子供の受け口
矯正治療はいつから始めるのが良い?
子供の反対咬合(受け口、下顎前突)は歯だけでなく骨格に原因がある場合も少なくありません。
顎の骨の問題は大人になるほど改善しにくいため、子供の時期に顎の骨の成長にあわせて早くから治療することが大切です。
ここでは、子供の反対咬合についてわかりやすく解説していきます。
目次
反対咬合(受け口)とは
反対咬合とは下の前歯は上の前歯より前に出ている状態で、受け口や下顎前突(かがくぜんとつ)、しゃくれと呼ばれることもあります。
受け口の人の割合
受け口は日本人に多いといわれ、乳歯では約10〜15%、永久歯では約26%と報告されています。
反対咬合はどんな問題、症状がある?
- 反対咬合の程度によっては前歯で噛むことができない
- 発音がしにくい、滑舌が悪い(特にサ行、タ行)
- 口を閉じにくい
- 顎が痛くなることがある
- 見た目の印象
反対咬合の原因
骨格の問題
上顎と下顎の骨格の大きさが合っていない場合には反対咬合になりやすく、骨格の問題には次の2種類があります。
- 上顎の成長が著しく小さい
- 下顎の成長が著しく大きい
遺伝
骨格の特徴は個人特有のものだけでなく、ご両親などからの遺伝が多いと言われています。
骨格が原因の受け口の約44%は親からの遺伝であるという医学論文の報告もあり、特にご両親や血縁関係にある親族に受け口の方がいる場合は遺伝的な影響の可能性があります。
歯並びの問題
下の前歯が前に傾いている、上の前歯が内側に生えているなど歯の生え方や傾きに問題がある場合です。
顎の成長や歯並びに悪影響を与える癖や習慣
- 舌で下の前歯を押す癖
- 口呼吸
- 下唇を噛む癖
子供の反対咬合は自然に治る?
子供の反対咬合(受け口)が自然に治る割合は平均5歳ごろまでに約12%で、非常に少ないことが報告されています。
また5歳以降で反対咬合が見られる場合、自然に治る可能性はさらに低いといわれています。
自然に治りにくい受け口とは
次のような受け口は自然に治りにくいと報告されています。
- 下顎を最大限後ろに引っ込めても、下の前歯が上より前に出ている
- 家族や親族などの近親者に受け口の方がいる
- 下の前歯だけでなく、下の奥歯も上の歯より外側に出ている
小児矯正はいつから?
いつから始める?
子供の受け口の矯正治療は早い年齢で開始することが推奨され、3〜10歳ごろまでに始めることで、さまざまな選択肢をもつことができます。
開始年齢は歯並びの状況や骨格の問題などによって個人差があるため、一つの目安とし、早い時期に歯医者さんへ相談するのがおすすめです。
顎の成長の時期
顎の骨の成長の時期は上顎の方が下顎より早く、上顎の成長のほとんどは10歳ごろまでに終えます。
一方で、下顎の成長の時期は男女差が大きく、女性の方が男性より早い傾向があります。
下顎の成長状況 | 女性 | 男性 |
---|---|---|
1回目の成長ピーク | 6歳ごろ | 6歳半ごろ |
2回目の成長ピーク | 7歳半ごろ | 9歳ごろ |
3回目の成長ピーク | 12歳ごろ | 15歳ごろ |
子供の反対咬合(受け口)の治し方
矯正治療の種類や内容は?
どんな矯正装置がある?
受け口の改善をする場合、次のような矯正治療に分けられます。
- 前歯の傾きや生え方を治す。(歯並びの改善)
- 上顎の成長が著しく小さい場合に、上顎の成長を促す。(上顎の骨格の改善)
- 下顎の成長が著しく大きい場合に、下顎の成長を抑える。(下顎の骨格の改善)
歯並びの改善
小児用マウスピース(ムーシールド、プレオルソ、T4K)
舌や頬、唇の筋力の影響による受け口の治療で使うマウスピース型の矯正装置です。
歯並びに影響を与える舌や頬、唇の筋力を制御し、舌を正しい位置に誘導することで歯の並びを整えます。主に3〜5歳ごろに適用され、就寝時に使用します。
床矯正(拡大床、プレート)
歯並びの列が狭い場合に使う取り外し式の矯正装置です。受け口では主に5〜10歳ごろに適用され、上顎と下顎のバランスを整えます。
ワイヤー矯正
上の前歯が内側(奥)に生えていたり、下の前歯が前方に出て受け口になっている場合に、ワイヤーを利用して歯を正しい位置に移動させて歯並びを改善します。
リンガルアーチ
上の前歯が内側から生えて受け口になっている場合などに使用される固定式の矯正装置です。
主に6〜12歳ごろに適用され、内側に生えた上の前歯をワイヤーで前方に押して、歯を正しい位置に移動させます。歯の裏側に装着するため、目立ちません。
骨格の改善
顎外固定装置
フェイシャルマスク
上顎の成長が著しく小さい場合の受け口の治療に使う矯正装置で、7〜13歳ごろの時期に適用されます。
装着時に下顎を動かすと、ワイヤーにつないだゴムで上顎が前方に引っ張られ、上顎の成長の促し、下顎の成長を抑えます。
チンキャップ
下顎の成長が著しく大きい場合の受け口の治療に使う矯正装置で、9〜15歳ごろの時期に適用されます。
ゴムの力を利用して、下顎の成長を抑えます。
反対咬合の小児矯正治療が推奨される理由
骨格の改善
受け口の原因が骨格にある場合、大人になってからの矯正治療では大幅な改善が見込めないこともあります。
顎が成長途中である子供の時期に矯正治療を開始すると、骨格のバランスを改善しやすくなります。
抜歯や外科手術の必要性が低くなる
永久歯が生えそろい、顎の骨の成長のピークを過ぎた12歳以降に受け口を治す場合、抜歯や外科手術が推奨されることがあります。
子供の時期に矯正をして顎の成長を正しく制御することで、抜歯や外科手術を避けられる場合もあります。
噛み合わせや歯並び、悪い習慣の改善
子供のうちに反対咬合の治療を行うことで、歯並びや噛み合わせに悪影響を与える癖や習慣を改善し、歯並びが悪くなるリスクを減らすことができます。
指しゃぶりや口呼吸、舌で歯を押す癖などは歯並びに悪影響を与え続けるため、放置すると永久歯の歯並びにも影響を及ぼすことがあります。
まとめ
受け口は顎の成長とともに悪化することがあるため、子供のうちに矯正治療を行うのが効果的です。
特に近親者に受け口がいる方は骨格の遺伝的な影響の可能性もあるため、子供のうちから定期健診で歯医者さんに診てもらうのが良いでしょう。
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