妊娠中の麻酔、レントゲン、お薬
胎児への影響は?!
妊娠中に歯茎が腫れた|歯が痛いなど、歯の治療が必要になることも少なくありません。
お薬やレントゲンはお腹の中の赤ちゃん(胎児)への影響を考えると、妊婦さんにとっては不安になる問題です。
実は、お腹の赤ちゃんへの影響は妊娠の時期(期間)、お薬(麻酔薬、飲み薬)やレントゲンの種類/回数(量)によって異なります。
ここでは、安定期やお薬・レントゲンの胎児への影響など妊娠中のお役立ち情報をご紹介致します。
目次
歯医者さんに行ってもいい?!
妊娠中の時期
影響が少ない時期はいつごろ?安定期は?
妊娠16週(5ヶ月)以降
妊娠16週(5ヶ月)ごろになると、流産の危険が減り、つわりも落ち着いてくることが多いため、「安定期」と呼ばれています(医学用語ではないため、いつからいつまでという明確な定義はございません)。
この時期では胎児のほとんどの器官はつくり終わっているため、胎児の奇形の心配はほぼありません。
ただし、羊水が減る/血管が収縮するなどの影響のある一部のお薬(以下「飲み薬」参照)は控えた方が良いでしょう。
妊娠中に麻酔は使えるの?!
歯科治療で使われる局所麻酔薬は主にリドカインという成分で、使用量は少量であることもあり、胎児への影響はほとんどないことが報告されています。
*歯科治療で使われる麻酔薬の成分(リドカイン)は無痛分娩時にも使われています。
*局所麻酔は妊娠16週以降(5ヶ月)が望ましいですが、歯の痛みが強く、緊急性も高い場合は麻酔をして歯科治療を受ける利益の方が大きいと報告されています。
*麻酔の有無はご相談可能ですので、ご安心ください。
妊娠中のレントゲン、CTは?
影響が少ない時期はいつごろ?
いずれの妊娠期でも、放射線量が50mGy未満の場合、胎児への影響は無視できる範囲と考えられています(日本産婦人科学会やアメリカ産科婦人科学会の定める基準)。
歯科用レントゲンやCTの放射線量は0.01〜0.1mSvであるため、50mGy(≒Sv)未満は歯科用レントゲン(0.01mSv/回)で5000回、歯科用CT(0.1mSv/回)で500回未満の撮影回数に相当し、通常では超えることがない量の基準となっています。
時期と奇形発生率
時期 | 奇形発生率 |
---|---|
受精後10日まで | リスクは増加しない。 |
受精後11日〜妊娠10週 | 50mGy未満(歯科レントゲン5000回未満)の場合、奇形発生率は上昇しない。 |
妊娠9〜26週 | 100mGy未満(歯科レントゲン10000回未満)では影響しない。 |
レントゲンとCTの被曝放射線量
種類 | 1回の平均的な放射線量 |
---|---|
歯科用レントゲン(口内法撮影、パノラマ撮影) | 0.01〜0.03mGy以下 |
歯科用CT | 0.1mGy以下 |
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妊娠中に飲み薬は?!
基本的に妊娠期間中は飲み薬を服用しない方が良いとされ、特に妊娠初期(16週未満)は避けた方が良いでしょう。
ただし、薬を飲まないことで、かえって妊婦や胎児に悪影響がある場合は、必要最小限の量で影響の少ない種類のお薬が選ばれます。
使用を避けた方がよいお薬の種類
歯科治療で処方されるお薬は主に痛み止め(鎮痛剤)と抗生物質(抗菌薬)ですが、妊婦さんに影響の少ない種類のお薬と避けた方がよいお薬を紹介していきます。
痛み止めの一部の種類
ロキソニン、ボルタレン、インダシン
妊娠末期(28週=8ヶ月以降)では痛み止めのうち、非ステロイド系抗炎症薬という種類は避けましょう。
妊娠中に使用できる痛み止めとしてはカロナールが代表的です。
抗生剤(抗菌薬)の一部の種類
クラビット(ニューキノロン系)やミノマイシン(テトラサイクリン系)
ニューキノロン系やテトラサイクリン系という種類のお薬は避けた方が良いでしょう。
一方で、ペニシリン系やセフェム系、マクロライド系は「安全と考えられる抗菌薬」とされています。
うがい薬
ヨウ素系うがい薬
ヨウ素系のうがい薬とは、成分にポビドンヨードを含む種類です。
数日などの短期間の使用は問題ありませんが、長期間の使用では胎児の甲状腺への影響(甲状腺機能異常、甲状腺腫)が報告されています。
新型コロナウイルス感染症予防対策として、ヨウ素系うがい薬の長期的、頻繁なうがいは避けた方が良いとされています(日本甲状腺学会、日本内分泌学会などによる)。
まとめ
妊娠中でもほとんどの場合は歯科治療が可能です。ただ、妊娠中に虫歯や歯周病が重症化しないように、定期的な健診や歯のクリーニングで予防することが大切です。
妊娠中の虫歯・歯周病予防や治療は、お気軽にご相談ください。(相談のみのお問い合わせや診察も承っております。)
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