唾液は口の中の汚れを洗い流し、細菌の繁殖を抑える働きがあります。口が乾くときは十分な水分摂取やこまめのうがい、唾液腺マッサージなどが大切です。
高血圧症の歯科治療の注意点
血圧上昇と出血
歯科治療で使う一般的な麻酔薬には血管収縮剤が含まれ、血圧が一時的に上昇します。また歯科治療への強い緊張や不安、恐怖などで、血圧が上昇する(白衣高血圧)こともあります。
血圧が上昇すると歯科治療の際に、出血しやすくなるため、以下の対応を行うことがあります。
- 血管収縮剤を含まない麻酔薬を使用する
- 負担の少ない治療から進める
- 強い緊張や不安を取り除き、リラックスできる笑気麻酔を使用する
*高血圧症の際は、普段の血圧や内服薬の状況を担当医にお伝えください。
まとめ
高血圧は自覚症状がないものの、動脈硬化や高脂血症との関連が深く、脳卒中や心臓病の引き金にもなります。
また服用薬の副作用で、虫歯や歯周病、口臭などのリスクが増加するため、高血圧の方は特に定期健診や歯のクリーニングが重要です。
当院では大学病院出身の歯科医師や管理栄養士も在籍しております。安心・安全に歯科治療を受けていただくために、服用薬や普段の血圧は担当医にお知らせください。
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(出典)
・「高血圧治療ガイドライン2019」