授乳中の麻酔、お薬は?
授乳中に麻酔薬や飲み薬を使うことに不安を感じる方も少なくありません。
お母さんが服用したお薬は母乳を通じて赤ちゃんにどのような影響を与えているのでしょうか。
目次
授乳中にお薬を飲まない方がいい?!
授乳中はお薬を全く飲むことができないわけではなく、また母乳をあげることを必ずしもあきらめる必要はありません。
お薬を服用や中止する際は自己判断ではなく、主治医や薬剤師とよく相談しましょう。
ここからは、服用した場合の赤ちゃんへの影響や服用を避けるべきお薬などを解説致します。
母乳から赤ちゃんへの影響は?
服用したお薬が母乳を通じて赤ちゃんに移行するお薬の割合は平均約1%未満とされ、非常に少なく、赤ちゃんへの影響は非常に少ない・ほぼ無視できるものと報告されています(*1)。
また歯科の局所麻酔薬は通常使用量が少なく、分解されるのも速いため、授乳に影響ないとされています(*2:日本小児歯科学会)。
*ユニセフやWHO(世界保健機関)、アメリカ小児学会などは、授乳中止が必要なお薬の種類は全体のお薬の約3%と報告しています。
授乳中は服用を避けるべきお薬は?
授乳中に服用を避けるべき代表的なお薬には、以下のものが挙げられます。
- 抗がん剤
- 抗てんかん薬
- ホルモン剤
- 放射性医薬品(ヨウ素など)
- 一部の抗不整脈
- 麻薬
※横にスクロールできます。(下記は代表例の一部)
分類 | 成分 | 製品名 |
---|---|---|
抗不整脈 | アミオダロン | アンカロン |
麻薬 | コカイン | コカイン |
放射性ヨウ素 | ヨウ化ナトリウム | ヨードカプセル-123 |
ヨウ化ナトリウム |
母乳へ影響する項目
全てのお薬が授乳に影響するわけではなく、母乳への影響の程度は以下の項目によっても変化します。
- 薬の種類(母乳への移行しやすさ、体内での分解されやすさなど)、量
- 母親の健康状態(肝・腎機能など)
- 子どもが飲む母乳の量・回数、子どもの年齢や体重
授乳中でも使用できると考えられているお薬
歯科では
- 抗菌薬(抗生物質)
- 痛み止め
などが処方されることが多いです。
その中で、授乳中でも使用できると考えられているお薬は下記をご参照ください。
※お薬の影響は個人の服用状況や健康状態、薬の飲み合わせなどによって変化することもございますので、主治医・薬剤師とよく相談しましょう。
抗生剤(抗生物質、抗菌薬)
ペニシリン系やセフェム系、マクロライド系の種類の抗菌薬
例)抗菌薬(サワシリン®)を母親が服用した時、母乳から赤ちゃんが移行するお薬の量は約0.1%といわれています。
痛み止め(鎮痛剤、解熱鎮痛薬)
アセトアミノフェン(カロナール)、ロキソニン
お薬を飲むタイミングは?
お薬を飲むタイミングを工夫することで、赤ちゃんへの影響をさらに最小限に抑えられます。
- お薬を飲んだ後の授乳を避ける(授乳直後にお薬を服用する)。
- 子供が長時間の睡眠に入る前に服用する。
例えば、痛み止めのロキソニン®錠は服用後45分前後に体内の薬物濃度が最も高くなります。一方で、服用後2〜3時間以降は体内の薬物濃度はかなり少なくなることが報告されています。
※お薬の種類によっては服用のタイミングが決まっていることもございます。
※服用期間中に人工乳(ミルク)一時的に代用するのも選択肢の一つです。
(関連記事)
(参考文献)
*1:「 特殊な病態における抗菌薬の選択と使い方: 注意を要する抗菌薬の使い方 妊娠中,授乳中の抗菌薬の使い方」 三鴨廣繁、山岸由佳
*2:「健やかな妊娠・出産のために〜大切にしたい口腔の健康について〜」「プレママのデンタルケア」日本小児歯科学会