タバコと関係する?!
歯周病、虫歯、口腔がんについて
タバコは健康に悪い…ことはほとんどの人が聞いたことがあるのではないでしょうか。
特に口はタバコの煙が最初に取り込まれる場所であるため、タバコの影響を受けやすく、虫歯や歯周病、口腔がんの危険性の増加、口臭の悪化、味覚の低下、唾液の量や性質の低下、歯ぐきの黒ずみ、胎児の先天異常などにつながることが報告されています。
ここでは、タバコによって引き起こされる口の中の病気やリスクについて、まとめてご紹介致します。
目次
喫煙と関連のある病気、症状
タバコの煙は免疫力の低下、血流の低下、発がん作用によって、歯のステイン(色素汚れ)、歯茎の黒ずみ、歯周病や口臭の悪化、口腔がんの危険性が高まります。
また喫煙者(能動喫煙)はもちろん、喫煙者と同じ空間にいる非喫煙者(受動喫煙)も同様の病気へのリスクがあり、さらに妊娠期間中の喫煙は母体のほか、胎児の先天性疾患につながることもあります。
喫煙の種類 | 場所 | 症状 |
---|---|---|
能動喫煙 | 歯 | 歯の色素汚れ、歯石、根っこの虫歯 |
歯茎、歯を支える骨 | 歯周病、歯肉炎、歯肉へのメラニン色素沈着(黒ずみ) | |
粘膜 | 口腔がん、白板症、扁平苔癬、口腔カンジダ症、口内炎 | |
舌 | 味覚障害、黒毛舌、舌炎、舌がん | |
唇 | 口唇がん、口唇炎 | |
その他 | 口臭、唾液の性質の変化 | |
受動喫煙 | 歯茎、歯を支える骨 | 歯周病、歯肉へのメラニン色素沈着 |
乳歯 | 虫歯 | |
妊婦喫煙 | 胎児 | 口唇裂、口蓋裂 |
(参考文献)「禁煙ガイドライン(2010年改訂版)」日本口腔衛生学会、日本口腔外科学会などを含む9つの学会による合同報告
口腔がん
口腔がんの最大の原因はタバコとお酒です。
口の中では舌の下や上あごの天井(以下参照)は、タバコによる口腔がんが発症しやすい場所といわれています。
- 口底部(舌の下):唾液とともに煙に含まれる有害物質がたまりやすい。
- 硬口蓋(上あごの天井):口から吸い込んだ煙が触れやすい。
喫煙歴と病気
タバコの健康への影響は喫煙年数によっても異なり、喫煙歴が長いほど、重篤な病気につながる傾向があります。
喫煙歴 | 喫煙と関連のある病気、症状 |
---|---|
5年未満 | 歯ぐきや唇のメラニン色素沈着(黒ずみ)、口臭、味覚の変化、歯の着色 |
5〜10年 | 虫歯、歯周病、抜歯後の治癒の遅れ・異常、インプラントの脱落、口腔カンジダ症 |
10年以上 | 白板症(前がん病変)、口腔がん |
その他 | 口唇口蓋裂、歯科治療の効果低下、薬剤関連顎骨壊死 |
(参考文献)「歯科・口腔疾患の喫煙患者対応」長尾 徹先生 愛知学院大学歯学部顎顔面外科学講座
非喫煙者との比較
タバコは口腔がんへの影響が大きく、喫煙者は非喫煙者と比べ、口腔がんのリスクが約3〜5倍に高まります。中でも、累積喫煙指数(1日の喫煙箱数×喫煙年数)が60以上の場合は口腔がん発症のリスクが急増します。
病気 | リスクの比率 |
---|---|
口腔がん | 3〜5倍 |
口腔潜在的悪性疾患 (がん化する恐れのある) |
4.0倍 |
歯周病 | 2.1倍 |
虫歯 | 1.8倍 |
歯茎の黒ずみ | 17倍 |
インプラント脱落 | 1.8倍 |
放射線治療における顎骨壊死 | 1.9倍 |
なお、喫煙者がタバコをやめた後、非喫煙者と同等になるのには以下の年数が必要になるといわれています。
喫煙によって生じた問題 | 非喫煙者と同程度になるのに必要な年数 |
---|---|
口腔がんのリスク | 20年以上 |
歯周病のリスク | 10年 |
歯茎の黒ずみ | 6年 |
(参考文献)
・「歯科・口腔疾患の喫煙患者対応」長尾 徹先生 愛知学院大学歯学部顎顔面外科学講座
・「喫煙と口腔病変との関連」福田 仁一先生 学術の動向 2017.6
・「がん対策研究所多目的コホート研究」(Eur J Cancer Prev.2018 Mar;27(2):171-179)
国内喫煙率
厚生労働省による国民健康・栄養調査(2019年)によると、成人の喫煙率16.7%(男性27.1%、女性7.6%)となっています。
まとめ
喫煙者は非喫煙者に比べ、虫歯や歯周病、口腔がんになりやすいことが明らかになっています。虫歯・歯周病・口腔がんはいずれも、早期発見・早期治療がカギとなります。
当院ではタバコをお吸いの方の虫歯や歯周病の予防、口腔がん検診も承っております。「歯周病が気になる」、「歯についたヤニや黄ばみを綺麗にしたい」、「歯がボロボロになるのが心配」などのお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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