すきっ歯の原因?!
上唇小帯とは?
上唇小帯とは上唇の裏側と歯茎とを結ぶスジです。上唇小帯の厚みや位置に異常があると、歯並びや発音に影響を及ぼしたり、虫歯や歯周病のリスクが高まることがあります。
ここでは、上唇小帯についてのお話のほか、「赤ちゃんのうちに上唇小帯を切除しないと、すきっ歯の原因になる?」、「上昇帯が切れたらガミースマイルになる?」、「上唇小帯を切除するタイミングは?」などの疑問点についても解説します。
目次
上唇小帯とは
上唇小帯とは、上唇と前歯の歯茎とを中央で結ぶスジ(ひだ)を指します。
赤ちゃんの上唇小帯はすきっ歯の原因になる?
上唇小帯は赤ちゃんの時期に一般的に長く、年齢とともに形や大きさは細く薄くなります。
上唇小帯が切れたらガミースマイルになる?
上唇小帯は年齢とともに自然に薄く細く縮むため、赤ちゃんや子供の時期に上唇小帯が切れてもガミースマイルになることは通常ありません。
しかし、転倒による粘膜の出血や傷の深さ、歯への影響を確認するために、早めに歯医者さんに診てもらう方が良いでしょう。
上唇小帯は何のためにある?
上唇小帯は上唇の運動を正しく制限したり、位置を固定する働きがあります。
上唇小帯の異常
上唇小帯の位置が前歯の間に深く入り込んでいるような場合を異常な状態とし、上唇小帯付着異常症と呼びます。
割合
上唇小帯の異常は、小児の7.3%に見られると報告されています(*)。
上唇小帯の異常で起きる問題
- 前歯のすきっ歯
- 唇を閉じにくい
- 虫歯や歯周病のリスクが高まる(歯磨きがしにくい)
前歯のすきっ歯
上唇小帯が歯と歯の隙間に深く入り込んでいると、前歯のすきっ歯(正中離開)の原因になります。
唇を閉じにくい
上唇小帯の厚みや位置に異常があると、唇が閉じにくくなることが報告されています。
虫歯や歯周病のリスクが高まる
上唇小帯の厚みや位置が異常だと、歯磨きがしにくく、虫歯や歯周病のリスクが高まることがあります。
歯磨きの工夫
上唇小帯が異常な場合、中央の前歯を歯磨きすると、上唇小帯を傷つけてしまいます。次のように工夫してみましょう。
- 小さな歯ブラシを使って、歯を1本ずつ磨く。
- 歯ブラシを左右ではなく、縦や斜めに動かす。
- 上唇をめくり、歯ブラシに当たらないようにする。
上唇小帯の検査
上唇小帯の検査ではBlanch Testを行います。
Blanch Test
上唇を持ち上げたときに生じる貧血帯(粘膜が白くなる部分)の範囲を診ます。
上唇小帯の切除治療
上唇小帯の治療は原則的に切除です。
上唇小帯は年齢とともに縮む傾向にありますが、将来の歯並び(すきっ歯)や唇の動きに影響する場合には上唇小帯の切除を検討していきます。
上唇小帯切除のタイミングは?
上唇小帯の切除のタイミングは6〜9歳ごろと報告されています。
ただし、上唇小帯の切除時期は形や大きさによって異なるため、気になる場合や不安な場合にはお気軽にご相談ください。
2歳以下で上唇小帯の異常がある場合
0〜2歳で上唇小帯の異常がある場合でも、2〜3歳ごろに正常へ変わることがあるため、上唇小帯の形や大きさを診て治療の必要性を判断します。
また上唇小帯は年齢や上顎の成長とともに細く薄くなり、10〜12歳ごろに上唇小帯の位置は落ち着くといわれています。
前歯が永久歯に生え変わったらすきっ歯になった?
生えたばかりの上の前歯は「ハ」の字になっていることも多く、6歳ごろには「発育空隙」と呼ばれる正常なすきっ歯もあります。
歯と歯の隙間と、上唇小帯や発育空隙との関係を見て、治療の必要性を判断します。
上唇小帯の切除方法
上唇小帯の切除は局所麻酔をして行い、数分で終わります。後日、上唇小帯の様子を診察をし、必要に応じて上唇のストレッチなどを行い、問題なければ治療完了です。
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まとめ
上唇小帯の異常は歯並びや唇の動きを悪くしたり、前歯の虫歯・歯周病のリスクが高まります。
当院では上唇小帯の相談のみの診察も承っております。上唇小帯でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
(関連記事)
[参考文献]
・「小帯切除術-特に舌小帯と上唇小帯について-」金子忠良先生ら 東京医科大学茨城医療センター歯科口腔外科
・「乳歯列期における上唇小帯の形態と付着位置に関する調査研究」朝田芳信先生ら 小児歯科学雑誌 55(1):44-50 2017
・「小児の上唇小帯の付着位置が口唇閉鎖に及ぼす影響」小児歯科学雑誌 42(5):661-667 2004 661
・(*)「Sewerin I. : Prevalence of variations and anomalies of the upper labial frenum, Acta. Odont. Scand., 29 : 487496,1971.」