睡眠時無呼吸症候群と肥満
いびきや睡眠時無呼吸症候群は肥満による脂肪の蓄積が深く関わっています。脂肪はお腹周りだけなく、舌やのどの周りにもつき、気道が狭くなりやすいことから、肥満は睡眠時無呼吸症候群の最大の原因ともいわれています。
実際、肥満の人は肥満でない人と比べ、睡眠時無呼吸症候群の発症率が3倍以上に高まります。
ここでは、睡眠時無呼吸症候群のリスクを高める肥満について、仕組みや治し方
目次
睡眠時無呼吸症候群で肥満の人の割合
睡眠時無呼吸症候群のうち、肥満の人の割合は約7割といわれ、肥満と睡眠時無呼吸症候群には深い関わりがあります。
肥満による睡眠時無呼吸症候群の仕組み
脂肪は体だけでなく、舌や喉の周囲にも蓄積するため、気道が狭くなり、睡眠時無呼吸症候群の発症や病状の悪化につながります。
気をつけたい!内臓脂肪型肥満
肥満の中でも、内臓脂肪による肥満は次の変化が起きるため、特に睡眠時無呼吸症候群のリスクを高まることが報告されています。
- 脂肪が舌や喉の周りにつき、空気の通り道を狭くします。
- お腹についた脂肪は肺の容量を減少させ、気道が狭くなりやすいです。
内蔵型脂肪は皮下型脂肪と異なり、内臓に脂肪がつく状態で、手足は細くてお腹が出ていることが多いです。手足が痩せていても油断できないこともあるのです。
(参考文献)
「睡眠時無呼吸症候群ガイドライン2020」CQ20 OSAと内臓脂肪
肥満による睡眠時無呼吸症候群の治し方
睡眠時無呼吸症候群の主な治し方(治療方法)には、マウスピース治療やCPAP(シーパップ)があります。
いずれの治療方法でも肥満の場合は、併せて体重の改善を行うと、睡眠時無呼吸症候群の治療効果を高めることができます。
体重変化と睡眠時無呼吸症候群の改善
睡眠時無呼吸症候群の病状は体重が増加すると悪化し、反対に体重が減少すると症状は改善することが報告されています。
体重変化 | 睡眠時無呼吸症候群の症状の変化 |
---|---|
10%体重増加 | 32%悪化 |
10%体重減少 | 26%改善 |
(参考文献)
世界的に著名なウィスコンシン睡眠コホート研究「Peppard PE, et al:Longitudinal study of moderate weight change and sleep-disordered breathing.JAMA 284:3015-3021,2000. 」による。
運動療法
体重が減らなくても、適度な運動をすると、睡眠時無呼吸症候群の病状を改善するといわれています。
実際、1週間に2〜3回程度、1回30分の有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳など)を3ヶ月以上繰り返すと、AHI(睡眠1時間あたりの無呼吸、低呼吸の回数)が6.3回減少するというデータもあります。
(参考文献)
「Effects of Exercise Training on Sleep Apnea: A Meta-analysis」Lung. 2014 Feb; 192(1): 175–184.Imran H. Iftikhar, Christopher E. Kline, and Shawn D. Youngstedt
痩せ型なら睡眠時無呼吸症候群ではない?!
睡眠時無呼吸症候群は“太っている男性”の病気という印象があるかもしれません。しかし、睡眠時無呼吸症候群は痩せ型や女性の方でもかかる病気です。
肥満でなくても、睡眠時無呼吸症候群になりやすい人の特徴を次に紹介致します。
顎が小さい
欧米では肥満者が多い睡眠時無呼吸症候群ですが、日本人は顎が小さいという特徴のため、睡眠時無呼吸症候群になりやすい傾向があります。
顎が小さいと気道が狭くなりやすく、いびきや睡眠時無呼吸症候群になりやすいといわれています。
口呼吸や扁桃肥大
扁桃が肥大すると気道が狭くなるため、睡眠時無呼吸症候群の発症の原因になります。
扁桃の肥大がある場合、口呼吸になりやすく、また口呼吸が習慣化していると扁桃が炎症を起こしやすくなります。
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歯並び
- 噛み合わせが深い(下の前歯が上の前歯に隠れている:過蓋咬合)
- 上下の前歯が噛み合わない(開咬)
などの場合は、下顎が後退し、気道が狭くなりやすく、睡眠時無呼吸症候群を発症する原因になることがあります。
お酒やタバコ、薬
お酒やタバコ、一部の睡眠薬は、いびきや睡眠時無呼吸症候群に大きく影響します。
お酒や一部の睡眠薬は筋肉が弛緩するため、舌が奥に沈み(舌根沈下)、気道をふさぎやすくなります。
特に、飲酒する人は飲酒しない人と比べ、睡眠時無呼吸症候群の危険性が25%増加することが報告されています。さらに、お酒やタバコは睡眠の質を低下させ、中途覚醒(寝ている時に目が覚める)も生じやすくなります。
またタバコは喉や気道、扁桃に炎症を引き起こし、空気の通り道が狭くなる可能性が指摘されています。喫煙者は非喫煙者と比べ、睡眠時無呼吸症候群のリスクは約3倍に高まるといわれています。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群では肥満がとても大きな原因で、舌や喉、気道周りに脂肪が蓄積、気道を狭くしてしまいます。一方で、日本人は顎が小さいなど骨格的に睡眠時無呼吸症候群になりやすい特徴もあるため、睡眠時無呼吸症候群は痩せ型の人にとっても油断できない病気でもあります。
いびきを指摘されたことがある、日中に眠気を感じるなど気になる点がございましたら、お気軽にご相談ください。
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