睡眠時無呼吸症候群とうつ病
睡眠時無呼吸症候群には日中の眠気や全身の倦怠感のほか、抑うつ気分や意欲の低下などうつ病との共通点が多いことが知られ、両者を併発することも珍しくありません。
また両者は互いの病気を悪化させる可能性を持つことが指摘されています。
頻度
頻度については次のような報告があります。
- 睡眠時無呼吸症候群の患者の約18%にうつ病がみられた。
- 睡眠時無呼吸症候群を治療していない場合、うつ病の発症率が通常と比べて約2倍であった。
しくみ
睡眠時無呼吸症候群による抑うつ状態
酸素不足
睡眠時無呼吸症候群で「呼吸が止まる」ことによって起きる酸素不足(低酸素血症)は脳へ影響を与え、気分障害を招く可能性が指摘されています。
セロトニンの低下
睡眠時無呼吸症候群による日中の過度な眠気や全身倦怠感は昼間の活動や意欲を大きく低下させ、セロトニンの低下を招きやすいといわれています。
精神を安定させる役割のあるセロトニンが低下すると、うつ症状を引き起こす原因となります。
うつ病から睡眠時無呼吸症候群を併発
睡眠薬や抗不安薬の影響
睡眠薬や抗不安薬などには筋肉を緩める働きがあるため、気道の広さを保ちにくくなります。
薬の副作用「肥満」
うつ病のお薬の副作用で肥満を招き、睡眠時無呼吸症候群の危険性を増加させる可能性が指摘されています。
セロトニンの低下
うつ病では精神を安定させる働きのある脳内の物質「セロトニン」が低下します。セロトニンが低下すると、気道を広げる筋肉の緊張を緩めてしまい、気道が狭くなります。
各特徴
睡眠時無呼吸症候群 | うつ病 | |
体型 | 肥満、顎が小さい | 正常 |
性別 | 男性に多い | 女性に多い |
睡眠障害 | 過眠 |
|
自責傾向 | 軽い | 強い |
食欲低下 | なし | あり |
抑うつ薬の反応 | 効きにくい | 効きは良好 |
まとめ
上記のように睡眠時無呼吸症候群とうつ病は深い関わりがあり、両者は深刻化すると命に関わる重大な病気であるため、予防や治療がとても大切です。
気分や体調がすぐれない時はかかりつけの先生に相談してみましょう。
また当院では相談のみの診察も受け付けております。ご不明な点等ございましたら、お気軽にご相談ください。
(関連記事)
(参考文献)
・「精神疾患と睡眠時無呼吸症候群」内村 直尚先生 精神経誌(2010)112巻9号
・「睡眠時無呼吸症候群とうつ病 〜両者の関連性を検討する〜」池上 あずさ先生 行動医学研究 Vol.23,No.2,58-62,2018
・「睡眠時無呼吸症候群診療のピットフォール」宮崎総一郎、小林隆一、北村拓郎先生ら 耳展54:1:10〜18,2011
・「セロトニン欠乏脳 -キレる脳・鬱の脳を鍛え直す-」有田 秀穂先生 東邦大学 第一生理学Health and Behavior Sciences 3(2), 2005, 123- 129