顎関節症と歯並び、噛み合わせ
現在、顎関節症は多くの原因が積み重なった結果、発症すると考えられています。
以前は、歯並びや噛み合わせが顎関節症の原因の一つと考えられていたため、矯正治療や噛み合わせの治療が行われていました。
しかし、顎関節症を治す目的での歯並びや噛み合わせの治療は科学的根拠が十分ではないとされています。
また以下の点から、最初から積極的に歯並びや噛み合わせの治療を行うことは避けることが一般的な方針となっています(日本顎関節症学会や米国歯科研究学会など専門機関が提唱)。
- 噛み合わせのみの原因で顎関節症を発症することは少ない。
- 顎関節症を治す目的で矯正治療や噛み合わせ治療は科学的根拠が乏しく、推奨されていない。
- 噛み合わせ治療をしなくても治ることがある。
- 噛み合わせや歯並びを変えてしまうと、元に戻せない。元に戻せない治療は優先しない。
歴史の始まり
1934年に、米国ワシントン大学医学部耳鼻科医Costenによって、顎関節部の圧痛、頭痛、耳鳴り、耳閉感、耳痛などの耳症状や副鼻腔症状、咽頭、舌、鼻側部の灼熱感などの症状と“噛み合わせ”との関連を報告したことから始まります。
近年
1990年代以前は“噛み合わせ”に関連した論文もありましたが、90年以降は“噛み合わせ”の調整や治療に関する論文がほとんど発表されなくなり、その効果は疑問視されるようになりました。
2010年以降は、日本顎関節症学会のガイドライン等や他の専門機関でも、顎関節症の治療で最初から“元に戻せない治療(歯、つめものやかぶせものなどを削るなど)”を行うのは避けるべきという方針が出されました。
まとめ
顎関節症は、様々な原因が積み重なって発症します。歯並びや噛み合わせが気になる場合は担当医で十分に相談しながら、進めるのが良いでしょう。
(関連記事)
(参考文献)
・「補綴歯科治療における顎関節症治療法の歴史的変遷」矢谷博文 日補綴会誌 Ann Jpn Prosthodont Soc 4:229-245,2012
・「顎関節症と咬合の関係に関するup-to-dateな見解」矢谷博文 日顎誌2018年
・「矯正歯科治療と顎関節症について―病態に応じた体系的アプローチ―」谷本幸太郎 日顎誌2021年