マタニティ(妊婦)歯科について
妊娠中はお口のトラブルが起きやすい?!
妊娠中はつわりや女性ホルモンの影響、食習慣、唾液の量や質の変化などで口の中の細菌が繁殖し、虫歯や歯周病、口臭などが生じやすくなります。実際、妊婦の約66〜98%は歯周病にかかっているという報告があります。
歯周病は早産・低体重児出産につながるため、妊娠前・妊娠中期の定期健診や治療が大切です。
妊娠中に起こりやすい口の症状
- 歯茎が腫れる|出血する|痛い。
- 口の中がネバネバする。
- 冷たいものやあまいものがしみる。
- 口臭がある。
- 歯垢や歯石がつきやすい。
つわり・体調不良と虫歯、歯周病
妊娠中はつわりや体調不良で、歯ブラシを口に入れることが難しく、歯磨きが十分にできないことがあります。歯磨きがうまくできないと、口の中の細菌が繁殖し、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
女性ホルモンと歯周病菌
一部の歯周病菌は、女性ホルモンをエサとして増殖します。
通常の排卵と生理の周期はもちろん、特に妊娠終期には女性ホルモンが10〜30倍になるため、歯茎の炎症が非常に起きやすくなります。
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唾液の変化と細菌繁殖
妊娠中は唾液の量や質の変化に伴い、唾液の働きが低下します。
まず唾液の量が少なくなると、口の中を洗い流しにくく、細菌が繁殖しやすくなります。またつわりによる嘔吐(胃酸の逆流)や唾液の質の変化で口の中が酸性になると、虫歯も進行しやすくなります。
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食生活の変化と口の中の汚れ
妊娠初期のつわり|妊娠後期に子宮で胃が圧迫される時期は1回の食事量が減り、食事回数(間食を含む)が増え、虫歯になりやすくなります。
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妊娠中の歯科治療
妊娠中期が安定
妊娠5ヶ月くらい(16週以降)になると、つわりも落ち着き、流産の危険も減るため、治療を受けやすくなります。また妊娠初期や後期など他の時期でも多くの治療は受けることができます。
*受診の際は、担当医に妊娠中であることをお伝えください。また治療児はできるだけ楽な姿勢をとって頂き、仰向けの姿勢がつらい場合などは遠慮なく、お申し出ください。
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レントゲンは大丈夫?!
歯科のレントゲンの放射線量はごくわずかで、また腹部から離れているため、ほとんど影響はないと報告されています。また体には防護エプロンを着用して撮影します。
麻酔は大丈夫?!
歯の局所麻酔は量が少なく、帝王切開でも使用されることのある成分(リドカイン)であり、胎児への影響はほぼないことが報告されています。
*レントゲンや麻酔の有無はご希望に沿って相談できますので、ご安心ください。
(詳細記事)
虫歯や歯周病の対策は?
予防
妊娠期間中は虫歯になりやすかったり、歯茎の腫れ・出血が起きやすくなります。
虫歯や歯周病を予防するには日頃の歯磨きのほか、定期的な健診や歯のクリーニングがとても大切です。
つわりがひどいとき
つわりがひどく、すぐに歯磨きができないときにはお水でゆすいだり(ブクブクうがい)、キシリトールガムを噛んで唾液を出して口の中を洗いましょう。
また気分が落ち着いたら、小さめの歯ブラシで磨くとえずきにくくなります。
食習慣
妊娠期間中は間食の回数が増えたり、食べ物の好みが変化して酸っぱい/甘い/塩辛いものを摂る機会が増える事があります。だらだらと食べると虫歯になりやすくなるため、注意しましょう。
治療
歯や歯茎の腫れを放置すると、感染や痛みによる血圧の変動などお腹の赤ちゃんへ与えることがあります。特に歯周病は早産・低体重児出産との関連が明らかになっています。
また、もし虫歯や歯周病治療が必要な時は、負担の少ない治療から始めたり、応急処置だけをして時期をずらすことも可能です。
その他、相談のみのお問い合わせ・診察も承っておりますので、お気軽にご相談ください。
赤ちゃんの歯の発育や栄養
赤ちゃんの乳歯は生後6〜8ヶ月くらいに生えてきますが、「歯の種(歯胚:しはい)」は妊娠7〜10週から作られ始めます。また妊娠4〜6ヶ月になると、「歯の種」にカルシウムやリンがくっつき、硬くなっていきます。
さらに、一部の永久歯の「歯の種」も妊娠4〜6ヶ月ごろから作られ始めます。
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歯に必要な栄養素
歯や歯茎、骨を作る栄養素はカルシウムのほか、タンパク質、リン、ビタミンA・B群・C・Eなど様々です。赤ちゃんの歯を丈夫にするためには、バランスの良く栄養を摂ることがおすすめです。
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(参考文献)
•「妊婦の歯周病と早産との関連についての文献検討 」川崎医療福祉学会誌