口内炎や味覚障害にも役立つ!
亜鉛について
亜鉛は健康を維持するのに必要不可欠な栄養で、歯や骨、筋肉、皮膚、肝臓、前立腺などの多くの臓器に存在しています。
食べ物から摂った亜鉛のほとんどは腸で吸収されますが、吸収率は約30%でカルシウム同様低いのが特徴です。そのため、お食事の時に摂取量や吸収率を下げないように配慮することも大切です。
目次
不足しがちな亜鉛摂取
厚生労働省による国民健康・栄養調査の結果では、成人の平均摂取量は推奨量の約7〜8割と不足気味で、特に妊婦や授乳婦では特に不足傾向にあるとされています。
また日本人の約2〜3割が隠れ亜鉛不足状態にあるという報告もあります。
働き
味覚に関わる細胞をつくったり、傷の治りを助けてくれる働きなどがあります。また免疫機能を活性化させる役割などもあり、体内の200種類以上の酵素と関連し、体の機能を正常にする働きや成長に深く関わっています。
亜鉛を豊富に含む食品
亜鉛は魚介、肉、大豆製品のほか、種実類にも含まれます。
例)牡蠣、かたくちいわし、豚レバー、赤身の牛・豚肉、高野豆腐、ごまなど。
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亜鉛が不足するとどうなる?
味覚障害や貧血、免疫力低下、皮膚炎、成長障害、食欲低下、性機能低下などが起きやすくなります。
亜鉛が不足しがちな状況・生活
亜鉛の不足の原因は生活習慣だけでなく、持病や服用中のお薬などが影響することもあります。
亜鉛欠乏の原因 | 生活習慣・持病・体の変化 |
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亜鉛摂取量の不足 |
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亜鉛の吸収の低下 |
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亜鉛消費量の増加 |
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排出量の増加 |
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加工食品をよく摂る方
ファストフードやインスタント食品、レトルト食品などの加工食品には亜鉛の吸収を妨げる食品添加物(リン酸塩など)が含まれていることがしばしばあります。
日常的に加工食品ばかりを摂っている場合には亜鉛が不足しがちになるおそれがあります。
例)ハム、ソーセージ、魚肉練り製品、カップラーメン、漬物、清涼飲料水など
菜食主義の方(ベジタリアン、ビーガン)
植物性食品を中心とした食習慣
植物性食品に多く含まれる食物繊維、フィチン酸(特に豆類、穀類)は亜鉛の吸収を妨げます。通常の生活では問題ありませんが、食物繊維やフィチン酸を過剰に摂取すると、亜鉛不足につながることがあります。
動物性食品を取らない
動物性食品には亜鉛が豊富に含まれているため、肉類や魚類などを全く(ほぼ)摂らない場合には亜鉛が不足がちになります。
ダイエット(過度な食事制限)
十分な栄養を摂っていない場合には亜鉛の摂取量が不足しがちになり、特定の食品に偏っている場合には亜鉛を摂っていても十分に吸収されない場合があります。
加齢
食べる量が減ったり、腸など消化管の機能が低下することにより、亜鉛の摂取量・吸収率が低下します。
また服用しているお薬によって亜鉛の吸収が妨げられる場合もあります。
亜鉛不足になると食欲低下を招くため、さらに食べる量が減るという悪循環に入る場合もあります。
激しい運動
亜鉛の消費量が多く、また汗や尿などから排泄される量が増えます。
過度な飲酒
亜鉛の排出量が増えてしまいます。またアルコールを分解する酵素は亜鉛を材料にしているため、亜鉛の消費量も多くなります。
腸、肝臓、腎臓などの持病
腸に炎症が起きる病気(例:潰瘍性大腸炎やクローン病など)、腸を切除する手術を受けた方などの場合、腸からの亜鉛の吸収が十分にされないことがあります。
服用中のお薬の影響
一部の抗生物質(抗菌薬)などのお薬は、亜鉛の吸収が妨げることがあり、長期間服用する場合は亜鉛不足につながることがあります。
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亜鉛を摂るときの工夫
亜鉛が吸収率が低いため、効率的に摂るには吸収を助けてくれるもの、逆に吸収率を下げてしまうものを把握していくと良いでしょう。
亜鉛の吸収率を助けてくれるもの
ビタミンCやクエン酸
緑黄色野菜や果物(ビタミンC)、レモンやみかんなど柑橘類(クエン酸)と一緒に摂ると良いでしょう。
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亜鉛の吸収を妨げるもの
お酒の飲み過ぎ、フィチン酸(豆類や穀類に多い)やリン酸塩(加工食品に含まれる食品添加物)、食物繊維の摂りすぎなどは亜鉛の吸収を低下させるため、注意が必要です。
亜鉛を摂りすぎることは?!
通常の食生活で摂り過ぎる心配はございませんが、サプリメントなどの不適切な使い方によっては過剰摂取になることがあります。
大量に摂りすぎると、吐き気や下痢、頭痛などの症状が出ることがあります。また亜鉛の過剰摂取は銅の吸収を妨げるため、銅の不足による影響(貧血、骨の異常、免疫力低下など)が出る恐れもあります。
入れ歯安定剤の話
2010年3月4日、ある製薬会社が亜鉛を含む入れ歯安定剤の自社製品を自主回収・販売中止を発表する出来事がありました。
製品の安全性に問題はありませんでしたが、粘着性を高める目的で亜鉛が使われており、規定以上の過剰な量を長期間使う消費者がいることも配慮した予防措置で、現在では原則多くの入れ歯安定剤は亜鉛を含まないことを表記しています。
まとめ
亜鉛は粘膜の修復や味覚細胞の新陳代謝のほか、免疫機能など全身の健康に大きく関わっています。特に口内炎や抜歯後など粘膜に傷があるときは積極的に摂りたい栄養素の一つです。
当院では口内炎や抜歯後の栄養指導を承っております。またなかなか治らない/よくできる口内炎や粘膜の傷などでお困りな場合はお気軽にご相談ください。
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(参考)
・国民健康・栄養調査 厚生労働省
・亜鉛欠乏について 長野県国民健康保険団体連合会、長野県国保直診医師会