舌小帯(ぜつしょうたい)
舌小帯は舌の裏側と下の粘膜をつなぐスジで、舌小帯に異常があると舌の動きが制限され、哺乳や発音、歯並びなどに影響を及ぼすことが報告されています。
ここでは、「舌小帯の治療は痛い?腫れる?」、「舌小帯の治療時期は子供?大人になってから?」など舌小帯に関する内容をわかりやすく解説していきます。
目次
舌小帯とは
舌小帯とは、舌の裏側の中央と下の粘膜を結ぶ縦長のスジ(ひだ)を指します。
舌小帯の異常とは
舌小帯の異常とは、舌小帯が短すぎて舌をうまく動かせない状態です。舌小帯の異常は「舌小帯短縮症」、「舌小帯強直症」、「舌小帯癒着症」、「舌小帯過短症」、「舌強直症」などと呼ばれます。
舌小帯の異常で起きる問題、影響
舌小帯に異常があると、舌の動きが制限されるため、次の問題や影響が出ることがあります。
- 発音(滑舌)が悪い
- 歯並びが悪くなる
- 母乳やミルクをうまく飲めない
発音(滑舌)が悪い
舌を上に挙げる発音である「ラ行」、「サ行」、「カ行」、「タ行」などの発音がしにくくなります。
また舌小帯の異常が重度の場合、舌を前に出したときに舌の先端がハート型にくびれます。
歯並びが悪くなる
舌は上顎に触れているのが正しい位置です。舌小帯に異常があると舌を上に挙げられず、下の前歯を前方に押してしまい、受け口や下のすきっ歯につながることがあります。
また舌が上顎に正しく触れていないと、上顎の成長発育が不十分になることがあり、上の歯並びが悪くなることもあります。
母乳やミルクがうまく飲めない
(哺乳障害)
哺乳不良
舌を上に挙げるのが難しいため、乳頭への吸い付きが浅く弱く、浅飲み、眠り飲みにつがながることがあります。
体重が増えにくい
母乳やミルクがうまく飲めず、飲む量が減ってしまうと体重が増えにくいことがあります。
母親の乳頭の痛み
舌で上手に吸うことができないために授乳時間が長くなったり、乳頭を歯茎で噛んでしまい、母親が乳頭の痛みを感じることがあります。
舌小帯の異常の割合
舌小帯の異常の割合は5〜10%と報告されています。また唇顎口蓋裂の場合、舌小帯の異常を合併する割合が高く、約30%といわれています。
舌小帯の検査
舌小帯の検査では、舌の動かせる範囲や舌小帯の長さ、厚み、位置、発音、歯並びなどを総合的に診ます。
舌小帯異常のわかりやすい診断
第1度は軽症、第3度は重症となります。
舌小帯異常の程度 | 舌はどれくらい動かせる? |
---|---|
第1度 | 噛み合わせの面(高さ)を超えるが、上顎の天井を触れられない。 |
第2度 | 噛み合わせの面をわずかに超える。 |
第3度 | 噛み合わせの面を超えられず、舌が上に全く挙がらない。 |
*舌小帯の異常(舌小帯短縮症)の診断基準や分類方法は上記の他にもいくつかあります。
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舌小帯の治療
舌小帯短縮症の治療は、舌の運動訓練と舌小帯の切除に大きく分けられます。
舌の運動訓練、言語訓練
舌小帯を切らずに伸ばす訓練方法で、4〜6歳未満の子供にまず適用されます。また「舌の運動訓練」は「舌小帯の切除」後、舌のリハビリテーションやストレッチとしても活用されます。
数週間の訓練後は、舌の動かせる範囲や舌小帯の厚み・長さ、発音などを診察して評価します。
言語訓練
「カ、サ、タ、ナ、ラ行」を発音させて訓練します。
発音訓練の単語の例
- らっぱ
- かさ
- そら
- さかな
- たいこ
- りす
- きりん
- かた
- るす
ポッピング
舌全体を上顎にしっかりと吸い付けるように押しつけ、舌を下に勢いよく跳ねつけて「ポン」と音を立てます。
舌小帯の切除
治療内容は?
局所麻酔をし、舌小帯を切除し、状況に応じて縫合します。治療時間は数分から10分程度です。
いつ(何歳)ごろが良い?
舌小帯の切除の時期は明確な決まりはありませんが、発音の機能を評価しつつ、4〜6歳ごろに手術するかを決めると報告する論文が多く存在します。
なぜ4歳以上?
4歳以上とする論文では次の理由を挙げています。
- 4歳までは舌小帯の変化(改善)することがある。
- 発音の機能が完成するのが4歳以上である。
- 4歳以上だと、術前後の発音の変化を評価できる。
- 4歳未満は治療時に動いてしまうことが多い。
まとめ
舌小帯の異常は発音や歯並び、哺乳などに影響を与えることがあり、早めに診断、訓練を行うと効果的です。舌小帯が気になる場合にはお気軽にご相談ください。
(関連記事)
(参考文献)
・「小帯切除術-特に舌小帯と上唇小帯について-」金子忠良先生ら
・「本学小児歯科における舌小帯異常の実態調査」小児歯科学雑誌50(4) 福田理先生ら
・「小児における舌小帯短縮症の手術時期の検討」砂川元先生ら
・「幼児期における舌小帯異常の実態調査」小児歯科学雑誌59(3) 斉藤正人先生ら
・「哺乳障害を伴う舌小帯短縮症及び上唇小帯短縮症に対する切開手術の有用性」伊藤泰雄先生ら