静脈内鎮静法
静脈内鎮静法とは血管(静脈)内に鎮静薬を注入して、不安感や緊張、恐怖心を和らげて鎮静(リラックス)した状態で治療を受けられるようにする方法です。
目次
特徴
リラックス(鎮静)効果
静脈内鎮静法で使うお薬には、治療に対する不安や緊張、恐怖心を和らげる効果があります。
速く、確実に効く
お薬を入れると、通常5〜10分以内にうとうとしたまどろむような状態になります。
健忘効果
治療の不快な記憶が残りにくくなります。
嘔吐反射(絞扼反射)を軽減
治療の時に口の中を触られたり、器具が入るとえずいてしまう反応を和らげる効果があります。
治療前の注意事項
飲食の制限
治療中の嘔吐、誤嚥防止のために、治療前の飲食の制限(以下参照)があります。
治療前の時間 | 制限内容 |
2時間以内 | 食べ物、水分の摂取を避ける |
2時間前まで | 食べ物は避け、水分摂取のみ可能(水、お茶など) |
6時間前まで | 牛乳、軽食 |
8時間前まで | 通常の食事 |
服用中のお薬
次のお薬を服用中の場合には注意が必要とされています。
低用量ピル(エストロゲン製剤)
血栓塞栓症(血管がつまる)の発症の危険性が高まるという報告があります。
血糖を下げるお薬
治療前の食事制限によって血糖がさらに低下する可能性があります。
血圧を下げるお薬
血圧を下げる一部のお薬には、治療中に血圧が大きく下がる可能性があります。
抗不安薬、向精神薬
抗うつ薬や抗精神薬を服用中の場合、静脈内鎮静法のお薬が効きにくいことがあったり、セロトニン症候群や悪性症候群などの重篤な症状が出る危険性があるため、注意が必要といわれています。
治療後の注意事項
運転を避ける
自動車、バイク、自転車などの運転は避けましょう。
重要な作業や仕事を避ける
火気や高所に関係する作業や重要な決定が必要な仕事などは避けた方が良いでしょう。
治療の流れ
治療前
静脈内鎮静法の説明をさせていただき、治療計画を立てていきます。
治療当日
- 術前の飲食制限など注意事項を遵守して生活していただきます。
- 血圧や心電図の測定機器の装着をして、血管に点滴をつなぎます。
- 点滴の管から血管へお薬を入れ、通常5〜10分以内でリラックスした状態になります。
- 治療が終わったら、10〜15分ほど休憩するとしっかりと目が覚めた状態になり、30分ほど経過すると立ち上がり歩行可能になります。
主なお薬
静脈内鎮静法で使われるお薬(鎮静薬)には主なお薬は3種類(プロポフォール、ベンゾジアゼピン系、デクスメデトミジン)に大きく分けられ、共通して不安や恐怖心、緊張を和らげるリラックス(鎮静)効果があります。
リラックス効果の他、それぞれのお薬には次のような特徴があります。
プロポフォール
最も代表的で世界的に使われている静脈内麻酔薬です。
効きや目覚めが早く、吐き気を抑える働きがあるのが特徴で、肝臓や腎臓の機能が低下している方にも使用可能とされています。
ベンゾジアゼピン系
ミダゾラム、ジアゼパム、フルニトラゼパムなどのお薬が代表的で、筋肉のこわばり(緊張)をほぐす作用があります。
特にミダゾラムは血管(静脈)にお薬を入れるときの痛みが出にくいため、最初に使われることが多いお薬です。
デクスメデトミジン
他のお薬と比べ、眠気に出にくく、炎症を抑える働きが特徴的です。
静脈内鎮静法中の様子、状態
不安感や緊張、恐怖心が消えてリラックス(鎮静)した状態になります。
- うとうととした眠気を覚える(まどろむ)
- 筋肉の緊張がほぐれる
*使用するお薬の種類、個人差によって多少異なりますが、呼びかけには応答できる状態です。
適応になる方/ならない方
よくある質問
静脈内鎮静法について、よくある質問をまとめて解説しております。
当院では麻酔科医が非常勤であるため、静脈内鎮静法は複雑なインプラント手術のときなどに限定させていただいております。保険診療で静脈内鎮静法をご希望の場合には診察後に適切な病院へ紹介させていただくことも可能です。ご不明な点等ございましたらお気軽にご相談ください。
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