口腔がん
口腔がん、舌がん…名前は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
口腔がんとは、口の中(舌や歯茎、頬、唇、上顎などの粘膜)にできるがんの総称で、近年患者数は増加傾向にあります。また中年以降の男性に多いものの、近年では女性の口腔がん患者数も増えています。
口腔がんの生存率は早期段階では約90%と高い一方で、進行すると約60%未満と急激に減少するため、早期発見・早期治療が大切です。
ここでは、口腔がんの特徴、症状などについて、わかりやすく解説致します。
*当院は大学病院口腔外科出身の歯科医師・口腔がん検診協力医が在籍しております。
目次
発生しやすい場所
日本人の口腔がんの発生場所は舌が最も多く、次いで下の歯茎、上の歯茎、頬の内側の粘膜といわれています。
発生する場所によって、舌がん・歯肉がん・頬粘膜がん・口腔底がんなどと呼びます。
部位別の口腔がん
部位 | 内容 |
---|---|
舌がん |
|
歯肉がん |
|
硬口蓋がん |
|
頬粘膜がん |
|
口腔底がん |
|
症状
口腔がんには以下の症状があります。
- 口の粘膜にしこり(硬い異物感)や違和感、ただれ、腫れがある
- 粘膜の色が白や赤く変化している
- なかなか治らない口内炎のような傷がある
- しみるような感覚がある
- 顎の下、首にしこりがある
- よく出血する
- 飲みこにくい
- 口が開きづらい
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口内炎との違いは?
初期の舌がんや口腔がんははっきりとした痛みは少なく、口内炎と似た症状の場合もあります。ただの口内炎だと思って放置していたら、実はがんだったというケースも珍しくありません。
特に以下の場合は、早めに担当医に相談しましょう。
- 2〜3週間以上口内炎が治らない
- 舌の色が白あるいは赤く変化して治らない
- 粘膜の表面がただれている、ザラザラしている
- 歯茎の腫れ、赤みが治らない
- 歯がぐらぐらする
患者数
年間患者数は約22,000人(全部のがんのうちの約2%)で高齢化に伴い、口腔がんの患者数は増加傾向にあります。
男女差/死亡率/5年生存率
口腔がんは、男性が女性と比べ、約2〜2.6倍多いとされています。一方で、近年では女性の社会進出による生活習慣の変化もあり、女性の患者数も増加しております。
また口腔がんの5年生存率は約6割、死亡率は約3割と報告されています。
☟下の表は、縦横にスクロール(移動)できます。
男性 | 女性 | 計 | |
---|---|---|---|
診断された数[2019年] | 16,463例 | 7,208例 | 23,671例 |
死亡率(死亡者数) [2020年] |
33.7%(5,547人) | 31.6%(2,280人) | 33%(7,827人) |
5年相対生存率 [2009~2011年] |
60.7 % | 69.4 % | 63.5 % |
*(出典)「国立がん研究センターがん情報サービス」全国がん登録罹患データ(罹患)、人口動態統計死亡データ(死亡)、地域がん登録生存率データ(生存率)
年齢
50歳代〜60歳代から増加する傾向にあります。
口腔がんの危険性を高めるもの
タバコやお酒
タバコはがんの最大の危険因子で、喫煙者は非喫煙者と比べ、口腔がんのリスク約3〜5倍に高まると報告されています。また累積喫煙指数(1日の喫煙箱数×喫煙年数)が60以上の場合は口腔がん発症のリスクが特に高まります。
またお酒もがんの危険因子で、飲酒者は非飲酒者と比べ、口腔がんのリスクは約3倍増加します。
さらに、喫煙と飲酒の習慣が重なると、口腔がんのリスクは非常に高まることも明らかになっています。
(参考資料)・「がん対策研究所多目的コホート研究」(Eur J Cancer Prev.2018 Mar;27(2):171-179)
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その他の危険因子
タバコやお酒ほどではありませんが、以下は口腔がんの発症リスクを高まることが論文で報告されています。
例えば、細菌やウイルス、紫外線、直接的な刺激などで粘膜や細胞(DNA)に何度も傷や刺激が加わると、がん化する可能性があります。
- 口の中の汚れ
- 慢性カンジダ症
- 放置してしまった虫歯
- ヒトパピローマウイルスの感染(性感染症)
- 合わない入れ歯、汚れた入れ歯の長期使用
- 歯並びが悪く、口の中に傷ができやすい
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口腔がんや舌がんになりやすい人の特徴
- タバコを1日に10本以上吸う。
- お酒をほぼ毎晩飲む。
- ビールやワイン、スピリッツを習慣的に飲む。
- 熱いもの、辛いものなど刺激物を好んでよく食べる。
- 40歳以上、男性である。
- 口腔がん、舌がんの方が血縁関係のある親族にいる。
- 偏食がある。
- 歯をあまり磨かない。
- 合わない/不衛生な入れ歯を長期間使用している。
- 口の中に傷がよくできる。
*該当すると、必ず将来口腔がんを発症するわけではございません。ただし、上記項目が長期間繰り返されると、口腔がんの発症リスクが高まる可能性があります。
検査
問診や触診、さらには口腔がん検査器を使い、細かく診察を致します。日本では口腔がんの検診受診が少なく、アメリカと比べ、死亡率が高いことが指摘されています。
日本 | アメリカ | |
---|---|---|
死亡率 | 約33% | 約19% |
特に口腔がんが疑われる状態の場合は、連携する医療機関(大学病院等)での精密検査が必要になります。精密検査では、病理組織検査やCT、MRI撮影の検査などが行われます。
治療
口腔がんの治療は主に手術(外科療法)、抗がん剤(化学療法)、放射線治療あるいはそれらを組みわせた治療が行われます。治療方法はがんの大きさや部位、悪性度、年齢、全身状態などを総合的に判断し、選択されます。
早期でがんが小さいほど、身体的な負担が少ない一方で、がんが大きいと術後に話しにくい・味を感じにくいなどの障害、顎や顔面の変形を伴うこともあります。
まとめ
口腔がんはタバコやお酒などの生活習慣によって、危険率が高まります。また初期は口内炎に似た症状の場合もあるため、気にある口内炎や違和感を感じる場合は担当医と相談するのが良いでしょう。
当院では大学病院口腔外科出身・口腔がん検診協力医が在籍し、口腔がんの検査機器も備えております。口腔がんかもしれない、口内炎がなかなか治らないなどご不安を感じる場合はお気軽にご相談ください。
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