「口が乾く」(ドライマウス)の治療と対策
「口が乾く」症状が続くと、口の中の不快感、口臭、食べる・飲み込む機能にも影響を与え、日常生活に支障をきたすこともあります。
ここでは、口の乾きの対策として、治療薬や保湿剤、唾液腺マッサージ、生活習慣について、わかりやすくご紹介致します。
目次
治療薬
口の乾きを改善するために、必要な場合に提案致します。薬の服用と併せて、生活習慣の改善や水分摂取量の見直しなどに取り組むことが大切です。
- 唾液分泌促進薬
- 漢方薬
唾液分泌促進薬(口腔乾燥症状改善薬)
唾液の量を増やすお薬で、成分の違いから大きく2つに分けられます。
成分 | お薬の名前 | 適用 |
---|---|---|
セビメリン塩酸塩 | サリグレン |
|
エポザック | ||
ピロカルピン塩酸塩 | サラジェン |
|
サリグレン、エポザック
日本で2001年に発売された治療薬で、「サラジェン」に比べて効果の持続時間が長いことが特徴です。
効果
内容 | 報告結果 |
---|---|
自覚症状の平均改善率 | 57% |
唾液量の平均増加率 | 138.2% |
唾液の平均増加量 | 4.5mL/10分 |
サラジェン
日本で2005年に承認された治療薬で、「サリグレン」や「エポザック」に比べて効果が出るのが早い一方で、効果の持続時間が短いことが特徴です。
内容 | 報告結果 |
---|---|
口の乾きの平均改善率 | 53% |
安静時の唾液の平均増加率 | 200.3% |
刺激時の唾液の増加量 | 1.6倍 |
服用方法の調整
「サリグレン」や「エポザック」、「サラジェン」は副作用として、「汗をかきやすい(多汗)」や「頻尿」などの症状が出ることがあります。副作用の軽減のため、症状に応じて段階的に服用量を増やす方法(ステップアップ法)、錠剤やカプセルを水で溶かしうがいする方法(リンス法)などを活用することもあります。
漢方薬
口の乾きや舌の状態、体質などに応じて、最適な漢方薬を検討します。
漢方薬の特徴
漢方薬は、いろいろな原因の「口の乾き(ドライマウス)」の治療に使われます。例えば、自律神経の不調や他のお薬の副作用、全身の病気(糖尿病や甲状腺疾患)、シェーグレン症候群、放射線治療によるドライマウスなどに対し、幅広い症例に適応されます。
白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)
比較的体力があり、熱っぽく(ほてり)、乾燥が目立つドライマスの方に適しています。保険適用となります。
五苓散(ごれいさん)
口渇があり、水分の代謝が良くない(発汗、尿の出が悪いなど)ときなどに適し、体内の水分を調整する働きがあります。保険適用となります。
麦門冬湯(ばくもんどうとう)
喉の乾燥感、顔面紅潮、空咳などの症状があるドライマウスの方に適しています。
滋陰降火湯(じいんこうかとう)
皮膚の乾燥があり、乾いた咳を伴うドライマウスの方に適しています。
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
疲れやすく、冷えやしびれ、かゆみ、むくみなどの症状があるドライマウスの方に適しています。
八味地黄丸(はちみじおうがん)
疲労や倦怠感が強く、むくみや足腰の冷え、糖尿病、排尿障害などがあるドライマウスの方に適しています。
六味丸(ろくみがん)
疲れやすく、皮膚の乾燥や手足のほてりなどを伴うドライマウスの方に適しています。
十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)
病気や手術などで体力が低下しているドライマウスの方に適しています。
柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
精神的な緊張や更年期などで発汗がある方に適しています。
「漢方薬」と「唾液分泌促進薬」の違い
☞下の表は、縦横に移動(スクロール)できます。
薬の種類 | 長所(メリット) | 短所(デメリット) |
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漢方薬 |
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唾液分泌促進薬
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人工唾液
口の乾きを防ぐために開発されたスプレータイプのお薬です。日本では「サリベート®エアゾール」という医薬品で、次の方に適用されています。
- シェーグレン症候群に伴うドライマウスの方
- 頭頸部がんへの放射線治療に伴うドライマウスの方
有効成分
人間の唾液の無機成分に似た成分が配合されています。
- 塩化ナトリウム
- 塩化カリウム
- 塩化カルシウム水和物
- 塩化マグネシウム
- リン酸二カリウム
口の保湿剤
口の乾きを防ぐ保湿効果のある製品をご紹介致します。口の保湿剤には、ジェルやスプレー、洗口液(マウスウォッシュ)などの種類があります。
☞下の表は、縦横に移動(スクロール)できます。
種類 | 長所(メリット) | 短所(デメリット) |
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ジェルタイプ |
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スプレータイプ |
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洗口液タイプ |
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口の乾きを防ぐ対策
口の乾きを防ぐためには治療薬や保湿剤と併せて、以下の対策を日常生活に組み込むのがおすすめです。
水分摂取
「喉が渇かない」、「生活が忙しい」、「気づいたら、あまり水分を摂っていない」場合には、1日に必要な水分が摂れていない可能性があります。
*1日に飲むべき水分量は、約1〜2Lといわれています(個人の体重によって異なります)。
よく噛む、しゃべる
唾液を出すためには、顎を動かして唾液腺(唾液をつくる組織)を刺激するのがおすすめです。
唾液腺マッサージ
唾液腺を優しく手でなでるようにマッサージをすることで、唾液の分泌を促します。
キシリトールガム
よく噛み、顎をたくさん動かすことで、唾液の分泌を促します。ガムは移動時間や昼休みなど空いた時間で手軽に利用することができるため、多忙な方にもおすすめです。
またキシリトールは虫歯の原因にならない糖分ですので、安心して使うことができます。
適度な休養
過度なストレスや疲労、不安や緊張が続くと、自律神経の不調により、唾液が十分に分泌できなくなります。心身のバランスを保つために、適度な休養をとることが大切です。
口呼吸
口呼吸が続くと口の中の水分が失われ、口が乾いてしまいます。「気づくとお口がぽかんと開いている」、「唇がうまく閉じられない」場合には口呼吸をしている可能性があり、歯並びなどが影響していることもあります。
(口呼吸かも?と思ったら下記ページを参照ください)
食習慣の改善
アルコールやカフェインの取り過ぎに注意
アルコールやカフェインには利尿作用があるため、お酒やコーヒーなどを取り過ぎると体内の水分が尿から排出され、口が乾きやすくなります。
やわらかい食事、食事制限に注意
やわらかい食事や食事制限が続くと、あまり噛まなくなり、唾液が十分に分泌されなくなります。
食事に工夫を加えることで、よく噛む食事に変えることもできます。
「噛めない」場合は治療を
「歯がボロボロ」、「歯がぐらぐらする」場合には十分に噛めず、やわらかい食事に偏っていることも多いです。
噛まない・噛めない状態が続くと、唾液がうまく出なくなり、口の中の細菌が増殖してさらに歯が悪くなることもあります。噛めない場合には早めのご相談がおすすめです。
歯がグラグラする
「歯がグラグラする」とよく噛めないので、やわらかい食事が多くなったり、別の歯で噛むことが増えていきます。
「歯がグラグラする」原因の多くは歯周病です。
歯周病は自覚症状がないまま進行するため、気づかないうちに「歯がグラグラする」ことがほとんどです。歯周病では歯ブラシでは届かない歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)に生息する細菌を取り除く治療が必要です。
歯周病かも…と感じたら、早めの治療が大切です。
入れ歯が合わない
入れ歯が合わないとよく噛めないため、やはりやわらかめの食事を好んだり、硬いものを避けるようになります。噛む回数が少なくなると唾液が十分に分泌されなくなり、口が乾いてしまいます。
唾液は入れ歯を安定させたり、入れ歯と粘膜がこすれるのを防ぐ役割があります。入れ歯をはめると痛い場合には、入れ歯が合わない他、口の乾きが原因のこともあります。
入れ歯でお困りな場合には調整や修理(場合によっては作り変え)で、使いやすくなることもありますので、お気軽にご相談ください。
まとめ
口の乾きを治す・防ぐには「治療薬」や「保湿剤」に併せて、水分摂取や生活習慣の改善などに取り組むのが近道です。
また口の乾きが虫歯や歯周病、口臭、味覚障害、舌痛症などを引き起こす前に早めに対策していくと病気の予防につなげられます。
口の乾きの治し方などでご不明な点等ございましたら、お気軽にご相談ください。
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