ピロリ菌と歯の関係
口の中にも生息する?!
胃癌の原因の一つであるピロリ菌。胃の粘膜に持続感染し、胃癌の発症リスクを高めることが知られています。一方で、ピロリ菌が唾液や歯垢からも検出されることはあまり知られていません。
ここでは、ピロリ菌と歯について、紹介致します。
ピロリ菌とは
ピロリ菌は、西オーストラリア大学教授のウォーレン先生らによって1980年ごろに発見された菌で、胃炎や胃・十二指腸潰瘍、胃癌などの病気の引き金になると考えられています。自覚症状がない場合も多いですが、現在、日本での感染者はおよそ3600万人と推定されています。
年齢と感染率
ピロリ菌は日本において、60歳以上の約80%が感染していると報告されています。
また世界的にみると、公衆衛生の整備が十分でない発展途上国でピロリ菌の感染率は高いといわれています。
ピロリ菌は口の中にもいる
ピロリ菌は通常、胃の粘膜に生息する菌ですが、口の中や入れ歯などから検出されることがあります。
またピロリ菌は
- 歯周病患者の口の中(特に歯垢、歯と歯茎の隙間、唾液)に高頻度で検出される
- 歯周病患者では抗菌薬によるピロリ菌除去効果が得られにくい
ことなどが報告されています。
感染経路の大半は家族内
5歳以下で感染が成立し、ほとんど(約80%)は家族(両親及び祖父母)間で伝染します。
【例】
- 食事の時の大人から子どもへの口移し
- 同じ食器の使用など
まとめ
ピロリ菌は胃癌の原因の一つであり、WHO(世界保健機関)はピロリ菌の除去が胃癌の予防効果を高めることを明らかにしています。
口の中のピロリ菌が胃の感染につながるかは研究途中ですが、歯のクリーニング(歯垢取り)や歯周病治療の有用性が検討され続けています。
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