顎関節症の治し方とは(1)
マッサージ・ストレッチ?マウスピース?
顎関節症になると、顎が痛い・口が開かないなど日常生活にも支障をきたします。顎関節症はいろいろな原因が重なって発症するため、複数の治療や生活習慣の改善を一緒に行うこともあります。
ここでは、多くの人が経験する顎関節症の治し方について、まとめて解説致します。
目次
治療
マウスピース
マウスピース治療とは、透明な樹脂製のマウスピースを装着し、歯や顎、筋肉への負担を軽減する方法です。また歯のすり減りや破折、詰め物や被せ物の破損の予防につながります。
マウスピース治療の効果は約8割というデータもあり、顎関節症の代表的な治療です。
通院回数や費用は?
保険適用の治療で、通院回数は2回(初回に歯型を取り、次回にマウスピースのお渡し)、費用は約3,000円(3割負担の方。初診料・再診料を除く)となります。
理学療法
理学療法は低周波やマッサージ、ストレッチなどで顎の関節や筋肉の痛みを緩和させ、顎の動きを回復させる治療方法です。
低周波治療
顎の関節や周囲の筋肉に低周波(弱い電気)を当て、筋肉の緊張をほぐしたり、痛みを緩和させる効果があります。
保険適用で、1回約300〜400円(3割負担の方。初診・再診料を除く)で行うことができます。
マッサージやストレッチ
顎関節症で、長期間顎を安静にし過ぎると、顎の動きが悪くなることがあります。マッサージやストレッチは、顎や筋肉の血流を改善したり、筋肉の緊張をほぐし、顎関節の硬直を防ぎます。
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ボツリヌス療法
ボツリヌス療法とは、ボツリヌストキシンという薬剤をエラの筋肉に注射し、筋肉の緊張をほぐす治療法です。アメリカを中心に普及している治療で、歯ぎしりや噛み締め、食いしばりなど筋肉の過度な緊張を改善します。
無意識のうちにやってしまう歯ぎしりや噛み締め、食いしばりを防止するため、マウスピース治療等より効果が高いといわれています。
*ボツリヌス療法は保険適用外治療となります。
(詳細記事)
内服薬
顎の関節の痛みが強いときや治りが悪いときなどは、お薬が有効なこともあります。顎の関節や筋肉の炎症を取り除いたり、筋肉の緊張をほぐすお薬などがあります。
歯並びや噛み合わせの治療
歯並びや噛み合わせの治療は顎関節症の改善に科学的根拠が乏しく、最初から行うことは推奨されていません(日本顎関節症学会より)。
*1980年代以前は、噛み合わせや歯並びが悪いと顎関節症につながると考えられていましたが、近年の研究では治療効果が乏しいため、現在はほとんど行われません。
知っておきたい!顎に負担のかかる癖
顎関節症を治すには、顎に負担のかかる生活習慣や癖の改善も大切です。
- 歯列接触癖(Tooth Contacting Habit)
- 歯ぎしり、噛み締め、食いしばり
- 日常の動作:頬杖をつく、片側でよく噛む、猫背、うつ伏せ寝
- 吹奏楽器の演奏や合唱(発声)
- ストレス、緊張の持続
- 体が冷える
- 顎をぶつけた
気づいたら噛み締めてる?
歯列接触癖とは?!
「気づいたら、上下の歯が触れていた・噛んでいた..」そのような経験がある方も多いのではないでしょうか?
日中、上下の歯が触れたままになる癖を「歯列接触癖(TCH : Tooth Contact Habit)」と呼びます。
実に、顎関節症の方の約70%が行っており、顎関節症の最大の原因ともいわれています。
歯ぎしり、噛み締め、食いしばり
睡眠中の歯ぎしりや噛み締め、食いしばりは100kg以上の力がかかるときがあり、顎へ大きな負担がかかります。
一方で、歯ぎしりは自覚症状がなく、また音がしない種類では他人からも指摘されないことも多々あります。顎関節症の隠れ原因になりやすい問題です。
姿勢
猫背や前のめりの姿勢は上下の歯がくっついた状態になりやすく、顎に負担がかかりやすくなります。
長時間のパソコンやスマートフォンを使う場合は、少し意識して、休憩をはさんで緊張をほぐしてみましょう。
まとめ
顎関節症を治すには、顎に負担がかかる無意識な日常的動作を改善しながら、必要に応じて理学療法やマウスピース、治療薬を併用を検討していくことが大切です。
当院では大学病院口腔外科に勤務経験のある歯科医師、薬剤師が在籍しております。顎関節症について、ご不明な点等ございましたら、お気軽にご相談ください。
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