歯が溶ける?!
酸蝕歯(さんしょくし)について
歯は酸に弱く、酸性の食べ物や飲み物をよく摂っていたり、嘔吐(胃酸)を繰り返す場合、歯は溶けてしまうことがあります。
溶けた歯は再生できず、放置すると歯が薄くなって欠けたり、虫歯になりやすいこともあります。
ここでは、歯が溶ける「酸蝕歯(酸蝕症)」について、わかりやすく解説致します。
酸蝕歯とは?
「酸蝕歯(酸蝕症)」とは、歯が酸で異常に溶けてしまう状態を指します。
なぜ歯が溶ける?(酸蝕歯の仕組み)
歯は食べ物や飲み物に含まれる酸によって溶けたり(脱灰)、溶けた部分が唾液で再び補修されています(再石灰化)。
しかし、酸性の強い食べ物や飲み物を習慣的に摂っていたり、摂食障害による嘔吐(胃酸)の場合、歯の再石灰化が追いつかず、歯が溶けてしまうのです。
酸蝕歯の人の割合は?
国内調査では、酸蝕症を有する人の割合は26.1%とされ、国民の約4人に1人という結果が報告されています。
増加傾向
近年、酸蝕歯は増加傾向にあり、以下の影響が考えられています。
- 健康志向の高まりによるビタミン系飲料・サプリメント、酢の習慣的摂取
- 市販飲料の普及による清涼飲料水などの手軽な摂取
原因
酸蝕歯の主な原因は、食べ物や飲み物に含まれる酸と胃酸に分けられます。
酸性の強い食べ物や飲み物
歯が溶ける食べ物や飲み物には、以下のものが挙げられます。
一般的にすっぱいものが多いですが、あまり酸味を感じないドレッシングやマヨネーズ(pH3〜4)、野菜(pH4〜6)なども酸性の場合があります。
- 酢や炭酸飲料、ジュース、スポーツドリンク
- 繰り返される嘔吐(胃酸)
- 柑橘系の果物(オレンジ、グレープフルーツ等)
- トマト
- いちご
- ワイン
- ドレッシング
化学物質を扱う仕事の方
酸などの化学物質を扱う仕事の方の場合、酸性のガスや蒸気などが原因で、歯が溶けることがあります。
*職業に関連して「歯が溶ける」ものを、職業性酸蝕症と呼びます。
特に以下の職業の方は一般の方より「歯が溶ける」傾向があります。
- 化学工業
- 窯業・土石製品製造業
- 非金属製品製造業
- メッキ工場
- バッテリー製造工場
- 塗装業
- 金属加工業
また酸などの有害物質を扱う仕事をしている場合、使用頻度や量に関わらず、
6ヶ月以内ごとに最低1回の健診(歯科特殊健康診断)が義務付けられています。
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溶けた歯の特徴・症状
酸蝕歯では、酸で歯のエナメル質が溶けて薄くなり、内部の象牙質が透けたり、歯の色や形に以下のような特徴が見られます。
- 歯の先端が異様に透けている。
- 歯がしみる。
- 歯の角が丸みを帯びている。
- 歯が黄色い(茶色い)。光沢(つや)が少ない。
- 歯の表面に小さなへこみがある。
- 詰め物と歯に段差が生じている。
放置するとどうなる?
酸蝕歯を放置すると歯が薄くなったり、歯が欠けたり、折れやすくなったり、虫歯のリスクが高まります。
予防や治療
酸から歯を守るには
酸蝕歯を予防するには、以下のことがおすすめです。
- 歯医者さんで定期的な確認と修復をしてもらう。歯を強くするフッ素塗布をしてもらう。
- 酸性度の強い飲食物を必要以上に摂りすぎない。
- 食事後は水でゆすぐ。あるいはガムを噛み、唾液の分泌を促す。
- 間食するときは時間を決める。だらだら食べない。
- 歯磨きは優しく行い、歯ブラシは「やわらかめ」や「ふつう」を選ぶ。
酸で溶けた歯を守るには
酸が原因で溶けた歯を守る方法として、
- フッ素塗布で歯を丈夫にする。
- 溶けた部分を修復する。
- マウスピースで歯を保護する。
などが挙げられます。
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まとめ
酸に溶かされ続けると、歯はとても弱くなってしまいます。「もしかしたら酸蝕歯かも…」と感じたら、お気軽にご相談ください。
また当院では、摂食障害をお持ちの方のご相談も承っております。ご不明な点等ございましたら、お問い合わせください。
(参考文献)
・北迫佑一著 「知る・診る・対応する 酸蝕症」 クインテッセンス出版 2017
・北迫佑一著 「食後のブラッシングと酸蝕症」歯界展望2014;124(4):736-741