口腔扁平苔癬の治療

歯の治療方法を患者さんに説明する女性の画像

口腔扁平苔癬の治療は、主に粘膜の炎症を抑えるお薬や原因の除去をして、症状の悪化を防ぎ、改善を図ります。

治療

口腔扁平苔癬は粘膜や皮膚に慢性的な炎症が起きているため、治療は主に炎症を抑えたり、原因(金属、ウイルス、細菌など)を取り除くことが主体となります。

患部の炎症の抑制

炎症を抑える働きのあるステロイド軟膏・噴霧薬やうがい薬などの使用し、併せて歯周病治療や口の中のお掃除(クリーニング、PMTC)を行なっていきます。

ステロイド系のお薬(消炎作用)

基本的には約2〜4週間使用し、効果を確認していきます。

代表的なお薬 主成分 種類 抗炎症作用の強さ 適応
  • アフタゾロン
  • デキサルチン
デキサメタゾン 軟膏 弱い 痛みなどの症状が比較的軽度
  • オルテクサー
トリアムシノロンアセトニド 軟膏 中等度 痛みなどの症状が中等度
  • サルコート
ベクロメタゾンプロピオン酸エステル 噴霧薬 強い
  • 患部の場所が軟膏の塗布をしにくい場合
  • 患部の範囲が広い場合
  • 痛みなどの症状が比較的強い

その他のお薬(消炎作用)

お薬の名称 主成分 特徴
アズノールうがい液 アズレンスルホン酸ナトリウム水和物
  • 軟膏を塗りにくい場所や広い範囲の患部に適応可能
  • ステロイドが向かない症例にも適応可

その他のうがい薬(殺菌作用)

口の中の汚れは粘膜を刺激します。殺菌作用のあるうがい薬を使い、口の中をなるべく清潔に保ちます。

お薬の名称 主成分 特徴
ネオステリングリーン ベンゼトニウム塩酸塩 口の中の菌に対する殺菌作用
コンクール クロルヘキシジングルコン酸塩 口の中の菌に対する殺菌作用

漢方薬

口内炎などに適応される一部の漢方薬は、扁平苔癬に対する有効性が報告されています。

  • 小柴胡湯
  • 半夏瀉心湯
  • 黄連湯、または五苓散との併用
  • 茵蔯蒿湯、または白虎加人参湯/五苓散との併用
  • 補中益湯
  • 黄連解毒湯

原因の除去

口の中に汚れがたまり、虫歯や歯周病、口腔カンジダ症を併発すると、口腔扁平苔癬が悪化する原因になります。そのため、口腔扁平苔癬では口の中を清潔に保つことがとても大切です。

また合わない入れ歯は粘膜を刺激する一因になるため、入れ歯の調整が必要です。汚れた入れ歯はカンジダ菌が繁殖し、粘膜に炎症を引き起こすため、入れ歯の正しい洗浄方法を知ることも重要です。

さらに口腔扁平苔癬は金属アレルギーが関連することがあるため、疑われる場合は金属製のつめものやかぶせものの交換も慎重に検討します。

*口腔扁平苔癬は難治性で「長いお付き合いが必要な病気」とされ、治療が長期化することがあります。

歯周病の治療、口の中のお掃除

口の中の汚れは粘膜の炎症を引き起こし、扁平苔癬を悪化させる一因になります。そのため、日常的な歯磨きはもちろん、定期的に専門の歯科医院で粘膜を確認してもらい、お掃除・クリーニング(PMTC)をしてもらうと良いでしょう。

歯のクリーニング

入れ歯の汚れで起きる病気

入れ歯の洗浄方法(お手入れ)

【痛みを伴い、十分な歯磨きができない場合】

扁平苔癬のときの歯磨きのコツ

金属アレルギーの治療

銀歯の画像

扁平苔癬に対する一般的な治療であるステロイド治療や上記の歯周病治療や口の中のクリーニングなどを行なっても改善せず、皮膚科で歯科金属に対するアレルギー陽性と診断された場合に行います。

必要に応じて口の中にある金属のつめもの・かぶせものをセラミックやプラスチックに変える治療内容になります。

尖っている歯の調整

つめものやかぶせものが鋭利で患部を傷つけやすい状態にある場合には、研磨して粘膜への刺激を改善します。また段差になっている部分などは調整することで、汚れがつきにくくなります。

また虫歯が原因で歯の一部が尖っている場合には虫歯の治療が有効になる場合もあります。

注意すること

タバコや過度な飲酒は扁平苔癬の原因の一つになるため、なるべく控えた方が良いでしょう。

タバコと関連する口の中の病気

加熱式タバコ、電子タバコ

報告例のあるその他の治療

レーザー治療

扁平苔癬に対する治療として、レーザー治療の有効性が一部で報告されています。ただし、レーザーで患部を除去する方法は有効性の報告がある一方で、再発やがん化した報告もあり、慎重に検討されるべきとされています

薬物療法

上記のもの以外で、扁平苔癬に対する効果が期待されるお薬として、「アトピー性皮膚炎の治療薬」や「アルカロイド製剤(毛生え薬)」などの治療効果が一部の論文で報告されています。

ただし、現在、下記の薬剤は「ビタミンA製剤」以外、扁平苔癬に対しての適応は認められていません。

タクロリムス軟膏

国内では「アトピー性皮膚炎」のみに適応が認められ、抗アレルギー作用があります。

扁平苔癬に対しての有効性は、1997年に海外で初めて報告され、治りにくい扁平苔癬に対しても有効な報告がある一方で、軟膏を止めると再発することも報告されています。

セファランチン錠(アルカロイド製剤)

「脱毛症」「白血球減少症」のみに適応が認められています。タマサキツヅラフジという植物の成分で、抗アレルギー作用などがあります。

扁平苔癬に対して、粘膜の炎症を抑える働きが一部の論文で報告されていますが、長期投与や安全性について今後多くの報告が期待されています。

ビタミンA製剤

扁平苔癬の原因の一つとしてビタミンA欠乏が考えられており、治療の有効性が報告されています。

「口腔扁平苔癬」に対しての適応が認められていますが、一方で催奇形性があるため、妊娠または妊娠する可能性がある女性への使用は禁忌とされ、妊娠する可能性がある女性が使用する場合には「投与中止後2年間は避妊させること」とされています。

アロプリノール(痛風のお薬)

「高尿酸血症」、「高尿酸血症と伴う高血圧症」のみに適応が認められている治療薬ですが、アロプリノール錠を粉砕して水と希釈後、1日3回、5分間、口に含んでゆすぐ方法が報告されています。扁平苔癬や抗がん剤の副作用の口内炎に対して有効との報告がありますが、期投与や安全性について今後多くの報告が期待されています。

口腔扁平苔癬に関する診療科

口腔扁平苔癬は一部の専門の口腔外科、歯科医院、皮膚科、耳鼻咽喉科などで診療が行われています。

まとめ

口腔扁平苔癬は長期の治療が必要になることがあり、一部で再発の可能性もある病気です。治療中や治療後も口の中を清潔に保ちながら、担当医に定期的に診てもらうことが大切です。

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