歯周病とタバコ

タバコを加える歯の模型の画像

口はタバコの煙が最初に取り込まれる場所であり、喫煙の影響を受けやすい組織です。

タバコの煙は歯茎の免疫力や血行が悪化させるため、歯周病になりやすく、重症化しやすくなります。

またタバコを吸わない人でも、同居する喫煙者からの煙を吸い込む(受動喫煙)ことで影響を受ける場合があり、胎児や子どもへのリスクも懸念されています。

歯周病への影響

歯の寿命を減らすタバコの画像

タバコには4000を超える化学物質と200以上の有害物質が含まれています。特に悪さをするのが「一酸化炭素」と「ニコチン」。

「一酸化炭素」は歯茎への酸素の供給を妨げ、「ニコチン」は免疫力や血流の低下を招き、歯茎が痩せる原因になります。

歯周病になりやすい・重症化しやすい

歯周病の罹患率と喫煙本数

Relationship between incidence of periodontal disease and number of cigarettes smoked

 歯周病に気づきにくい?!

タバコで歯茎の血行が悪くなると、歯茎から出血しにくくなるため、歯周病の悪化を自覚しにくくなります。

禁煙は意味ある?

禁煙すると歯周病のリスクは下がり、「歯周病のかかりやすさ」は約4割減少します。

喫煙者の歯茎の特徴

  1. 20〜30歳代などでも歯周病が発症・重症化しやすい。
  2. 歯周病の進行が急速である。
  3. 歯ぐきから出血しにくく、重症化しても自覚しにくい。
  4. 歯ぐきのメラニン色素沈着(黒ずみ)がある。
  5. 特に上下前歯の歯ぐきが下がっている。

歯周病に起因する病気

口臭

歯周病になると、歯と歯ぐきのすき間(歯周ポケット)が深くなり、特定の歯周病菌が生息しやすくなります。深い歯周ポケットに生息する歯周病菌は臭いガスを発生させるため、口臭の主な原因となります。

口臭の原因

根っこの虫歯、知覚過敏

歯茎が下がっている

gum recession

歯周病の代表的な症状に、「歯ぐきが下がる(歯肉退縮)」問題があります。歯ぐきが下がると、歯の中でもやわらかく弱いとされる根っこの表面が露出し、虫歯や知覚過敏の危険性が増します。

根っこ部分は虫歯になりやすく、また虫歯の進行が早いことが特徴なため、注意が必要です。

唾液の量や性質の変化、味覚の低下

唾液中に含まれ健康に関わる酵素や抗体などの量が低下することが報告されており、菌が増殖しやすい環境に変化します。

また唾液の分泌が低下しておくちが乾燥すると、「味」を感じにくくなります。

唾液の働き

味覚のしくみ

健康への影響を示す目安

ブリンクマン指数(Brinkmann’s Index)

喫煙が人体に与える影響の目安として使用され、1日あたりの平均喫煙本数と喫煙年数をかけあわせて計算します。ブリンクマン指数が一定の数値以上になると、病気のリスクが上昇します。

例)1日あたり20本のペースで、20年喫煙を続けた場合、

ブリンクマン指数は 20(本/日)×20(年)=400 となります。

ブリンクマン指数と歯周病リスクの関係
ブリンクマン指数 歯周病のリスク
301〜500 3.15倍増加
500〜 7.33倍増加

(参考文献)

Gelskey SC, Young TK, Singer DL. Factors associated with adult periodontitis in a dental teaching clinic population. Community Dent Oral Epidemic 1998; 26:226-232.

能動喫煙と受動喫煙

煙を吸う?吸わされる?

喫煙者が自分の意志で行う喫煙を能動喫煙といい、喫煙者の周囲にいるタバコを吸わない人がタバコの煙を吸う場合を受動喫煙と呼びます。

健康への悪影響は受動喫煙でも報告されており、周囲にいるタバコを吸わない人への影響が懸念されています。さらに妊婦の喫煙による胎児へのリスクも指摘されています。

(ちなみに、近年流通しているアイコスやプルーム・テック、グローなどの非燃焼加熱式タバコでも、従来の紙巻きタバコと同様、多数の有害物質を含んでいることが報告されています。)

(関連記事)

歯周病と全身の病気

加熱式タバコ、電子タバコ

口の中の病気とタバコ

まとめ

タバコを吸うと、歯茎の血流が悪く、唾液が少なくなるため、歯周病が悪化しやすくなります。

また歯の着色(ステイン)や歯垢、歯石がつきやすいため、定期的な歯のクリーニングや歯周病健診がとても大切です。

当院では、タバコをお吸いの方の歯の黄ばみのご相談、歯のクリーニング、歯周病検診、口臭検査、口腔がん検診などを承っております。お気軽にご相談ください。

(関連記事)

口臭の原因

タバコと口腔がん

口腔がん

口腔がん検査

(補足)
近年の喫煙率の変化

厚生労働省による国民健康・栄養調査(2019年)によると、成人の喫煙率16.7%(男性27.1%、女性7.6%)となっており、世の中のタバコに対する規制もあり、喫煙率は減少傾向にあります。

近年のタバコの規制の動き

時期 内容
2000年3月 「健康日本21」(21世紀における国民の健康づくり運動)で喫煙率を下げるスローガンが掲げられた。
2003年5月1日 受動喫煙防止を含めた「健康増進法」開始。
2005年2月27日 WHOによるタバコ規制に関する国際協力を定めた

「タバコ規制に関する世界保健機関枠組条約」を発効。

2005年12月 医科、歯科9つの専門学会が合同で「禁煙ガイドライン」を発表。
2006年4月 医科で禁煙治療が保険適応開始。
2018年7月 「健康増進法」の一部改定され、「望まない受動喫煙」をなくすための受動喫煙対策が盛り込まれた。
2020年4月 同法の全面施行開始。

 

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