テトラサイクリン系抗生物質と変色歯
テトラサイクリン系という抗生物質(抗菌薬)を出生後から8歳ごろまでの小児の時期にたくさん服用すると、歯の色が茶色、暗黄色、黒色に縞(しま)模様に変化することがあり、一種の副作用として知られています。
目次
よくみられる世代と患者数
テトラサイクリン系抗生物質は特に昭和40年代によく使われ、テトラサイクリンによる歯の変色は昭和40〜50年代(1960〜1970年代)生まれの方に多く、国内では数百万人が該当するといわれています。
テトラサイクリン系抗生物質について
さまざまな感染症の治療に使われてきた抗菌薬の一種ですが、現在は歯の変色の原因になることなどから、妊婦、8歳未満の子どもにはほとんど使用されません。
また歯科の分野でも、テトラサイクリン系抗生物質が処方されることはほぼありません(1%未満)。
どのような病気に使われる?
次のような感染症に使われます。
- マイコプラズマ肺炎
- クラミジア感染症
- リケッチア症
なぜ歯が変色する?
永久歯がつくられる時期にある8歳未満の子どもの頃に、テトラサイクリン系抗菌薬をたくさん使用することで、歯にお薬の成分が取りこまれて変色が起きます。
お薬を服用した時期や期間、量によって、変色が起きる割合(23〜92%)は異なるといわれています。
問題点
心理的な負担、日常生活への支障
歯の変色は「他人から変な目で見られる」といった大きな心理的な負担になります。
また人からの視線だけでなく、タバコ(喫煙)や歯磨きの仕方の影響などと誤解されたり、思いきり笑えない・人前で口を開けられない・口元を隠す癖がついたなど日常生活の行動に影響を与えることもあります。
歯の変色の場所、程度、色調
変色を起こす場所
服用した時期と歯をつくる時期がどのくらい重ねっているかによって異なります。
*下図は大まかな目安として捉えてください。
服用時期 | 変色の場所 |
生後〜3歳ごろまでの間 | 前歯の先端寄り半分程度、第一大臼歯(前から6番目)の変色 |
生後〜6歳後ごろまでの間 | 前歯および奥歯の歯全体が変色 |
3歳〜7歳 | 前歯付け根寄り半分程度、小臼歯(前から4,5番目)の変色 |
程度
変色の程度はお薬の服用した量、期間によって異なります。
次のように程度別に次のように分類され、第1〜2度は軽度、第3〜4度が重度とされています。
テトラサイクリンの変色歯の分類(Feinmanの分類)
- 第1度:淡い黄色、褐色、灰色で歯全体が一様に変色していて、縞(しま)模様は見られないもの
- 第2度:1度より濃く歯全体が一様に変色していて、縞模様は見られないもの
- 第3度:濃い灰色、青みがかった灰色で縞模様を伴うもの
- 第4度:変色が強く、縞模様が強いもの
色調
テトラサイクリン系抗菌薬の種類(下図参照)によって変色歯の色調は異なるといわれています。
また歯に取りこまれたお薬の成分が光によって酸化するため、年齢とともに色調は変化します。
お薬名 | 変色の色調 |
レダマイシン、アクロマイシン、テラマイシン | 黄色〜茶色系 |
オーレオマイシン | 灰色系 |
対策、治療
テトラサイクリン系抗生物質による変色歯は見た目が気にならなければ、特に治療をする必要はありません。
変色が気になる場合、治療対象となりますが、重症度によって治療方法は異なります。
重症度 | 治療内容 |
軽度(第1〜2度) | ホワイトニング、レジン充填、ラミネートベニア、セラミックによるかぶせもの |
重度(第3〜4度) | ラミネートベニア、セラミックによるかぶせもの |
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