口臭の原因とは
臭い玉や口の中の菌?胃や食べ物との関連は?
歯を磨いているのに口が「ドブ臭い」、「うんちの臭い」など、口臭の原因についてのお悩みの方は少なくありません。
口臭の原因はお口の病気や臭い玉(膿栓)、内臓、食べ物に関連するものまで多岐にわたります。
ここでは、口臭の原因について、まとめて解説していきます。
目次
口の中の病気・問題
口臭の原因の約90%以上は口の中の病気・問題であることが、数多くの論文で明らかにされています。
特に、歯周病や舌苔から発生するガス(硫化水素やメチルメルカプタン)は悪臭性が強く、口臭に大きな影響を与えます。
歯周病
歯周病は口臭の主な原因の一つです。
歯周病の原因である歯垢がたまり、歯と歯茎の隙間に生息する歯周病菌が増殖すると、くさいガスが発生します。
舌苔
舌苔は口臭の主な原因・発生源となることが明らかになっています。
舌苔とは、舌にこびりついた白い・黄色いっぽい苔で、口の中の細菌の死骸や剥がれた粘膜の垢、血液、食べかすなどから成り、強い悪臭を放ちます。
また全身の疲労やドライマウス(口が乾く)、口呼吸などによっても、舌苔の量は増加します。
臭い玉(膿栓)
臭い玉(膿栓)とは、口の奥にある扁桃にたまった白い膿のかたまりで、口臭の原因になることがあります。
ただし、臭い玉は全体の約3〜4割(*)の人にあるといわれ、臭い玉のある人が必ずしも強い口臭を放つわけではないことが明らかになっています。
ドライマウス(口が乾く)
唾液は口の中を洗い流し、細菌の繁殖を抑える働きがあります。「唾液が少ない」あるいは「口呼吸」で口が乾くと、口の中の細菌が増殖して、口臭が強くなります。
子供の口臭は「口呼吸」が原因のことも多く、成人や高齢者の口臭の原因は「唾液が少ない(唾液分泌量の減少)」ことも珍しくありません。
口の粘膜の病気
口の粘膜の病気の場合、粘膜に膿がたまったり、痛くて歯磨きができずに舌苔や歯周病が悪化して、悪臭を放つことがあります。
また口腔がんの場合には、壊死した組織から腐敗臭が出ることがあります。
粘膜の病気とは
- 口内炎
- 口腔がん
- 感染症(急性壊死性潰瘍性歯肉炎)
- 免疫の異常(天疱瘡)
などが挙げられます。
入れ歯
入れ歯は汚れや細菌が住みつきやすい性質があります。
正しい洗浄ができていないと、入れ歯に細菌が繁殖し、悪臭を放つことがあります。
虫歯
虫歯の穴に食べかすや汚れがたまったり、虫歯が進行して歯の中が腐ると腐敗臭が発生します。
古い詰め物や被せ物
古くて劣化している詰め物や被せ物の場合、隙間から食べかすや虫歯菌が侵入し、口臭につながることがあります。特に白いプラスチックの詰め物の場合、金属やセラミックと比べて劣化しやすく、汚れがつきやすい特徴があります。
詰め物や被せ物に関しては、定期健診で確認してもらうと良いでしょう。
口腔カンジダ症
口の中にカビが異常に繁殖する病気で、口臭との関連が報告されています。口の乾きや免疫力の低下、服用中のお薬の影響、ストレスや疲労、持病(糖尿病やエイズ、がん)などをきっかけに発症します。
生活習慣
タバコや食べ物、口呼吸などの生活習慣や癖なども口臭に影響を与えます。特にタバコの煙に含まれる成分(ニコチンや一酸化炭素)は、歯周病の悪化や口の乾燥を引き起こすため、口臭が強くなります。
女性ホルモンの変化
女性ホルモンが変化(月経、妊娠、閉経など)するときには、口臭が強くなることがあります。
女性ホルモンの変化で唾液が減ったり、歯周病菌の増殖につながることなどが口臭悪化の原因と考えられています。
加齢による変化
大人になると唾液の量が減ったり、免疫力が低下し、口の中も細菌が繁殖しやすい環境になります。
口臭に関連するお薬
活性型ビタミン剤
独特なビタミン臭が息から排出されます。
活性型ビタミン剤は骨粗鬆症や慢性腎不全、副甲状腺の機能異常などの場合に、処方されることがあります。
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全身の病気
全身の病気は口臭の一因になることがあり、原因によってにおいも異なります。
☟下の表は、縦横に移動(スクロール)できます。
病気 | どんなにおい? |
---|---|
糖尿病 | アセトン臭と呼ばれる甘酸っぱいにおい |
腎臓病(尿毒症) | アンモニアのツンとした鼻をつくようなにおい |
肝臓の病気(肝硬変、肝がん) | アミン臭と呼ばれる甘くカビ臭いにおい |
鼻やのどの病気(鼻炎、副鼻腔炎、扁桃腺炎)
呼吸系の病気(肺炎、気管支炎、肺がん) |
腐った肉のようなにおい |
トリメチルアミン尿症(魚臭症候群) | 魚の腐敗臭 |
胃腸の病気(胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍) | 腐った卵のようなにおい |
(関連記事)
鼻や喉の病気
☟下の表は、縦横に移動(スクロール)できます。
病気 | 特徴 |
---|---|
鼻炎 | 鼻の通り道が狭いために呼吸しにくく、口呼吸になりやすいです。 |
扁桃(アデノイド)の肥大 | |
副鼻腔炎(蓄膿症) | 副鼻腔で炎症が起き、膿がたまります。 |
咽頭炎(のどの炎症) | 菌やウイルスがのどに感染し、炎症を起こして膿がたまります。 |
鼻やのどなどのがん | がんで組織が腐ると、腐敗臭を発します。 |
「口の中の病気」と「全身の病気」からくる口臭の違い
「口の中の病気」からくる口臭成分はわずかでもくさい(嗅覚閾値が低い)のが特徴です。
一方で、「全身の病気」が原因の口臭成分はたくさんの量がないと、人間の鼻では検知しにくい(嗅覚閾値がとても高い)ことがわかっています。
そのため、口臭の原因の大半は「口の中の病気」といわれています。
まとめ
口臭の原因は歯周病や舌苔、虫歯、女性ホルモン、口の乾きなど多岐にわたります。また口臭は妊娠や服用中のお薬、持病、疲労などによっても変化します。
口臭の対策・治療の近道は、口臭の原因を調べることです。口臭についてお悩みの方は、何でもお気軽にご相談ください。
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(参考文献)
*:「慢性口蓋扁桃炎の病態に関する臨床的研究」耳鼻咽喉科臨床/60巻7号P555-574