歯が原因でない歯痛
「虫歯じゃないのに歯が痛い…」など歯や歯茎に原因がない歯痛を非歯原性歯痛と呼びます。非歯原性歯痛は歯痛全体の約1割を占める大変つらい病気で、治療方法は通常の虫歯・歯周病治療と大きく異なります。
目次
非歯原性歯痛の種類
☟下の表は、縦横に移動(スクロール)できます。
種類 | 内容 |
---|---|
筋・筋膜性歯痛 | 疲労した顎の筋肉の痛みによる歯痛で、筋肉のコリの場所を押すと歯痛が生じます。 |
神経障害性歯痛 | 神経痛による歯痛で、瞬間的あるいは持続的な痛みの種類があります。 |
神経血管性歯痛 | 片頭痛や群発頭痛と関連する歯痛で、上の奥歯に持続的な痛みが生じます。 |
上顎洞性歯痛 | 副鼻腔の炎症に関連する歯痛で、上の奥歯に痛みを感じます。 |
心臓性歯痛 | 狭心症や心筋梗塞に関連する歯痛で、運動で痛みが生じます。 |
精神疾患による歯痛 | 身体表現性障害やうつ病、統合失調症などによって生じる歯痛です。 |
特発性歯痛 | 明らかな原因がない歯痛で、数ヶ月以上痛みが持続することもあります。 |
その他 | 悪性リンパ腫や肺がん、側頭動脈炎、抗精神薬の服用などに起因する歯痛です。 |
筋・筋膜性歯痛
顎の周りにある筋肉や筋膜に関連した歯痛で、非歯原性歯痛の約50%を占めます。顎の周囲の筋肉のコリを押すと、歯や歯茎に痛みを感じます。
歯ぎしりや食いしばり、噛み締めなどの癖がある方に起きやすい病気です。
(関連記事)
神経障害性歯痛
神経の障害に起因する歯痛で、「発作性」と「持続性」の2種類に分けられます。非歯原性歯痛の約25%を占め、筋・筋膜性歯痛に次いで多い病気です。
“発作性”神経障害性歯痛
三叉神経痛が代表的で、激しい痛みが発作的に数秒間生じます。血管や腫瘍で神経が圧迫・障害され、過敏になり、痛みの信号が過剰に出てしまう状態です。
“持続性 ”神経障害性歯痛
帯状疱疹性神経痛や帯状疱疹後歯痛が代表的です。
帯状疱疹性歯痛は、帯状疱疹ウイルスの感染による神経炎が原因の歯痛です。突然激しい歯の痛みが発生し、数日で激痛になり、10日間ほどで痛みが消えます。
帯状疱疹後歯痛は、帯状疱疹ウイルスによる神経の破壊が原因で、帯状疱疹の後遺症の歯痛です。
神経血管性歯痛
片頭痛や群発頭痛、発作性頭痛に関連する歯痛で、群発頭痛の場合は顎関節に痛みを感じることもあります。
神経血管性歯痛は、片頭痛や群発頭痛の患者の約2割に現れ、頭痛と連動して上の奥歯に持続的な痛みを感じます。
上顎洞性歯痛
副鼻腔の一種である上顎洞の炎症が原因の歯痛で、上の奥歯に痛みを感じたり、噛むと違和感を感じることもあります。
心臓性歯痛
狭心症や心筋梗塞など心臓病に関連する歯痛で、歯や下顎、顔面に痛みを生じます。運動により痛みが悪化しますが、胸の痛みはないこともあります。
精神疾患による歯痛
身体表現性障害や統合失調症、うつ病などの精神疾患や心理的要因(ストレス)などが原因で発症する歯痛です。
特発性歯痛
原因不明で数ヶ月以上痛みが持続する歯痛です。他の病気(頭痛や腰痛、線維筋痛症、過敏性大腸炎など)と併発することも珍しくありません。
原因不明?!
長引く歯や歯茎、舌の痛み
また近年では、「非歯原性疼痛」の1種に【痛覚変調性疼痛】(*)もあります。
痛覚変調性疼痛は、痛みに関与する脳の領域の過剰な活動などが原因とされる痛みで、以下の病気が挙げられます。
- 口腔灼熱症候群(バーニング マウス シンドローム:BMS)
- 持続性特発性歯痛(ピーダップ:PIDAP)
*2017年に痛みの専門学会(国際疼痛学会)より発表
口腔灼熱症候群
- 痛い場所に明らかな異常がない。
- 4ヶ月以上、毎日2時間以上、口の粘膜にヒリヒリする痛みが持続する。
- 閉経後の女性に多く、患者の9割が女性。
*舌が痛い場合は「舌痛症」と呼びます。
持続性特発性歯痛
- 4ヶ月以上、毎日2時間以上、歯痛が持続する。
- 40〜50代の女性に多く、患者の9割が女性。
- 3〜4割の患者がうつ病を併発。
まとめ
非歯原性疼痛は放置することで、うつ病や不眠、食欲不振などを生じることがあります。また別の病気を併発していることもあるため、様子を見るのではなく、早めに担当医と相談するようにしましょう。
当院では大学病院出身の歯科医師・薬剤師が在籍しております。長引く歯や顎、舌の痛みなど気になる点がございましたら、お気軽にご相談ください。
(関連記事)