笑気吸入鎮静法の適応
笑気吸入鎮静法は基本的に安全な方法なので、ほとんどの方が適応になります。
特に笑気吸入鎮静法が有用な方(「適応になる方」)、注意が必要な方(「適応にならない方」)を解説していきます。
目次
適応になる方
不安や心配、緊張、恐怖などの精神的なストレスは痛みや血圧、脈拍、吐き気などに影響を与えます。
笑気吸入鎮静法では治療に対する不安や恐怖心を緩和して、次のような患者さんの心身の負担を軽減させることができます。
- 不安感や恐怖心が強い方
- 嘔吐反射(絞扼反射)が強い方 ☞口の中を触れられたり、器具が入るとえずいてしまう方
- 高血圧症や心臓病、糖尿病、甲状腺の病気をお持ちで、治療時の血圧や脈拍に注意が必要な方
- 注射の麻酔が効かないと感じる方
- 障害のある方(脳性まひで体勢・姿勢が難しい方/ダウン症などで不安や緊張が強い場合)
不安や恐怖心が強い方
歯の治療に対する強い不安や恐怖心(精神的ストレス)がきっかけで起こる体調不良(全身的偶発症)の予防につながります。
高血圧症や心臓病などの持病がある方
高血圧症や心臓病(狭心症や不整脈など)などの方の場合、笑気の持つ鎮静(リラックス)効果によって血圧や脈拍を安定させることで、より安全な治療を行うことができます。
嘔吐反射が強い方
口の中を触られたり、治療器具が入ることで吐き気や嘔吐してしまう(嘔吐反射)方の場合には、治療に対する不安や緊張などの精神的ストレスが原因の一つといわれています。
不安や緊張、恐怖心を緩和することで治療が可能になるケースもあります。
適応にならない方
次の方は笑気吸入鎮静法の適応にはなりませんが、時期をずらしたり、必要な治療を受けることで適応条件を満たせば、使用可能になる場合があります。
- 鼻づまりなどで鼻呼吸できない方
- 妊娠初期(4ヶ月以内)の方
- 中耳炎、肺気腫、気胸、腸閉塞などの閉鎖腔(体内の閉鎖した空洞)がある方
- 医療ガスを使用した眼科手術を受けてまもない方(2ヶ月以内)
- 過呼吸発作のある方
鼻づまりのある方
鼻づまり(鼻閉)があると笑気を吸入することができないため、十分な効果が得られません。
妊娠初期の方
妊娠初期(〜15週=4ヶ月)は胎児の重要臓器が作られる時期であるため、避けた方が良いでしょう。
閉鎖腔がある方
血液中の笑気は空気を含む空間に移りやすい特徴があるため、中耳炎や気胸、腸閉塞の場合には体内のそれらの閉鎖空間にたまりやすく、痛みが出ることがあります。
医療ガスを使った眼科手術
網膜剥離手術で眼の内側に医療ガスが注入されている場合、笑気を吸入すると眼圧が上がる可能性があります。手術後2ヶ月が経過していれば問題ないとされています。
過呼吸がある方
笑気の吸入を意識しすぎると過呼吸になる可能性があります。
一方で、過呼吸や神経性ショックは精神的なストレス(不安や恐怖、緊張など)がきっかけになるため、笑気による鎮静(リラックス)効果は過呼吸発作や神経性ショックの予防に役立つことも知られています。
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