すきっ歯(空隙歯列)
すきっ歯は歯と歯の間に隙間がある歯並びで、目立ちやすく、「歯並びがガタガタ(叢生)」、「出っ歯(上顎前突)」に次ぐ日本人で3番目に多い噛み合わせの異常です。
「すきっ歯が気になる」、「すきっ歯をごまかす方法はある?」「すきっ歯は自然に治ったりする?」など悩みを抱えている方も少なくありません。
ここでは、「すきっ歯(空隙歯列)」の原因や治療などについて解説していきます。
目次
すきっ歯とは
すきっ歯とは歯と歯の間に隙間がある状態で、空隙歯列(くうげきしれつ)といいます。特に中央の前歯に隙間がある場合は「正中離開(せいちゅうりかい)」と呼びます。
またすきっ歯は「出っ歯」や「受け口」と併発することもあります。
原因
顎と歯の大きさのバランス
顎が大きすぎる、歯が小さすぎるなど顎と歯の大きさのバランスが合っていないと、歯と歯の間に隙間が生じてしまいます。
生まれつき小さい歯がある
生まれつき異常に小さい歯を矮小歯(わいしょうし)と呼び、すきっ歯の原因になります。矮小歯は上の前から2番目の永久歯で発生しやすく、発生頻度は全体の約3%といわれています。
生まれつき歯の本数が少ない
生まれつき永久歯の本数が少ない(足りない)場合はすきっ歯の原因になり、発生頻度は約10%と報告されています。
生まれつき歯の本数が少ないことを、先天的欠如と呼びます。
埋まったままの歯がある
歯の本数は正常だが、生えてこない
歯の本数は正常でも、歯が変なところにあると大人になっても生えず、埋まったままになる場合があります。
生まれつき歯の本数が多い
生まれつき余分な歯(過剰歯)が埋まったまま存在している場合があります。
いずれの場合も、歯が埋まったままの場所は隙間が閉じずないため、すきっ歯の原因になることがあります。
上唇の裏側のスジが厚い
上唇の裏側の粘膜と歯茎を中央で結ぶスジを「上唇小帯(じょうしんしょうたい)」と呼び、上唇小帯が中央の前歯の間に入り込んでいると、歯の間に隙間が生じる原因になります。
奥歯がない/前歯でしか噛めない
奥歯を失ったまま放置すると前歯に負担が集中し、前歯が前方に倒れ、出っ歯とすきっ歯を併発しやすくなります。
「奥歯がない」ことで「すきっ歯」になるのは、虫歯や歯周病などで奥歯を失った後、長期間放置した場合が多いです。
舌で歯を押す癖
舌で前歯を押す癖があると、歯が前に倒れ、すきっ歯の原因になります。
歯ぎしり、噛み締め、食いしばり
歯ぎしりや噛み締め、食いしばりは睡眠中や無意識の中で行われ、80〜100kg以上の力が歯にかかる時もあります。
歯や歯茎に過度な負担が蓄積されると、歯が傾いたり、歯のすり減りで噛み合わせが変化したり、歯茎が下がるため、すきっ歯につながることがあります。
すきっ歯による影響、問題
見た目の印象
特に前歯のすきっ歯は相手から見えやすく、「相手に口元を見せたくない」、「人前で笑えない」など外見のコンプレックスにつながることがあります。
正しい発音(滑舌)ができない
すきっ歯では歯と歯の間から空気が漏れるため、発音が不明瞭になることがあります。特に「サ行」や「タ行」などの発音は影響を受けやすいといわれています。
虫歯や歯周病のリスクが高まる
すきっ歯は歯と歯に隙間に食べ物が挟まりやすく、食べ物が詰まったり、磨き残しが起きやすいです。
すきっ歯では歯間ブラシやフロス(糸ようじ)などの工夫が必要で、場合によっては虫歯や歯周病のリスクが高くなることがあります。
すきっ歯の治療(治し方)
すきっ歯の治療(治し方)は、「詰め物や被せ物で治す方法」と「歯列矯正で治す方法」、「すきっ歯の原因を除去する方法」に分けられます。
すきっ歯の原因によって治療方法は異なり、複数の治療方法が効果的な場合や逆に適用にならない治療方法もあります。
種類 | 治療内容 | 特徴 |
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詰め物や被せ物で治す方法 |
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歯科矯正で治す方法 |
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その他 |
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詰め物や被せ物で治す方法
歯に人工物(プラスチックやセラミック)を貼り付けたり、被せることで、歯と歯の隙間を狭くして、すきっ歯を改善します。
コンポジットレジン
「コンポジットレジン」と呼ばれる歯に近い色のプラスチック材料を使う保険適用の治療方法です。
コンポジットレジンを歯の側面に貼り付け、歯と歯の隙間を狭くし、すきっ歯を改善します。
メリット
- 歯をほとんど削らない。
- 保険適用のため、費用的負担を抑えられる。
- 治療回数が少ない。(1回の治療で終わる場合も多い。)
- 歯型(型取り)が必要ない。
デメリット
- 歯と歯の隙間が大きすぎる場合には適用にならないことがある。
- 年数とともに変色することがある。
- セラミックと比べ、強度が劣る。
ラミネートベニア
セラミックの薄片を歯の表面に貼り、歯の形を修正する保険適用外の治療方法です。歯が生まれつき小さい場合などに有効です。
メリット
- 見た目が綺麗。変色しない。
- コンポジットレジンより強度が優れている
デメリット
- 歯の表面を少し削る必要がある。
- 付け爪のように歯の表面に貼るため、外れることがある。
- 保険適用外のため、費用が高い。
セラミッククラウン
セラミックを歯に被せて、歯の形を改善させる保険適用外の治療方法です。
メリット
- 見た目が綺麗。変色しない。
- 「ラミネーベニア」より外れにくい。
- コンポジットレジンより強度が高い。
デメリット
- 「ラミネートベニア」より歯を削る必要がある。
- 保険適用外のため、費用が高い。
歯の矯正で治す方法
歯列矯正治療で、歯を移動させて歯と歯の隙間を狭くし、すきっ歯を改善します。
歯列矯正治療
メリット
- 歯の位置や傾きなどを整えることができる
- 歯を削らない
デメリット
- 保険適用外の治療で、治療期間や費用がかかる。
- 別の治療の併用が必要になることがある。(埋まっている歯の抜歯、上唇小帯の切除、奥歯を補う治療等)
すきっ歯は部分矯正で治る?
すきっ歯の原因によっては、部分矯正で治る場合があります。
一方で、奥歯がない場合や舌で歯を押す癖など根本的な原因があるすきっ歯の場合には、部分矯正のみでは十分な効果が得られません。
すきっ歯の原因を除去する方法
舌の癖を治す
舌で歯を押す癖がある場合には、正しい位置に舌を置くことを習慣づけることが大切です。
上唇小帯の切除
上唇の裏側と中央の歯茎を結ぶスジ「上唇小帯」の厚みや位置が異常な場合、上唇小帯の切除を行います。
ただし、年齢や上顎の成長とともに上唇小帯は薄く細く変化し、10歳前後で落ち着くことが論文等で報告されています。
明らかに上唇小帯の位置や厚みが異常な場合には、前歯の永久歯が生える時期(6〜7歳ごろ)に切除を検討します。
埋まっている歯の抜歯
埋まっている歯が存在する場合には歯の隙間が閉じないため、抜歯を検討する場合もあります。
奥歯がない
奥歯がないことが原因の場合、奥歯を補う治療(入れ歯やインプラント等)をせずに他の治療をしても、すきっ歯が再発することもあります。
奥歯で噛めるようになると前歯の負担が減り、前歯が前方に倒れるのを防げるため、出っ歯とすきっ歯を改善しやすくなります。
すきっ歯は自然に治る?
すきっ歯は原因にもよりますが、自然に治ることが少ない歯並びで、早めに対応することで悪化を防げることもあります。
まとめ
すきっ歯は外見の印象や発音、歯の健康へ影響することがあります。すきっ歯の相談や検査だけでも構いません。
早めの治療が効果的な場合もあるため、すきっ歯にお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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