心臓病の方の歯科治療

感染性心内膜炎

心臓病と歯の治療、一見関係のないように見えるかもしれません。心臓病を抱える場合、一部の歯科治療機器が使えなかったり、治療前に抗生物質の服用を推奨される場合がございます。

心臓病がお持ちの方、人工弁やペースメーカーのある方などは、事前にお申し出ください。

ここでは、心臓病と歯科治療の関係について、解説致します。

感染性心内膜炎と歯科治療

感染性心内膜炎とは、血液中に入りこんだ細菌が心臓で感染・炎症を起こす病気です。健康な心臓で発症することは稀ですが、

心臓の持病がある方、人工弁置換術後の方などは、抜歯後などに感染性心内膜炎の発症リスクが高まります。

予防・対策

抗生物質の服用

お薬の画像

歯科治療の種類によっては、治療前に抗生物質を服用が推奨される場合がございます。(「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン」日本循環器学会・日本心臓病学会等)

また定期的に健診や歯垢・歯石とりで、口の中を清潔に保つことも大切です。

歯と感染性心内膜炎

歯のクリーニング

感染性心内膜炎のリスクのある方

☟下の表は、縦横に移動(スクロール)できます。

感染性心内膜炎の危険性 該当する方
危険性が高い
  • 生体弁、機械弁による人工弁置換術患者、弁輪リング装着
  • 感染性心内膜炎の既往(経験)者

複雑性チアノーゼ性先天性心疾患(単心室,完全大血管転位,ファロー四徴症)

  • 体循環系と肺循環系の短絡造設術を実施した患者
危険性が中等度
  •  ほとんどの先天性心疾患
  • 後天性弁膜症
  • 閉塞性肥大型心筋症
  • 弁逆流を伴う僧帽弁逸脱
  • 人工ペースメーカー、植込み型除細動器などのデバイス植込み患者
  • 長期にわたる中心静脈カテーテル留置患者

ペースメーカーと歯科治療の機械

ペースメーカーと心臓の画像

ペースメーカーをしている場合でも、通常の歯科治療のほとんどは問題なく行うことができます。歯科治療で使う電子機器とペースメーカーの距離が離れているため、影響を与えることはないと報告されています。

ペースメーカーへの電磁障害(Electromagnetic Interference:EMI)

ただし、フッ素イオン導入装置など(当院での取り扱いはございません)はペースメーカーに影響を与えることがあり、避ける必要があります。

血液をサラサラにする薬(抗血栓薬)

心臓病や脳梗塞などの既往がある方は、血液をサラサラにする薬をお飲みであることも珍しくありません。

血液をサラサラにする薬を飲んでいても、ほとんどの歯科治療は行うことができますが、治療前に歯科医師や医師と相談しながら進めることが大切です。

抜歯など出血を伴う治療の際、出血が止まりにくいことがありますが、抜歯後出血による合併症の危険性は少ないとされています。

(関連記事)

血液をサラサラにするお薬

抜歯の前の服用中止はダメ?

疑問を調べる歯科スタッフの画像

近年では、ごく一部の例外を除き、“血液をサラサラにする薬を服用したまま抜歯をすべき”とされています。(日本口腔外科学会等による「抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン 2020年版」による。)

服用中止すると危険なことも!

血液サラサラの薬を中止すると、血栓・塞栓症(心臓や脳、肺などの血管が詰まる病気)を発症したり、最悪の場合、死亡することもあります。血液サラサラの薬は重篤な病気の発症を防ぐ目的があるため、特に自己判断での中止は避けましょう。

代表的な抗血栓薬

☟下の表は、縦横に移動(スクロール)できます。

抗血栓薬の種類 製品名 成分名
抗血小板薬
  • バイアスピリン
  • アスピリン
  • バファリン配合錠A81

など

アスピリン
  • プラビックス
  • クレピドグレル

など

クレピドグレル
  • パナルジン
  • チクロピジン

など

チクロピジン
  • エフィエント
プラスグレル
  • プリリンタ
チカグレロル
  • プレタール
  • シロスタゾール
シロスタゾール
抗凝固薬
  • ワルファリン
  • ワーファリン
ワルファリン
  • プラザキサ
ダビガトラン
  • イグザレルト
リバーロキサバン
  • エリキュース
アピキサバン
  • リクシアナ
エドキサバン

対策と予防

定期健診や歯垢・歯石とり

定期健診を啓蒙するイラスト画像

虫歯や歯周病がひどくなると、細菌が血液中に侵入しやすく、感染性心内膜炎の危険性や抜歯の可能性が高まります。

感染性心内膜炎や抜歯のリスクを減らすには、日常的な丁寧な歯磨き・入れ歯の正しい洗浄のほか、定期健診や歯垢・歯石とりも大切です。

(関連記事)

歯のクリーニング(歯垢・歯石取り)

入れ歯の洗浄(お手入れ)


(参考文献)

  • 『感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン』日本循環器学会、日本心臓病学会、日本感染症学会等
  • 阿部治彦,豊島 健:生体内植込みディバイス患者と電磁干渉,日本不整脈学会(監).メディカルレビュー,東京,2007:52.
  • 西田英作,横井隆政,窪川恵太,阪中孝一郎,匹田雅久,吉成伸夫:植込型除細動器に対する歯科用レーザーの安全性に関する研究.日本レーザー歯学会誌,20(2):54-61,2009.
  • Takeo Suga, Ryohei Iida, Koufuchi Ryo, Shigeo Horie, Kumiko Maruya, Mitsuhiko Morito: A Study on Electro-Magnetic Interferences for Cardiac Pacemakers cause of Dental Electric Equipments. 日本磁気歯科学会雑誌,11(1):60-61,2002.
  • Keiko Yokoyama, Takahide Komori, Koukichi Matsumoto: Electro-magnetic Interference of Electronic Apex Locator, Pulp Tester and Iontophoresis Apparatus to Patients with Cardiac Pacemakers. 昭和歯学会雑誌,18(4):341-345,1998.
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