舌や歯茎が痛い?!
口腔扁平苔癬(へんぺいたいせん)とは?
扁平苔癬とは口の中の粘膜や皮膚の表面に炎症をきたす病気で、痛みやかゆみを伴うことがあります。
口の中にできるものを特に「口腔扁平苔癬」と呼び、2017年にWHO(世界保健機関)が改訂した新しい分類の中で「口腔潜在的悪性疾患」という種類に組み込まれ、“がん化する可能性のある口の中の病気”として位置づけられています。
ここでは、意外と知られていない「口腔扁平苔癬」について、解説致します。
原因
口腔扁平苔癬の原因には、
- 細菌やウイルスの感染
- 歯肉炎・歯周病
- 口の中の汚れ
- 免疫の異常
- 金属アレルギー
- 薬剤
- タバコ(喫煙)
- ストレス
- ビタミンAの欠乏
- 移植片対宿主病(GVHD)
などが原因として考えられています。
年齢、性別
扁平苔癬の患者さんは主に40〜70歳代で、女性に多い傾向にあります。
また扁平苔癬が発生する頻度は約0.02〜4%といわれています。
部位、症状
発生しやすい部位
主に頬の粘膜、歯ぐき、舌、唇、上あごの粘膜などにみられます。
症状、患部の特徴
白く変化した粘膜はただれ・潰瘍(粘膜がえぐれたような傷)を伴ったり、盛り上がりがみられる場合があります。
また触れると痛みを感じたり、食べ物がしみることもあります。
がん化率
がん化する割合は約1〜2%と報告されています。
検査
口腔扁平苔癬の検査は、白くなった粘膜の一部を採取する病理組織検査が行われます。
また状況に応じて、レントゲンや血液検査、アレルギー検査が行われることもあります。
治療
口腔扁平苔癬の治療には、薬による治療、口の中を清潔にする「歯のクリーニング」、銀歯の除去などがあります。また口の粘膜を刺激する尖った詰め物や被せ物、入れ歯を調整することもあります。
薬による治療
口腔扁平苔癬では、まず薬を使用する治療を選択されることが多いです。
ステロイド軟膏
口腔扁平苔癬の治療で、最もよく使われるお薬で、粘膜の炎症を抑える働きがあります。2〜4週間ほど使用し、炎症を緩和させてますが、十分な改善がみられない場合は他の治療も進めます。
口の中を清潔にする
口の中の汚れは粘膜の炎症を引き起こすきっかけになります。また銀歯が汚れていると、金属の腐食や金属のイオンの溶け出しの原因にもなります。
扁平苔癬の炎症を緩和させるためには、歯のクリーニングや歯周病治療で口の中を清潔にすることも有効です。
セファランチン
セファランチンは円形脱毛症の治療薬ですが、抗アレルギー作用や血流の改善などの作用があり、口腔扁平苔癬への改善率が80%(*)と報告するデータもあります。
(参考文献)「口腔扁平苔癬に対するCepharanthineの臨床効果に関する後方視的多施設共同研究」菅原由美子先生ら 日口内誌 第22巻 第2号:59〜67,2016,12月
タクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)
タクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)はアトピー性皮膚炎の治療薬ですが、口腔扁平苔癬への改善も報告されいます。使用開始から症状の改善までは2日〜4週間、治癒期間は1〜9ヶ月といわれています。
一方で、使用を中止すると再発する傾向があり、根本的には治癒しにくいというデータもあります。
(参考文献)「Vente C, Reich K, Rupprecht R, Neumann C: Erosive mucosal lichen planus : response to topical treatment with tacrolimus. Br J Dermatol 140 : 338-342, 1999.」
漢方薬
粘膜の炎症を抑えたり、低下した免疫機能を戻すために、以下の漢方薬が使用されます。
- 茵蔯蒿湯
- 黄連湯
- 黄連解毒湯
- 半夏瀉心湯
- 五苓散
- 白虎加人参湯
- 十全大補湯
- 補中益湯
うがい薬
粘膜の炎症を和らげたり、口の中を清潔に保つために、うがい薬を使用することもあります。
- アズノール(アズレンスルホン酸ナトリウム水和物)
- ネオステリングリーン(ベンゼトニウム塩化物)
その他
ビタミンA誘導体、ビタミンA・B・C剤の投与、アロプリノールの錠剤(ザイロリック®錠:痛風、高尿酸血症)を使ったうがい液なども口腔扁平苔癬に対する有効性が報告されています。
まとめ
扁平苔癬は口の中の粘膜が白く変化し、周囲が赤くただれ、痛みを伴うことが多い病気です。また扁平苔癬は、2017年にWHO(世界保健機関)の分類で「口腔潜在的悪性疾患」の一つに挙げられています。
「口の中が痛い」、「舌や歯茎が白くなったり、赤くなっている」場合には、早めに診てもらうのが良いでしょう。
当院では大学病院出身の口腔外科の歯科医師が在籍しており、口腔がん検査器も導入しておりますので、お気軽にご相談ください。
(関連記事)