血液をサラサラにするお薬
歯の治療はどうする?!
心筋梗塞や脳梗塞などの病気の場合、血管がつまるのを防ぐために服用するのが「血液をサラサラにするお薬」(抗血栓薬)です。
血管がつまると命に関わることもあり、抗血栓薬はとても大事なお薬ですが、出血しやすいという副作用もあります。
抗血栓薬を服用中の方は非常に多く、国内で約700万人。「歯の治療は大丈夫?」、「抜歯の時はどうする?」など心配な方も多いのではないでしょうか。ここでは、「血液サラサラのお薬」と歯科治療について、ご紹介致します。
目次
血液サラサラのお薬の種類とは?
血液をサラサラにするお薬(抗血栓薬)は、以下の2種類に大きく分けられます。
- 抗血小板薬
- 抗凝固薬
抗血小板薬
血流が速い部位で発生する血栓(血小板血栓、白色血栓)を予防するお薬で、動脈系の血栓症に使用されることが多いとされています。
狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、下肢閉塞性動脈硬化症、カテーテル治療でステントが留置された方などが主に対象となります。
抗凝固薬
血流が遅い部位で発生する血栓(フィブリン血栓、赤色血栓)を予防するお薬で、静脈系の血栓症に使用されることが多いとされています。
心房細動、深部静脈血栓症、弁置換術後、肺塞栓症などの病気が対象となります。
歯の治療はどうする?
抜歯の時は?!
近年、医科・歯科の多くの専門機関で「血液をサラサラにするお薬」は抜歯の際に原則、服用中止しないというガイドラインを発表され、広く認知されています。
服用中止しないのは、お薬を中止すると、命に直結する病気(心筋梗塞や脳梗塞、肺塞栓症など)を発症する可能性があるためです。
出典 | 関連する専門機関 | 内容 |
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「2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン」 |
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抜歯時、抗血栓薬は原則中止しない。(服用を継続する) |
「口腔インプラント治療指針 2020」 | 日本口腔インプラント学会 | |
「循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に 関するガイドライン」 | 日本循環器学会 | |
「抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン 2020年版」 |
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服用中止するとどうなる?
1990年代までは、抜歯時に抗血栓薬は中止するのが一般的でした。ところが、1998年のアメリカで「ワーファリンを中止して抜歯した人の0.9%に重篤な血栓・塞栓症を発症し、その約8割は死亡した」という研究報告があり、指針は大きく変化しました。
なお、抜歯やインプラント、歯周病手術の際も同様に、一部の例外を除き、服用は中止しないことが推奨されています。施術後は血が止まりにくいものの、出血による合併症の危険性は少ないと報告されています。
注意したい!薬の飲み合わせ例
ワーファリンと〇〇
ワーファリン(ワルファリン)は「血液をサラサラにするお薬」の一つで、ビタミンKの働きを抑えて、血液が固まるのを防ぎます。
納豆
ワーファリン服用中はビタミンKを豊富に含む納豆や青汁、クロレラを食べると、血液をサラサラにする効果が弱まるので、摂取は避けましょう。
また以下の食材もビタミンKを含むため、過剰な摂取は注意しましょう。
- 海苔
- ほうれん草
- 小松菜
- ブロッコリー
- モロヘイヤ
お酒(アルコール)
お酒はワーファリンの効果を不安定にさせる(効きにくくしたり、効き過ぎる)ことがありますので、飲酒は注意しましょう。
セントジョーンズワート
セントジョーンズワートは心を落ち着かせる働きのある成分として有名で、一部の健康食品やサプリメントに含まれます。
一方で、薬を代謝する酵素に影響を与えるため、ワーファリンの効果が弱まってしまいます。
一部のカンジダ治療薬(フロリードゲル、オラビ錠口腔用)
フロリードゲルやオラビ錠口腔用は口腔カンジダ症の治療に使われますが、ワーファリン服用中は併用を避けましょう。
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まとめ
抗血栓薬は出血しやすいという副作用がありますが、血管がつまるのを防ぐ大切なお薬です。現在のガイドラインではごく一部の例外を除き、歯科治療の際も中止することはほぼありません。
服用は自己判断で中止せず、気になる際は担当医とよく相談しましょう。
当院では薬剤師免許のある歯科医師や管理栄養士が在籍しております。ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
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